俺、星座を占います9 ~蟹座の告白~
陸玖の意外な過去を知り、私たちは少しだけ彼のことを見直した。そんな中、恵理が核心に触れる質問を投げかけた。
「ねえ、陸玖くんはさ、なんでそんなに怜奈ちゃんに興味を持ったの?」
恵理のストレートな問いかけに、陸玖は一瞬戸惑ったような顔をした後、少し遠い目をして話し始めた。
「怜奈さんは……3人組にいじめられてた頃から、ずっと怜奈さんの表情を見てたんだ」
その言葉に、私はハッとした。あの田岸ら3人にいじめられていた頃のことだ。確かにあの頃の私は、傍から見れば、自信がなくて俯いてばかりいるように見えたのだろう。少なくとも、私に乗り移る前の怜奈はそうだったかもしれない。
「怜奈さんはさ、プロポーションもすごくいいのに、なんでいつもそんなに自信なさそうなんだろうって、すごく気になってた。体操部に入ってからは、ずいぶん明るくなったけど、あの頃の怜奈さんの表情は、見ていてすごく心配だったんだ」
陸玖は、まるで私を撮る時のように、真剣な眼差しで私を見つめている。そんな風に、ずっと私のことを見ていてくれた人がいたなんて。
「中でも一番印象的だったのは、怜奈さんがイメチェンした時の様子だね。あの時の怜奈さんの表情は、本当にまばゆくて……キラキラしてた。まるで生まれ変わったみたいに」
イメチェン。そうだ。いじめに遭わなくなってから、少しずつ自分を変えていこうと思って、髪型もボブにしたり、メガネも変えたりしたんだった。あの頃は、ただただ新しい自分になりたくて、必死だった。せっかく転生したんだからという理由もあるけど。
「そのまばゆい表情を見ていたら、俺は、怜奈さんのいろんな表情を写真に収めたいって強く思うようになったんだ」
陸玖の言葉に、私は何も言えなかった。彼が私を追いかけ始めた理由が、そんな純粋なものだったなんて。嫌悪感を抱いていた彼の行動の裏に、そんな想いがあったとは。
「だから、それからは、学校での怜奈さんの様子を写真に撮るために、怜奈さんを追い続けたんだ。そして……レオタード姿の怜奈さんを見た時は、さすがに理性が吹き飛んでしまって、隠れて激写してしまったほどだった……」
最後の言葉で、陸玖は少しバツが悪そうに視線を逸らした。ああ、やっぱりあの時の隠し撮りは確信犯だったんだ。理性が吹き飛んだ、という言葉に、私は脱力してしまった。やはり陸玖は陸玖だ。デスマスクの執着心は健在らしい。
「これからも、俺は怜奈さんを撮り続けるから。覚悟しておいてね!」
陸玖はそう言い放つと、パッと笑顔になり、満足げにその場を去っていった。その背中を見送りながら、私は恵理と顔を見合わせた。
「……行こうか、怜奈」
私たちは再び家路についた。私の心の中には、まだ陸玖への嫌悪感は残っていたけれど、それとは別に、なんだか形容しがたい、複雑な感情が芽生え始めていた。それは、単なる不快感だけではなかった。彼の純粋な「撮りたい」という衝動と、その裏にある、私の変化を見守っていたという事実。




