はじめてのショッピング2 ~ペンギンのぬいぐるみ~
恵理の着せ替え人形と化した俺は、その後もあれやこれやと試着させられ、へとへとになっていた。結局、あのオフショルダーのブラウスとミニスカートに加え、恵理が選んだリボン付きのパンプスと、小ぶりなショルダーバッグまで買う羽目になった。財布の中身が寂しくなるのを感じながら、これが女子高生のリア充生活なのかと、遠い目をしていた。
「次はアクセサリーだよ、怜奈! 服装がキマったら、小物も重要だからね!」
恵理はそう言って、キラキラしたアクセサリーが並ぶショップに吸い込まれていった。俺はもう、どこでもいいから座りたかった。
恵理が夢中でヘアピンやらネックレスやらを物色している間、俺は店内をぼんやりと見回していた。正直、キラキラしたものにはあまり興味がない。前世の俺だったら、この時間で格ゲーのコンボ練習でもしてるか、数学の問題でも解いてるかって感じだ。
そんな中、ふと視界の端に、もふもふとしたものが映った。何気なく目を向けると、そこにはぬいぐるみが並べられたコーナーがあった。
「ん? 何これ……」
数あるぬいぐるみの中で、俺の目を惹いたのは、小さな青いペンギンのぬいぐるみだった。手のひらサイズで、つぶらな瞳がこっちを見上げている。なぜだか、そのペンギンに強く惹きつけられた。
「かわいい……」
思わず声に出して呟いていた。恐る恐る手を伸ばし、そのペンギンを手に取る。ふわふわとした感触が心地よい。じっと見つめていると、胸の奥から温かいものがこみ上げてきた。まるで、ずっと昔から知っているような、懐かしい感覚。なんでだろう、このペンギン、どこかで見たことあるような……。
「怜~奈、何してるの?」
夢中になってペンギンを眺めていると、恵理がひょっこり顔を出した。
「あ、ぬいぐるみじゃん! かわいい~!」
恵理は俺の手の中のペンギンを見て、目を輝かせた。
「これ、怜奈が気に入ったの? めっちゃ可愛いね! よーし、私がおごってあげる!」
恵理は迷うことなく、レジへ向かっていった。俺が「え、いいよ、自分で買うよ」と言う間もなく、会計を済ませてしまった。
「ほら、怜奈に似合うと思って!」
そう言って、恵理はニコニコしながらペンギンを俺に手渡してくれた。俺は少し照れながらも、そのペンギンをそっと抱きしめた。こんなに小さなぬいぐるみ一つで、なんだか心が満たされる。これも、女子高生になった特権なのだろうか。
「ありがとう、恵理」
素直な感謝の気持ちが口からこぼれた。前世では、こんな風に素直に感情を表現することなんて滅多になかったのに。女子高生の体になって、俺の心も少しずつ柔らかくなっているのかもしれない。
ペンギンを抱きしめながら、俺は次の目的地のことを考えた。さすがにこれ以上買い物はないだろう。ゲーセンに行っても良いだろうか? いや、恵理のことだから、きっとまだ何か企んでいるに違いない。少なくとも、ゲーセンで遊ぶという確率は限りなく低くなってしまった。特に、金銭的な意味で……。