いじめ事件12 ~予感と行動~
恵理の警告を受けて、俺は用心することにした。翌朝、いつもとは違う登校ルートを選んだ。普段は電車を使っているが、その日は地下鉄に乗り、一駅手前で降りてから学校へ向かった。
普段のルートから外れたせいか、学校に着く頃にはもう疲れてしまった。しかし、これも用心のためだ。
昼休み、いつもだったら、机の上に弁当を広げて昼食をとるところだったが、ちょうど恵理がやってきた。
「怜奈、いっしょにご飯食べよ?」
恵理に誘われて、一緒に食堂で弁当を食べに行った。恵理はいつも通り、明るく振る舞っていた。特に変わったこともなく、平凡な一日が過ぎていくように思えた。
しかし、恵理の口から信じられない話を聞いた。
「怜奈、大変だったんだよ。怜奈が使ってる電車の駅のエスカレーターが、いきなり崩れたんだって。」
けが人が多数出て、中にはこの学校の生徒も含まれていたらしい。俺はぞっとした。もし、いつも通りに電車を使っていたら、俺もその事故に巻き込まれていたかもしれない。これは偶然なのか、それとも田岸たちの仕業なのか。
そして帰りは、公園に立ち寄らず、まっすぐ家に帰った。
何事もなく家に到着して間もなく、恵理から電話がかかってきた。
「怜奈、無事か? 公園で通り魔事件があった。」
恵理の声は、先ほどとは打って変わって、緊迫していた。
「ちょうど、お前がいつもくつろいでいる時間帯に発生したんだ。うちの生徒も巻き込まれたそうだ。通り魔は逃走したらしい。」
俺は、田岸たちの周到さと、巧妙さに戦慄した。エスカレーターの事故も、公園での通り魔事件も、全て俺をターゲットにした罠だったのかもしれない。
もし恵理の警告がなければ、俺は今頃、怪我をしていたか、あるいはもっとひどい目に遭っていたかもしれない。
余談だが、この日の昼休み、俺の教室にはムカデとゲジゲジが湧いて出てきて、殺虫剤が撒かれるなど大騒ぎで、弁当を食べるどころではなかったそうだ。