俺、星座を占います4 ~蟹座の陸玖~
ポテトチップスをかじりながら、恵理と私は星座と性格の不一致について語り合った。乙女座の私がシャカとは似ても似つかないし、双子座の恵理がサガのような二面性を持っているわけでもない。
「じゃあさ、星座と性格が一致してる人って、誰かいるのかな?」
ふと疑問に思った私がそう尋ねると、恵理は少し考えて、ポンと手を叩いた。
「もしかして、陸玖くんとか?」
陸玖? なんで陸玖が?
「え? 陸玖って、何座なの?」
「蟹座だよ」
恵理の言葉に、私は思わず噴き出しそうになった。蟹座。あの、やたらと怜奈、怜奈と私の周りをうろちょろしている陸玖が、蟹座。
「なんで蟹座と陸玖が一致してるって思うわけ?」
私が尋ねると、恵理はニヤニヤしながら答えた。
「だってさ、蟹座の黄金聖闘士ってデスマスクでしょ? 彼は教皇の悪事に加担したり、悪の心が強かったりするけど、家族や仲間を大切にする一面もあるって言われてるし……何より、一度決めたら執念深いというか、しつこいというか」
「しつこいって……」
思わず口を挟んでしまったが、恵理は気にせず続けた。
「怜奈のこと、一途に追いかけてるじゃない? その執着心っていうか、粘り強さっていうか……蟹みたいに、一度掴んだら離さない感じが、なんとなく一致してるなって」
恵理の言葉に、私はフリーズした。陸玖の、私のことになるとどこまでも食い下がってくるあの執着心。そして、彼の所属する写真部。
脳裏に、体操部の練習風景がフラッシュバックした。真剣に練習に取り組む私を、なぜか体育館の端で熱心にカメラに収めている陸玖の姿。そして、レオタード姿の私が、無防備にも彼に撮られていたという事実。
急に、背筋に冷たいものが走った。ゾワリと全身に鳥肌が立つ。あれは、単に部活風景を撮っていただけではなかったのか? もしかして、私を撮るために写真部に入ったのか? いや、まさか。そんなはずは。
「ひぇっ……」
思わず漏れた声に、恵理が不思議そうな顔で私を見る。
「どうしたの、怜奈?」
「いや、なんでもない……」
そう答えつつも、私の脳内では、体操着の私をファインダー越しに捉える陸玖の顔が、デスマスクとオーバーラップしていた。デスマスクの顔の頬骨のあたりに、うっすらと陸玖の顔が透けて見えるような、見えないような……。
「うーん、でも確かに、言われてみれば納得……かも」
幻滅しつつも、妙に腑に落ちてしまう自分がいることに、私はさらに寒気を感じた。こんなことを考えている時点で、私の中の乙女座シャカが、完全にデスマスクに蝕まれている気がする。
恵理はそんな私の様子に気づかないまま、さらに踏み込んできた。
「ねえ、怜奈ちゃ~ん、陸玖くんのこと、どう思ってるの?」
その言葉に、私はビクッと反応した。
「は!? いや、な、なに言ってんの恵理! 陸玖とは、なんの関係もないから!」
必死に否定する私を見て、恵理はニヤリと笑った。
「なーんてね! 冗談だよ、冗談!」
そう言って、恵理は腹を抱えて大爆笑し始めた。その笑い声が、私の焦りをさらに煽る。冗談なら、そんなに真剣な顔で聞かないでほしい。心臓に悪い。
まったく、恵理はからかうのが上手いんだから。




