出会い
バサッ
「嫌な雨だな」
やる気が全く出ない。
「もうお前はいらない、お前の魔術はまるで魔族のようだ。そんな奴がいたら騎士団の名が汚れる!だからいらない!!」
「近付かないでよ!!ダイタロス宮廷騎士団の肩書きの無いアロウなんてアロウじゃないなら!!」
「君に近付けば出世出来ると思ったのに…………さよならだ」
仲間、許嫁、親友だと思った奴等に次々掌を返された。
「僕には…………もう何もない」
両親は昔の戦争で死んだ。兄弟の宛はない。
親代わりに育ててくれた恩師もこの世にいない。
「軍の前衛辺りに志願して死ぬかな……もう他に宛も大切なモノも無いわけだし」
騎士団に入るまで、必死に努力した。
素振りは手まめがつぶれる程じゃ済まない位やった。
魔術の勉強は寝る間を惜しむ程した。
1日3時間しか寝ていない時の方がザラだった。
騎士団に入れてからは常に騎士としての誇りを忘れた事は無かった。
各地を転戦し、結果を出していく内に僕は組織のNo.2にまで登り詰めた。
このまま行けば次期団長の道も近い…………その矢先だったってのに。
そんな時だった。
サッ
「ご…………ごめんなさい…………私っ、つい……」
「…………………………」
悲しいな。
遂にこんな小さい女の子にまで気を使われてしまうとは。
バサッ
「あ、あのっ…………」
「ありがとう」
さて、気を取り直さないとな。
「待ってください!!アロウ・ルクセルさん!!」
「僕の名前、なんで知ってるんだ?」
「しっ、知らない人なんていません!!レギュリス王国ダイタロス宮廷騎士団最強の騎士の名前を知らない人がいる方がおかしいです!!」
「…………………………」
だから辺境に逃げてきたってのに。
そんな有名人が落ちぶれたなんて皆に知られたら僕は……
「あ、あの……私の家に来ませんか!!」
「君の…………家に?」
それが僕と彼女達との出会いで始まりだった…………。
(続く)