Prolog
街中に冷たい雨が降り注ぐ。
私の心にも…雨が降っている。
少女は墓石の前で一人泣いていた。
「…父さん…母さんっ」
墓石には、シルヴィア・ロゼッタ
シリウス・ロゼッタ
そう、刻まれていた。
ザッ…ザッ。
草陰から人の足音。
「うっ…うぅっ…誰?」
姿を現したのは…
黒いロングコートに金の腕時計。
そして、この国の皇族の特徴の一つでもある碧眼を持った男。
優しそうな雰囲気からは想像できないほどの声の低さで
「初めまして、君はシリウス・ローズヴェルトの娘かい?」
「…シリウスは、私の父の名ですが、私の父はシリウス・ロゼッタです」
「そうかい、私はハンネス・ローズヴェルト、君の父の兄です」
ローズヴェルト。
その名に聞き覚えがないわけが無い。
ローズヴェルトは、この国の皇族の名前。
つまり、この人は…この方は。
この国の現皇帝。
バッ!!
「!」
「も、申し訳、ありません、皇帝陛下、気づかなかったとはいえ、先程のような無礼な言動どうか、お許しください」
「頭をあげなさい、言っただろう?君の父の兄だと」
私の父は母と出会い家を出て、今の家に住んでたと聞いた。
まさか、皇族だったなんて…。
「君、私の家に来ないかい?君一人では生きていくのに大変だろう?」
君はまだ10の子供なんだから。と。
…確かに、この国で子供が一人生きていくのは難しい。
だからと言って、皇族の、しかも、皇帝陛下の家に着いていくなんて…いくら父さんが、元皇族だからと言っても…おこがましい気がする。
「兄弟は多いが、屋敷は広いからね、家族が増えるのは大歓迎なんだ」
なんて、優しい人なんだろう。
私は…差し出されたその手を拒むことなんて出来なかった。
「ようこそ、我がローズヴェルト家へ」
私はその日から、平民では無く、皇族になった。