俺、部活はじめます Ex2 ~陸玖のラーメン道~
ここでは、海美視点で物語が進みます。
部活の練習を終えて自宅に戻ると、すでに弟の陸玖がソファの上でくつろいでいた。手にしているのは、グラビアアイドルの写真集。相変わらずだな、こいつは。
「ただいま、陸玖」
私が声をかけると、陸玖は顔を上げた。
「あ、姉ちゃん。おかえり」
陸玖は写真集を閉じ、真剣な顔で言った。
「姉ちゃん、実はこれ、撮影技術の研究なんだ。構図とか光の当て方とか、すごく参考になるんだよね」
ふうん、そうなのか。まあ、写真部の活動に真面目に取り組むのは良いことだ。
「それで、怜奈さんの写真、また撮りに行ったんでしょ?」
私がそう尋ねると、陸玖の目が輝いた。
「もちろん! 怜奈さんは被写体として絶好の素材だよ! あの運動能力と、時折見せる素の表情……まさに芸術だ!」
興奮気味に語る陸玖に、私はため息が出そうになった。
「あのね、陸玖。被写体なら、もっと身近にいるじゃない。私とか」
そう言ってみたものの、陸玖は私の言葉を軽く受け流した。
「姉ちゃん? 姉ちゃんも悪くないけど、怜奈さんはプロポーションが抜群にいいし、肌の質も非常に良いんだよ。写真に収めた時の光の反射が違うんだ」
陸玖の言葉に、私のプライドはズタボロになった。ぐっ、こいつ……。
「よーし、陸玖! お姉ちゃんと一緒に遊ぼうか!」
私は陸玖に飛びかかり、プロレス技をかけた。ギャーギャー騒ぐ陸玖を軽く締め上げてやった。
気がつけば、すでに外は薄暗くなっている。しまった、夕飯の支度がまだできていない。
「ねえ、陸玖。姉ちゃんの頼み聞いてくれる? 家系ラーメン、作ってほしいの」
陸玖は私の言葉にピタリと動きを止めた。ラーメン作りに目がない陸玖のことだ、きっと釣れるだろう。
「え、家系ラーメン? 分かった。なんとか作ってみる!」
陸玖は目を輝かせ、すぐにキッチンに向かった。ラーメンのレシピ本を片手に、スープ作りから始めた陸玖は、まさに職人の顔つきだ。
「姉ちゃん、かなり時間かかるから、近くの弁当屋さんで何か買ってきてくれない? 僕、集中するから!」
陸玖の言葉に、私は言われた通り弁当屋さんへ向かった。青椒肉絲弁当とチキンカツ弁当を買って戻ってきても、陸玖はスープ作りに夢中で、私のことなど全く目に入っていないようだった。
鍋から立ち上る湯気と、家系ラーメン特有の香りがキッチンに充満する。ラーメンが出来上がったのは、なんと朝の5時過ぎだった。陸玖は、出来上がったラーメンを一口食べると、満足そうに頷き、そのまま自分の部屋に戻って、すぐに寝てしまった。
私は陸玖が作ったラーメンをゆっくりと味わいながら、小さくガッツポーズをした。作戦成功だ。これでしばらくの間は、陸玖はラーメン作りに夢中になって、怜奈ちゃんの写真どころじゃなくなるだろう。私の可愛い弟は、手がかかるけど、案外チョロいのだ。




