俺、勉強を教えます2 ~補習の危機~
昼休みの屋上は、相変わらず穏やかな時間が流れていた。期末試験の憂鬱さと、それぞれの前世での大学への思いを語り合いながら、弁当を食べていたその時だった。
「怜奈さん!」
突然、背後から陸玖の声が聞こえた。振り返ると、そこには息を切らし、顔面を真っ青にしている陸玖が立っていた。何か、ただならぬ雰囲気に、私と恵理は慌てて女性口調に戻す。
「どうしたの、陸玖くん!?」
「一体何があったの!?」
私と恵理が矢継ぎ早に尋ねると、陸玖は震える声で話し始めた。
「怜奈さん……! どうか助けてください!」
陸玖の必死な様子に、さらに状況が掴めない。一体何が彼をここまで追い詰めているんだ?
「実は……僕、ここまで授業についてこれてないんだ……」
陸玖の口から出た言葉に、私と恵理は顔を見合わせた。まさか、そんなことだったとは。確かに写真部の活動ばかり熱心にしているとは聞いていたが、まさかここまでとは。
「この前の中間試験もさ、ほとんどの科目で40点台しか取れてなくて……。成績もクラスで最下位だったんだ……」
陸玖は、まるで告白でもするかのように、蚊の鳴くような声でそう言った。そして、次の瞬間には、私に向かって縋り付いてきた。
「このままだと、絶対補習になっちゃう! 補習だけは受けたくないんです! 怜奈さん、何とかしてください!」
陸玖は私の手を握りしめ、半泣きで訴えかける。その光景に、恵理は呆れたように口を開いた。
「そりゃ、普段から怜奈のレオタード姿を写真に収めたり、ラーメン作りに夢中になったりしてるからじゃないの?」
恵理の痛烈な一言に、陸玖はぐっと言葉に詰まった。いや、恵理、それは今言うことじゃないだろ……。
「うっ……それは、そうだけど……。でも、そこを何とか! お願いです! 怜奈さんも恵理さんも、僕に勉強教えてほしいんだ!」
陸玖はさらに畳み掛けるように頼み込んできた。そして、最終的には、その場で土下座までしてしまった。屋上で弁当を食べている生徒たちが、一斉にこちらを振り返る。
「り、陸玖! やめて!」
私は慌てて陸玖を立たせようとしたが、彼は頑として動かない。困った私は、恵理に助けを求めるように目配せした。恵理は私の視線を受け止めると、こっそり耳打ちしてきた。
「怜奈、陸玖くん、本当に困ってるみたいだし、フォローしてあげなよ」
恵理の言葉に、私はため息をついた。確かに、ここまで必死な陸玖を見るのは初めてだ。そして、期末試験まであと2週間しかないこの状況で、最下位の陸玖を補習から救うのは、かなりの難題だ。だが、見捨てるわけにもいかない。
「……わかったよ、陸玖」
渋々、陸玖の頼みを聞き入れることにした。陸玖の顔が、一瞬でパッと明るくなる。
「ただし、覚悟しとけよ。私、勉強教える時は、すごく厳しいからね!」
私がそう付け加えると、陸玖は満面の笑みを浮かべ、喜びのあまり、またしても私の手をぎゅっと握りしめた。その感触に、ゾワリと鳥肌が立つ。いくらなんでも、距離が近すぎるだろ、陸玖!




