俺、勉強を教えます5 ~陸玖の傾向と対策~
体操部の練習を終え、汗だくになりながら更衣室へ向かう。扉を開けると、そこにはすでに着替え中の恵理と、水泳部の海美がいた。そういえば、海美は陸玖のお姉さんだったな。
「あ、怜奈、お疲れさまー」
恵理が笑顔で声をかけてくれた。
「お疲れ。陸玖のやつ、相変わらず手こずってるわ」
私がそう言うと、恵理は吹き出した。
「やっぱり? 怜奈のスパルタ指導に、陸玖くんがついていけてないって?」
恵理の言葉に、私はため息をついた。今日、英単語の意味の意味が分からないと言われた時は、正直どうしようかと思った。
「鉄壁会の単語帳なんて、さすがに無理があったわ。あれは私が悪かった」
私が反省の色を示すと、横で着替えを終えた海美が、苦笑いしながら口を挟んできた。
「あー、陸玖のことでしょ? 怜奈さん、ごめんね。弟が迷惑かけてるみたいで」
海美はそう言って、陸玖の姉として申し訳なさそうに頭を下げた。
「あのね、陸玖はちょっと特殊なのよ」
海美の言葉に、私と恵理は顔を見合わせた。
「陸玖はね、写真とか画像で覚えることは得意なんだけど、考えることとか、頭を使うことが本当に苦手なの。特に、理屈で考えるような勉強は、全然ダメで……」
海美の言葉に、私はハッと目を見開いた。なるほど。言われてみれば、彼の撮る写真のクオリティは異常に高かった。あの繊細な盛り付けや光の表現は、まさに「目で見て覚える」ことに長けている証拠だ。そして、考えるのが苦手だから、現代文のノートを取れないし、英単語の意味の意味が分からないという現象が起きるのか。すべて繋がった気がした。
「ああ、なるほど……」
思わず納得の声を上げた私だが、次の瞬間にはまた頭を抱えた。
「でも、分かったところで、どうすればいいのよ……。写真とか画像で覚えるのが得意って言っても、英語や数学を写真でどう教えろっていうのよ。数式を写真に撮っても意味ないでしょ……」
私の切実な悩みに、恵理がポンと私の肩を叩いた。
「大丈夫だよ、怜奈。苦手な科目を克服する気持ちはわかるから。私も手伝うよ」
恵理の申し出に、私は顔を上げた。
「本当!? 恵理、助かる!」
一人で抱え込むにはあまりにも大きな問題だと思っていた陸玖の勉強だが、恵理が手伝ってくれるとなれば、少しは気が楽になる。
「うん! 私も大学行きたいし、怜奈が陸玖くんに勉強教えてあげるなら、私も一緒に勉強できるもんね」
恵理はそう言って、にっこりと笑った。頼りになる恵理と、陸玖のお姉さんである海美。期末試験まであと2週間。陸玖の奇跡の点数アップに向けて、私たちの挑戦が本格的に始まる。




