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俺、女子高生になりました  作者: アガッタ
第5章 俺、星座を占います
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俺、星座を占います8 ~得手不得手~

陸玖に遭遇し、不運な金運と恋愛運を恨めしく思っている私。恵理はまだ陸玖にぷんぷん怒っていた。

「っていうか陸玖くん! なんでこんなところにいるのよ!」

恵理の問いに、陸玖はあっけらかんとした顔で答えた。

「ん? ああ、僕は最近話題のジェラート屋さんに行こうとしてたんだよ」

陸玖も、あのジェラートの店に? 私たちは驚いて顔を見合わせた。

「え、そうなの? もしかして、陸玖も甘いもの好きなの?」

私が尋ねると、陸玖は首を振った。

「いや、甘いものも好きだけど、今日はあの店のジェラートの盛り付けを写真に収めるために来たんだ。インスタとかで見てたんだけど、すごく芸術的でさ。あれは撮り甲斐があるなって」

恵理は、そんな陸玖に「臨時休業だったんだよ」と、もう一度念を押すように伝えた。

「ええっ!? そんなぁ! 今日のためにバッテリーも満タンにしてきたのに!」

心底がっかりした様子の陸玖。本当にジェラートの盛り付けを撮りに来ただけだったようだ。なんだか、少しだけ陸玖への不信感が薄れた気がした。……いや、薄れてないか。やっぱり私の体操着姿を撮っていたことは許せない。

「陸玖くんって、食べ物の写真とかも撮るんだ?」

恵理が興味津々に尋ねると、陸玖は嬉しそうに頷いた。

「うん! むしろ、元々は食べ物の写真を撮るのが好きなんだよね。だから、有名な中華料理屋さんとか、高級なフランス料理の店とか、あとは本格的なお寿司屋さんとかも、よく撮りに行くんだ」

意外な陸玖の一面に、恵理と私は驚きを隠せない。あの陸玖が、そんな本格的な写真を撮っていたなんて。

「よかったら、今までに撮った写真、見る?」

陸玖がそう言ってスマホを取り出すと、私たちは思わず「見たい!」と前のめりになった。陸玖がスマホの画面を私たちに見せると、そこに映し出された料理の数々に、私たちは息を呑んだ。

色とりどりの野菜が美しく盛り付けられたフレンチ、湯気が立ち上る中華料理、そしてまるで宝石のように輝く握り寿司。どれもこれも、プロの料理写真家が撮ったものと見間違えるほどのクオリティだ。食材の鮮やかさや、盛り付けの繊細さ、そして湯気や光の表現まで、完璧に計算されている。

「すごい……! これ、本当に陸玖くんが撮ったの!?」

恵理が目を丸くして尋ねる。私も同じ気持ちだった。こんなに本格的な写真を撮る腕前だったなんて。

「ああ、もちろん!」

得意げに胸を張る陸玖。彼の表情は、先ほど私たちを勝手に撮った時のような、どこか不気味な雰囲気は一切なく、ただただ純粋に自分の作品を披露する写真家の顔をしていた。

私は、彼の撮った料理の写真を見て、感動せざるを得なかった。彼のレンズを通して切り取られた料理は、ただの食べ物ではなく、まるで一つの芸術作品のようだった。


陸玖の撮った料理写真のあまりのクオリティに、感嘆の声を上げる私たち。まさかあの陸玖に、こんな才能があったなんて。プロ顔負けの腕前に、私は素直に感動していた。

そんな時、ふと疑問が頭をよぎった。

「ねえ、陸玖ってさ、鉄道写真とかも撮るの?」

私の言葉に、陸玖はパッと顔を上げて、途端に表情を曇らせた。

「……鉄道写真、か。あれは、僕には無理なんだ」

意外な返答に、恵理と顔を見合わせる。あんなに素晴らしい写真を撮る陸玖が、「無理」と断言するなんて。

「どうして?」

恵理が尋ねると、陸玖は小さな声で答えた。

「僕、動くものを撮るのが苦手なんだ。特に、鉄道写真なんて、本当に無理。あのスピード感の中で、完璧にピントを合わせるのが、どうしてもできないんだよ」

陸玖は、まるで苦手な科目を前にした時のように、うんざりした顔をしている。プロ並みの腕前を持つ彼に、そんな弱点があったなんて。

「一度だけ、停車した鉄道を撮ろうとしたことがあるんだけど……」

そこまで言って、陸玖は口を噤んだ。何か嫌な思い出でもあるのだろうか。

「そしたら、近くにいた撮り鉄に、邪魔されたっていうか……乱暴されたっていうか……」

陸玖の言葉に、私と恵理は息を呑んだ。撮り鉄。中にはマナーの悪い人もいると聞いたことはあるけれど、まさか陸玖がそんな目に遭っていたなんて。

「カメラを勝手に触られたり、罵声を浴びせられたり……あの時は本当に怖かった。だから、それ以来、鉄道写真を撮る気にはなれないんだ。あいつらのことは、本当にひどく恨んでる」

陸玖の顔には、はっきりと憎悪の感情が浮かんでいた。普段の明るい彼からは想像もつかない、鬼気迫る表情だ。彼にとって、どれほど嫌な経験だったのかが伝わってくる。

「結局、それ以来、僕は一度も鉄道写真を撮ったことがないんだ」

陸玖は、絞り出すようにそう言った。料理写真の腕前からは想像もつかない、意外な弱点と、その裏に隠された苦い経験。

恵理はそんな陸玖の肩をポンと叩いた。

「そっか……陸玖くん、辛い思いしたんだね。それは、鉄道写真だけはやめておいた方が良いよ。無理に撮らなくても、陸玖くんには得意な分野があるんだから」

恵理の優しい言葉に、陸玖は少しだけ表情を和らげた。

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