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俺、女子高生になりました  作者: アガッタ
第2章 俺、ショッピングに行ってきます
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はじめてのショッピング5 ~ナンパ男が相手なら…~

恵理が「ありがとう!」なんてキラキラした目で俺を見てくるもんだから、思わず照れてしまって、つい多めに参考書を渡してしまった。俺も数学は得意だったから、恵理の勉強を見るくらい、たやすいことだ。前世ではできなかった大学生活、今世で満喫させてやるか。

「恵理、そろそろ帰ろうよ。もう限界……」

さすがに朝から恵理の買い物に付き合わされ、挙句の果てに参考書まで選ばされた。前世の体力はどこへやら、この女子高生の体はもう悲鳴を上げている。ペンギンのぬいぐるみを抱きしめたまま、俺は疲労困憊で恵理に訴えかけた。

「えー、もう終わり? でも、怜奈も頑張ったもんね! じゃあ、また今度、一緒に服見に行こうね!」

恵理は満面の笑みでそう言った。って、また今度!? 俺の休日は、これからも恵理の着せ替え人形として消費されるのか……。そんな未来を想像して、俺は軽く眩暈を覚えた。

「お、おう……」

適当に返事をしながら、駅の改札へと向かおうとした、その時だった。

「ねぇ、そこのお嬢さんたち、今から暇?」

「良かったら、俺たちと遊ばない?」

俺たちの前に、いかにもチャラそうな若い男が二人、立ちはだかった。ナンパだ。勘弁してくれ。疲労がピークに達している今、誰かと会話する気力なんて残っちゃいない。

「すみません、急いでるんで」

俺はできるだけ丁寧な言葉を選んで、恵理の手を引いてその場を振り切ろうとした。しかし、男たちはしつこくついてくる。

「別にいいじゃん、ちょっとだけさ」

「そうそう、可愛いんだからさ」

と、一人の男が俺の肩をいやらしく撫でてきた。

ただでさえ露出の高い服装なのに、前世では味わったことのない悪寒がゾワリと走る。疲労と羞恥心が入り混じり、俺の精神は極限状態に達していた。その瞬間、両手に尋常ではない熱がこもるのを感じた。まるで、全身の気が一点に集中していくような感覚だ。

(まずい、これは……!)

俺の脳裏に、かつて格闘ゲームで叩き込んだコマンドが閃く。


《641236P》


そう、それは俺が最も得意とした、あの必殺技のコマンドだった。

「ッッッ……!」

次の瞬間、俺の両手から金色のオーラがほとばしる。

「覇王翔吼拳!!」

叫びと共に、圧縮された気弾が二人のナンパ男に向かって一直線に放たれた。まるで、漫画の世界から飛び出してきたかのような光景だ。

「え? なにこれ……うわあああああああ!!!」

「ぎゃあああああ!!!」

男たちは悲鳴を上げながら、あっという間に視界から消え去った。はるか遠くまで吹き飛んでいく姿が、辛うじて見える。

「怜奈……!?」

隣で一部始終を見ていた恵理が、呆然とした顔で俺を見上げていた。俺は、さっきまで熱を帯びていた両手を見て、冷静に呟いた。

「しまった……つい、身体が勝手に……」

女子高生になってまで、こんな能力に目覚めるとは思わなかった。

ナンパ男たちが彼方へ消え去った後、恵理はただ口を大きく開けたまま、固まっていた。そりゃそうだ、目の前で女子高生が必殺技繰り出したんだから。

「あ、はは……。恵理、とりあえず、さ、さっさと帰ろうか?」

俺は焦りながら、乾いた笑いを浮かべて恵理の腕を掴んだ。早くこの場を離れたかった。こんなところで野暮な能力を披露してしまったことに、猛烈に後悔した。前世では、ゲーセンの筐体の前でしか使わなかった技だというのに。

だが、恵理は一歩も動かない。そして、次の瞬間。


バシィィィン!!


突然、頭に衝撃が走った。目の前がチカチカする。

「いってぇぇぇえ!! 何すんだよ、恵理!!」

振り返ると、恵理がどこから取り出したのか、見慣れたハリセンを手にしていた。まさか、いつも持ち歩いてたのか!?

「何すんだよ、じゃないでしょ、怜奈!! あんたねぇ、女の子の体になったんだから、もっと女の子らしくしなさいよ!」

恵理は怒りに震える声で、ハリセンを振り上げながら説教を始めた。

「いくらナンパされても、そんな物騒な技を人に向けるなんて、論外よ! 女子高生として、淑女として、もっと作法を身につけなさい! 気品を持ちなさい! 節度を守りなさい! そして、恥を知りなさーいっ!!」

恵理の説教は止まらない。女性としての振る舞いについて、熱のこもった講義が始まった。

声はどんどん大きくなり、道行く人がちらちらとこちらを見ていく。恥ずかしい。羞恥心で死にそうだ。

「だいたいね、怜奈はTシャツにジーンズスカートもそうだけど、言葉遣いも荒いし、ガサツなんだから! 私が一生懸命プロデュースしてあげたのに、すぐにそんな荒々しいことしちゃって、台無しじゃないのよ!」

俺はもう、疲労困憊で意識が朦朧としていた。肩を撫でられた羞恥、覇王翔吼拳を放ってしまった後悔、そして恵理のハリセンと説教。今日の俺は、色々な意味で限界だ。

「恵理……もう、勘弁してほしい……」

涙目で懇願する俺の願いも虚しく、恵理の説教は駅の改札を抜け、電車の中でも続き、家に着いてからも、夜遅くまで響き渡るのであった。

女子高生に転生した俺の第二の人生は、どうやら格闘ゲームより、恵理の説教の方がよっぽどレベルが高いらしい。

俺、ショッピングに行ってきます 終

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