俺、勉強を教えます1 ~昼休みの憂鬱~
「あー……」
弁当を頬張りながら、私は大きくため息をついた。横で同じように弁当をつついている恵理も、私の気持ちを察したのか、深く頷いている。
「またテストかよ……なんで転生先でも、こんな憂鬱なイベントが待ってんだよな、まったく」
恵理がぶっきらぼうな口調で言った。期末試験まであと2週間。この女子高校生の体になっても、試験の重圧からは逃れられないらしい。前世で散々味わったこの感覚、まさかまた体験することになるとは夢にも思わなかったぜ。
「だよな。学生の本分ってやつは変わらねぇってか。前世で、試験勉強から解放されたと思ったのになぁ」
私が言うと、恵理は遠い目をしながら過去を振り返った。
「俺は前世じゃ、そんなに成績悪くなかったんだよな。特に英語と古文は得意だった。でも、数学だけは本当に苦手でさ……。何度やっても理解できなくて、いつも赤点ギリギリだったぜ」
恵理が数学のトラウマを語る隣で、私は苦笑いするしかない。実は私、前世では恵理とは真逆で、あまり成績が良い方じゃなかったんだ。特に英語は壊滅的だった。
「俺は逆だな。数学と物理はそこそこできたんだけど、英語がもう、全然ダメでさ。高校の英語教師の教え方がマジで下手すぎて、3年間、全く成績が上がらなかったんだよ。今でもあの教師のことは恨んでるぜ」
熱く語る私に、恵理は呆れたような顔をしている。しかし、私にとって、それは笑い事じゃなかった。あの英語教師のせいで、私は大学受験でも苦労したんだ。
「結局、何とか大学には進学できたものの、正直消化不良に終わったんだよな。だから、今世では、本気で東大でも目指してみようかと思ってんだ」
私がポロッと本音を漏らすと、恵理は目を見開いた。
「東大!? マジかよ、怜奈。やる気満々だな」
「ああ、今回は本気だぜ。どうせなら、徹底的に勉強して、悔いのないようにやり直したいんだよ」
私の決意に、恵理は少し羨ましそうな顔をした。
「俺は前世じゃ、大学に行けなかったからな……。今世では、絶対大学に行きたいんだよ。でも、何を勉強したいか、まだ全然決まってなくてさ」
恵理の言葉に、私は少しだけ真剣な表情になった。大学での専攻は、その後の人生を大きく左右する。前世の知識が役に立つとしたら、こういう時だろう。
「恵理、英語と古文が得意なら、語学系の大学とかどうだ? 外国語大学とか、文学部の中に英語英文学科とか、色々な選択肢があるぞ。あとは、国際関係学部とかでも、語学は必須だし、色々な国の文化とか歴史とかも学べるから、恵理が可愛いものが好きなら、海外の可愛い文化とか学ぶのも面白いかもな」
私がそう言って、いくつか具体例を挙げてやると、恵理は箸を止めて、遠い目をして考え込んだ。
「語学系か……なるほどな……」
まだ漠然としているようだが、何かヒントにはなっただろうか。恵理の進路が決まるまでには、まだまだ時間がかかりそうだな。
「まあ、とりあえずは期末試験を頑張るしかねぇな! 大学に進むには、まずは目の前の試験を乗り切らねぇと始まらねぇからな!」
私が気合を入れるように言うと、恵理も「そりゃそうだな!」と笑って、再び弁当を食べ始めた。屋上には、いつもの穏やかな時間が流れていた。




