俺、勉強を教えます3 ~戦略会議~
放課後、私は少し重い足取りで陸玖の教室へ向かった。クラスは違うけれど、校舎の端から端というわけでもない。教室の扉を開けると、陸玖が所在なさげに机に突っ伏していた。
「陸玖」
私が声をかけると、彼はハッと顔を上げた。その顔には、まだ午前中の土下座の時の焦りが残っているように見える。
「怜奈さん!」
彼は慌てて立ち上がった。
「さて、じゃあ早速だけど、期末試験の試験範囲、教えてくれる?」
私は有無を言わさぬ口調で尋ねた。陸玖は少し怯えた様子で、自分の教科書やノートを引っ張り出し始めた。各教科の試験範囲をメモしていく私を見ながら、彼はさらに緊張しているようだ。
「よし、試験範囲はわかった。次に、中間試験の成績を正直に教えてほしいんだけど」
私の問いに、陸玖はさらに顔を青くした。だが、ここで嘘をつかれても困る。彼の苦手分野を把握しなければ、効率的な対策は立てられない。
「えっと……英語が28点、現代文が35点、数学が32点、生物が65点、地理が60点……あとは、だいたい40点台でした……」
陸玖が蚊の鳴くような声で点数を告げていく。それを聞いて、私は思わずため息をついた。
「……重症ね」
思わず口から本音が漏れてしまった。生物と地理はかろうじて平均点を超えているものの、英語、現代文、数学の悲惨さは想像以上だ。特に英語は、前世の自分を見ているようで、なんだか複雑な気持ちになる。
「陸玖、わかったわ。期末試験まで時間がないから、まずは得意な生物と地理は後回し。まずは英語と数学を克服することに集中しましょう」
私の提案に、陸玖は少し安心したような顔をした。苦手科目から取り組むのは辛いだろうが、背に腹は代えられない。
「現代文はね、ノートさえしっかり取っていれば、ある程度の点数は取れるはずよ。あれは、先生の話を聞いて、ポイントをまとめる練習にもなるから」
私がそう言うと、陸玖は途端に顔を歪めた。
「あの……僕、現代文のノート、取ってないんです……」
「はぁ!?」
私は驚きを通り越して、呆れてしまった。まさか、ノートすら取っていないとは。
「だって、現代文の先生、黒板に何も書かないじゃないですか。だから、僕は教科書にマーカーを少し引いているくらいで……」
陸玖は、申し訳なさそうに視線を逸らした。黒板に何も書かない先生は確かにいる。でも、だからといってノートを全く取らないというのは、さすがに驚きだ。
「もう……わかったわ。仕方ないから、後で私の現代文のノートを貸してあげる。それを全部、書き写しなさい。いいわね?」
私の言葉に、陸玖はパッと顔を輝かせた。
「ほんとですか!? 怜奈さん、ありがとう!」
まだ何も始まっていないのに、陸玖は早くも助かったとばかりに喜んでいる。前途多難な学習指導になりそうだと、私は心の中でため息をついた。




