表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/8

2

ウタ先生のレッスンはとても丁寧だった。

躓きそうな箇所があれば何度もやってくれるし、言語化能力もとても高い人で分かりやすかった。

厳しいレッスンも勿論ためになるが、彼女のような優しいレッスンも新鮮で、練習生一人一人のことをきちんと社会人として扱ってくれたことが大学生の俺にはどこかむず痒かった。


「真人、すごく上手になりましたね」

真人、と俺の名前を呼ぶ彼女の声はとても澄んでいて、練習をしている曲がスタジオ全体に流れていてもよく聞こえた。


「ありがとうございます。ウタ先生の教え方がめっちゃ分かりやすいおかげです」

「ほんと?ありがとう。こうやって基礎からダンスを教えるのって初めてだから、そう言ってもらえて嬉しいです」


彼女は誰にでも敬語だったが、時折出るタメ口は少し親しくなれた気がして嬉しかった。


ウタ先生は今まで舞台の演出やアーティストへの振り付け提供などをやっていたらしい。

その仕事のなかでどうやらうちの事務所のお偉いさんと縁があり、今回トレーナーをやることになったそうだ。


「ウタ先生、若いのに色々やっててすごいですよね… 俺なんか2年やってても全然上達してる気がしないです」

「真人は十分上手になってますよ。私が来てからまだ2ヶ月ですけど、その間にも成長してます。

 それに私みんなより10個は歳離れてますし…そりゃあ色々経験があって当たり前ですよ」

「え」


10個…?少なくとも30歳は超えているということか。

大人びた雰囲気を纏っていると思っていたが、それでも美しく、かわいらしい彼女は下手したら同い年かもと思っていた俺には衝撃的な事実だった。


そんな衝撃を受けている様子の俺を見て、彼女は小さく笑った。

「今年で31になります。あなたたちからしたらもうおばさんでしょう?」

「いや、そんな…でも正直、同い年くらいかと思ってました。全然見えないです」


彼女はまたふふ、と笑い、ありがとうと呟いた。


11個も年上の彼女からしたら、俺はとにかく子供に映っているだろう。

正体の分からない負の感情が、心の中を少しずつ濁していくのを感じた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ