俺、星座を占います1 ~転生した女子高生の会話~
「よっしゃあああ! 今日の私、冴えてる!」
コントローラーを掲げてガッツポーズを決めると、目の前の恵理はプイッと横を向いた。
「もう! 怜奈、絶対イカサマしてるでしょ! いくらなんでも、私が一本も取れないなんておかしいよ!」
不満げに膨れた頬が可愛い。高校生になっても、こんな風に素直に感情を表現できるって、すごいな。前世では、社会の荒波に揉まれて、感情なんてとっくにどこかへ置いてきてたっけ。そう考えると、この高校生活は本当に新鮮だ。体操部の練習で体を動かすのも、数学の問題を解くのも、友達とこうして馬鹿みたいにゲームで盛り上がるのも、全部が楽しい。
「イカサマって、まさか! 私が正々堂々勝ち続けてるだけだってば。恵理がもっと練習すればいいんだよ」
そうは言っても、格ゲー好きの私に、普段あまりゲームをしない恵理が勝てるはずがない。だって私、前世ではゲーセンの常連で、会社帰りによくゲーセンに寄っては、サラリーマンの群れをなぎ倒してたんだから。女子高生になっても、その腕は健在ってことかな。
恵理はまだ納得いかない顔で、私を睨みつけている。その視線が、私の部屋の本棚に向かった。
「あれ? 怜奈、これって……」
恵理の指さす先には、私が小学生の頃から読み続けている漫画がずらりと並んでいる。その中でも、特に目を引いたのが、『聖闘士星矢』のコミックスだった。
「わあ、懐かしい!」
「うん、部屋の掃除をしていたら偶然見つかっちゃって。」
恵理は目を輝かせながら、一冊手に取ってパラパラと読み始めた。そういえば恵理も、転生組だったっけ。お互い、性別も人生経験もまるで違う体で、また人生をやり直してるなんて、つくづく変な話だ。
「懐かしいよね。私も昔よく読んでたんだ。あの頃の漫画って、なんかこう、熱くてさ。今の漫画も面白いけど、ちょっと違うんだよね」
私が言うと、恵理も深く頷いた。
「うんうん、わかる! 今の漫画はさ、絵はすごく綺麗なんだけど、物語の熱量っていうか……なんて言うのかな、泥臭さ? みたいなのが薄い気がするんだよね」
「それな! キャラクターも、今の流行りなのかもしれないけど、全体的にシュッとしてて。昔のキャラクターって、もっと個性豊かだった気がするんだよね。特に男キャラなんか、みんなゴツくてさ。あの頃の週刊少年ジャンプは、友情! 努力! 勝利! って感じが全面に出てて、たまらなかったんだよなー」
恵理はまだ漫画を読み続けている。その真剣な横顔を見ていると、ふと疑問が湧いてきた。
「それにしてもさ、恵理も私も、なんでこんな漫画を読んでたんだろうね?」
私の言葉に、恵理はハッと顔を上げた。そして、お互いの顔を見合わせ、同時に吹き出した。
「たしかに!」
「だってこれ、どう考えても女の子が読むべき漫画じゃないよね」
私と恵理は、ゲラゲラと笑い合った。そうだよな、聖闘士星矢なんて、まさか女子高生の私が、こんなに熱く語る漫画になるとは。前世の自分が知ったら、さぞかし驚くだろうな。
窓から差し込む午後の光が、部屋を明るく照らしている。今日は部活も休みで、時間もたっぷりある。さて、次はどんな話をしようか。私の新しい人生は、こんな風に他愛のない笑い声で満たされていくんだな、なんてことを考えながら、私は再びコントローラーを手に取った。




