俺、部活はじめます11 ~一件落着…のはずだった~
ここでは、恵理視点で物語が進みます。
数日後の昼休み、私は怜奈と食堂で弁当を食べていた。怜奈が唐揚げを頬張りながら「まさか本当に真空波動拳が効くなんてね!」なんて言っているのを聞いて、私は思わずため息をついた。
「怜奈、また格闘ゲームの技出しちゃったんでしょ? 大門先生、びっくりしてたよ、きっと」
怜奈は「えへへ」と照れ笑いするだけ。本当にこの子は、元サラリーマンのおじさんだったとは思えないくらい、女子高生生活を満喫している。いや、満喫しすぎているのかもしれない。
「そういえば、盗撮犯人のこと、少し分かったよ」
私が切り出すと、怜奈は急に真剣な顔になった。
「あの盗撮犯人ね、女性アスリートの盗撮の常習犯だったんだって。特に女子高生をターゲットにしてたみたい。それでね、どうやら里亜先輩がお気に入りだったみたいだよ」
怜奈は眉をひそめていた。盗撮犯が常習犯だったことにも驚いたけど、里亜先輩が特に狙われていたと知って、胸が締め付けられる思いがした。
「そういえば、里亜先輩、メンタルがすごく弱いんだって」
怜奈は、里亜先輩のことを、咲良先輩たちに聞いてみたそうだ。
「きっと盗撮犯は、里亜先輩のメンタルの弱さに漬け込んで、練習中のエッチな写真を撮り続けていたのかもしれない。里亜先輩の調子がおかしくなってからも、あの犯人は興奮を抑えきれずに、嫌がらせをエスカレートさせていったんだ……」
怜奈の推察に、ゾッとした。なんて卑劣な犯人なんだろう。里亜先輩がどれだけ苦しかったかと思うと、本当に許せない。
「そうだ。里亜先輩、来週からマネージャーとして部活に復帰することになったんだって!」
怜奈は明るそうにそう言った。
「え、本当!? それはよかったね!」
「うん。それに、医師の診断結果によっては、早い段階で本格復帰する可能性もあるって!」
里亜先輩がまた体操できる日が来るかもしれない。それは、怜奈たち体操部にとっても、何よりも嬉しいニュースだろう。
しかし、怜奈には、また別の悩みの種が一つできたようだった。
「ねぇ、恵理……」
怜奈が、げんなりした顔で私に助けを求めてきた。
「陸玖のヤツの盗撮が事実無根だったってことで、体操部の練習に立ち入ることが許されるようになっちゃったんだよ……」
怜奈の言葉を聞いて、私は思わず噴き出しそうになった。陸玖は怜奈の熱狂的なファンだ。体操部の練習に堂々と入れるようになったら、どうなるかなんて想像に難くない。
その時、偶然近くを通りかかった陸玖君が、私たちに気づいてニヤニヤしながら近づいてきた。
「怜奈さん、よろしく!」
陸玖は怜奈に満面の笑みを向けた。彼の瞳は、獲物を狙うハンターのようにギラギラしている。
「怜奈さんの柔軟運動とか、平均台や床の練習とか、これからは写真に収め放題だと思うと、興奮が隠せないでいますね!」
陸玖君はそう言って、すでにその場でシャッターを切るジェスチャーをしている。怜奈は、その言葉を聞いて、完全に青ざめていた。
「100万円級のシャッターチャンス! こいつぁすごいぜ!!」
「あーん、恵理えも~ん! もうヤダ、あいつ! どうにかしてーよぉ!!」
「ちょっと、あたしゃ猫のロボットなんかじゃないから!」
テンパってしまった怜奈ちゃんは私に泣きついてきた。せっかく盗撮犯を捕まえてホッとしたのに、今度は陸玖君という新たな、いや、再燃した悩みの種に直面している怜奈ちゃん。彼女の女子高生ライフは、これからもまだまだ波乱がありそう。いろいろな意味で。
俺、部活はじめます 終




