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俺、女子高生になりました  作者: アガッタ
プロローグ 俺、女子高生になりました
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プロローグ ~俺、女子高生になりました~

目を覚ますと、そこは真っ白な世界だった。天井は蛍光灯でまぶしく、消毒液の匂いが鼻をつく。ああ、俺は死んだんだな。トラックに轢かれる瞬間の衝撃が、まだ生々しく残っている。

「怜奈、目が覚めたのね! よかった……本当に、よかった……」

横から聞こえた声に振り返ると、見慣れない男女が俺をのぞき込んでいた。女の人は、俺の手を握りしめながら泣いている。男の人は、安堵の表情で俺を見つめている。

「お母さん、お父さん……」

なぜか、彼らをそう呼ぶべきだと直感した。ちょっと待てや。俺は、独身のサラリーマンだったはずだ。なぜここにいるんだ? しかも、発した声が妙に甲高い。

混乱する俺の横で、白衣を着た男が淡々と説明を始める。

「意識が戻ってよかった。気分はどうですか?」

医者らしいその男は、俺の瞳孔をライトで確認しながら続ける。

「あなた、屋上から飛び降りたそうですね。幸い、一階下のベランダに引っかかり、命に別状はありませんでした。ただ、一時的に意識を失っていたようです」

飛び降り?屋上?何のことだ?俺はただのサラリーマンで、屋上から飛び降りるような自殺願望なんてなかった。

俺は確か、残業が終わってから、もうろうとした状態で家路についていた。交差点に差し掛かったところで、気が付いたら、速いスピードで直進してきたトラックにひかれて……。そこで俺の記憶は途切れている。だから、そう、これは夢なのだ。夢であるに違いない。

しかし、夢だったら、なぜ見慣れない男女が俺の前にいたのだ? 夢のまた夢でも見ているとでもいうのか。


頭の中が混乱しているなか、ふと尿意を感じた。

「トイレですか。」

近くにいた看護師に支えられて、ベッドから起き上がり、足元にあるスリッパに足を入れる。体は若干ふらついているが、何とか歩けそうだ。ふらつく体を支えながら、俺はトイレを目指した。

トイレに入った瞬間、目の前に掛けられてあった鏡に映った自分を見て、俺は思わず息をのんだ。


「なんじゃこりゃあああ!?」


不覚にも、松田優作の名セリフよろしく、悲鳴にも似たような叫び声をあげてしまった。そこにいたのは、茶色のセミロングの髪型をした、かわいらしい女子高校生だった。

「うそ……だろ……」

鏡の中の女子は、俺と同じように目を見開いている。何度か瞬きをしたり、頬をつねったりしても、その姿は変わらない。俺は、16歳の女子高生になっていたのだ。

転生。漫画やラノベでよく見るやつだ。まさか、俺が経験するとは。


浅間怜奈。俺が転生した女子高生の名前らしい。

医者の話によると、この怜奈という女の子は、自殺を図ったらしい。病院のベッドに戻ると、両親が深刻な顔で俺を見つめていた。

「怜奈、どうしてこんなことを……」

母の言葉に、俺は何も答えられなかった。俺は、この「怜奈」の記憶を持っていない。ただ、彼女が死のうとしていたという事実だけが、重くのしかかっていた。

俺は、サラリーマン時代、特にやりたいこともなく、ただ毎日をこなすだけの人生だった。でも、この新しい体で、もう一度人生をやり直せる。この女子高生浅間怜奈として、生き直すのだ。

「心配かけてごめん。もう、大丈夫だから」

そう言うと、母は泣きながら俺を抱きしめた。

俺は、もう一度、人生をやり直すチャンスをもらった。この体で、今度こそ、やりたいことを見つけてみせる。

浅間怜奈としての、新たな人生が、ここから始まる。

今後、前書きに特に断りがなければ、主人公の怜奈視点で物語が進みます。

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