俺、先輩とお出かけします4 ~麻衣子先輩の生き地獄~
弓道体験を終え、さすがに少し疲れてきた。そろそろ休憩でも、と私は近くにあった出店を指差した。
「ちょっと休憩しません?」
「そうじゃな」
だが、私の言葉に、麻衣子先輩の顔がみるみるうちに青ざめていく。
「いやぁぁぁあああ!!」
次の瞬間には、近くにあった電柱にしがみつき、まさかの泣き出す始末だ。一体何事かと目を凝らすと、私が指差した出店は、幕末のおかげ参りにちなんだものらしく、なんと赤福が売られていた。そう、麻衣子先輩が大の苦手な甘味である。
「麻衣子~、せっかくじゃけん、これを機に甘いもの克服してみようや!」
咲良先輩が、麻衣子先輩に笑顔で語りかける。泣きじゃくる麻衣子先輩を、私と咲良先輩は有無を言わせず店へと連れて行った。
店に入ると、すぐに温かい緑茶と、想像よりもかなり大きめの赤福が目の前に置かれた。咲良先輩は「いただきまーす!」と満面の笑みで赤福を口に運び、私もそれに倣う。ここの赤福は、思ったよりも餅が小さく、餡の甘さが際立って美味しい。
「んー! 美味しい!」
「うん、美味しいですね!」
私と咲良先輩は、赤福を堪能した。
しかし、目の前の麻衣子先輩はというと、遠い目で涙を流しながら、赤福を黙々と食べ続けている。その姿は、まるで生き地獄を味わっているかのような表情だ。
「麻衣子先輩って、そんなに甘いものが苦手だったんですか?」
思わず咲良先輩に尋ねると、彼女は麻衣子先輩の甘いものアレルギー(?)エピソードを語り始めた。
「そうなんよ。前にも、お土産でもみじ饅頭あげたら、顔が引きつっとったし。この間卒業した先輩が差し出してくれたパウンドケーキも、一個だけもらってカバンの中にしまっとっただけなんよ」
さらに衝撃的な事実が明かされる。
「日帰り旅行の時なんか、昼食で出されたデザートのショートケーキにすら手をつけんかったんじゃけん。後で麻衣子に聞いてみたら、ほんまに甘いものが苦手で、『あんな呪物』って呼び捨てしとったわ」
まさか、そこまでとは。しかし、私にも思い当たる節があった。部活の練習の休憩中、麻衣子先輩にカルピスウォーターを差し出そうとしたら、無言で返そうとしていたのを思い出した。あの時の伏線がようやく回収できたように思い、私がふと改めて麻衣子先輩に目をやった。
その麻衣子先輩はやつれた表情で
「見た目あんこだけの呪物が……」
と、ぶつぶつ何かを呟いている。完全に心ここにあらず、といった様子だ。




