家
「おねーちゃん!!リンシアが帰りましたよー!!」
ガチャっ
「あらお帰りリンシア……って、あ、あなたはっ!!」
「あはは…………どうも」
「う、嘘…………リンシアが男の人を………」
「あ、あの……リンシアちゃんのお姉さんですか?」
「あ、はいっ!!ま、まぁなんと言うか……そんな関係……ですね」
「アネットは私のおねーちゃんですよね!!」
「もうっ、私が言う前に名前を言わないでくださいリンシア!!」
「アネットさんですか…………良い名前ですね」
「そ、それは……その…………」
キュゥゥゥゥンッ
(うーん……なんだろう……)
アネットは凄い恥ずかしがっている。
あまり他人慣れしてないんだろうか?
妹のリンシアとは対照的だ。
何より、この可愛い声を僕はどこかで聞いた事が……
いやきっと空似だろう。
「アロウさん今暮らす場所に困ってるらしいんです」
「まぁそんな……こんな素敵な方が暮らす場所に困るなんて。レギュリス王国の人達に人の心は無いんでしょうか?」
「あはは……」
手持ちのお金が全く無いわけでは無かったんだけど、宛てもなく放浪していたら割とピンチになってきたのも事実だ。
「だから暫く私達の家で暮らして貰おうと思うんです。おねーちゃん……いいよね?」
シィィインッ
「そ、それは……その…………」
(リンシアちゃん……本当になんだか申し訳無いなぁ……)
「わ、私は……平気だけど……他の子達が納得するか……」
「なら平気ですね。皆さんきっとアロウさんの事を温かく迎えてくれる筈ですから」
え、皆さんって……
「まさかアネットさん以外にもリンシアちゃんにはお姉さんが?」
「おねーちゃん……いえ、人それぞれですね。アネットおねーちゃん以外は今仕事に出てます」
「わ、私も……家を守るという大事な仕事が……」
「明後日位までには全員と会える筈ですよ」
「り、リンシアちゃん!お姉ちゃんの事無視しないで~」
(そうか…………)
確かに案内された家は僕が想像していたより大きかったし、そうかもしれないな…………。
「此方がアロウさんの部屋です、暫く誰も使って無かったのでかなり埃まみれで申し訳無いのですが……」
「いや十分だよ、ありがとう。この恩は必ず……」
「いえいえ気になさらないでください!!騎士様は常にお国の為に戦っているのですから……」
「あ、それは…………」
そうか、まだ辺境の田舎の方には僕が騎士団を追放された事は伝わっていないんだ。
「…………アロウさん?」
「あ、いや……なんでもないよ。じゃあお言葉に甘えて休ませて貰うね」
「はいっ、ゆっくりしていってください。あ、良かったら私もこの部屋の片付けを手伝います!!」
「あはは……すまないね……」
このどこまでも澄んだ目を見ていると不思議と浄化されてしまう。
それだけに本当の僕の今をハッキリ伝えていないのが良心に来るものだが…………
(続く)