第6話 波乱万丈な奇跡の勝利!!
話を挟みました。
次回からは特に大幅に変化させることはしないと思います。
「ルミナス・・・」
モンチャが呟いた。
『狡猾三頭の蜘蛛』の全身を穿った光芒。
その輝きはルミナスが放つ魔法にそっくりの光。
「ルミナス!」
モンチャは「もしかして、」という淡い気持ちを『狡猾三頭の蜘蛛』の口内で抱き始め、希望を持ち始める。
『狡猾三頭の蜘蛛』は内側から漏れだす光の粒子砲に悶え苦しんでいる。
「キシィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!」
『狡猾三頭の蜘蛛』はあまりの苦痛さにモンチャをペッ!と吐き出し、お尻から出した『鋼糸』で全身を繭の様にグルグル巻きにして光を抑える。
だが漏れ出る。
その光は全てを浄化する神聖なる光明。
丈夫な糸ごと焼き切れる。
「キィイイイイイ!!!!!」
口内から解放されたモンチャは唾液を纏わせた翼を羽ばたかせ、その光景を俯瞰して見ている。
光が『狡猾三頭の蜘蛛』を支配している場面を、
「オイラも攻撃しなきゃ、なんだよ!」
それからモンチャは鉄の剣をギュッと握りしめて『狡猾三頭の蜘蛛』に向かって剣先を突き付け、一本の槍の様に飛び駆けた!!
ここが攻撃する好機だと思ったのだ。
「これでも食らえ!!!」
グサッ!!
勢いよく刺さった。
『狡猾三頭の蜘蛛』の目に剣が奥深くまで刺さった。
「キィイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!」
紫の血飛沫が飛び散り、モンチャや周囲のモノをラベンダー色に染める。
奇声を出し、『狡猾三頭の蜘蛛』は暴れ狂う。
そして『狡猾三頭の蜘蛛』は体内から這い上がって来る血と共に何かをペッ!と吐き出した。
モンチャは剣の柄にしがみつき乍らも気になったので、吐き出された汚物を見た。
目を細め、凝視した。
すると・・・
「痛てててて、くっそー、まだ視界がくらくらする。足元が覚束ないし体中が痛い。でも何とか脱出する事には成功したか、まだ動けるか?」
そこには薄い金髪に壊れかけのボロボロ鎧を着こんだ一人の男がいた。
紫の血を纏っている。
「ルミナス!?」
モンチャは男の名前を呼ぶ。
「おっ!モンチャ無事だったか!」
「当たり前なんだよ!!」
なんと汚物から出てきたのは俺だ!
モンチャは泣いて喜ぶ。
しかし今は戦闘中。
『狡猾三頭の蜘蛛』は未だ健在だ。
「キシィイイイイ!」
俺は汚物を纏いながらモンチャを見上げる。
すると、『耐久力』を上げる補助魔法を自身に掛けたからだろうか、貧弱なパワーでも振るい落とされずに粘っている。
モンチャは俺の姿を見つけるや否や剣を引っこ抜き、両手で重そうに持ち上げては俺の胸へと飛び込んで来た。
鼻水と涙で顔がぐしゃぐしゃだ。
「もー!しNPあいしTndYOOOOー-!!」(泣)
「わ、悪いモンチャ。いや~さすがにあの状況は肝を冷やしたぜ。ハハハ。でも強力な魔法を一発撃てるだけの魔力があったから脱出できた。(は、鼻水が・・・水分が・・・)」
「ハハハ、じゃないんだよ!ホントに死んじゃったかもって!そう思って・・・」
涙ぐみながらも甘えて来るモンチャを優しく包容する。
そして俺は、モンチャに問う。
「モンチャ、悪いが呑気に無事を喜んでいる場合じゃない。生きてるなら今度こそ決着を着けなきゃならん。今度こそ『狡猾三頭の蜘蛛』に俺は勝つ!だからもう一度俺をサポートしてくれるか?モンチャ。」ゴクゴク
魔力回復ポーションを飲みながら、鉄の剣はモンチャから俺へと渡る。
目の前に立ち塞がる敵。
『狡猾三頭の蜘蛛』を見つめて剣を握り、戦う姿勢を見せ付ける。
モンチャは涙を拭き、鼻水を啜り、パシパシと自身の両頬を力強く叩く。
そして先程までの殻を破り、自信に満ちたモンチャへと変化する。
「支援ならオイラにドン!とお任せなんだよ!」
「あぁ、頼りにしてるぜ相棒!」
互いに頷き合い、モンチャは【ヒーリング】の魔法を使って俺を回復する。すると少しは身体の調子が戻り、体力も回復する。
そして、『狡猾三頭の蜘蛛』が毒の弾を吐き放った瞬間を合図にし、俺はスキルを使った。
「【金魔雷公纏う収束殿】発動!」
ー----------------
スキル:【金魔雷公纏う収束殿】
黄金色に輝き光る雷を剣に纏わせることで、2毎秒ごとに物理攻撃力、魔法攻撃力、切れ味、斬撃速度が徐々に上がって行く能力。
職業が魔法剣士であり、高い志を持っている者のみが得られるスキルである。
ー----------------
金色に輝く雷を白銀に光る剣に纏わせ、2毎秒ごとに力強く主張する雷轟で『狡猾三頭の蜘蛛』に立ち向かう。
「はああああああああああ!」
モンチャは俺を魔法で強化しまくる。
「【敏捷強化】+【耐久力強化】+【攻撃力強化】+【防御力強化】」
これで俺のステータスは一時的に上がり、攻撃力については【金魔雷公纏う収束殿】の効果もアリ、凄いことになっているだろう。
「キシィイイイイイイイ!」
左右の口からは毒の弾。
中央の頭からは毒ガスを放ち、とことん俺の身体を蝕みに来る攻撃を放ってくる。
『狡猾三頭の蜘蛛』は目玉を一つ潰されている。
怒り狂っている今の『狡猾三頭の蜘蛛』は俺を捕食対象ではなく、敵として認識している。
一発一発の攻撃に容赦のない怒りの感情が乗った無慈悲なる毒を浴びせに掛かる。
糸も飛ばして来る。
しかし今の俺には止まって見える。
モンチャの補助魔法のお陰である。
蛇行し、剣で毒を切り裂き、躱し、懐まで一気に入り込む。
『狡猾三頭の蜘蛛』のイライラメーターは頂点に達する。
そして俺も同様だ。
怒りの感情では無いにしろ、此処までボロボロにやられて逃走したのでは後味の悪いものを残してしまう。
なのでこの一撃に!全ての魔力と気持ちを乗せて討伐する。
「はああああああああ!!!」
俺は地から天へとより高く、より力強く跳躍する。
『狡猾三頭の蜘蛛』は俺を最後まで怒りの目付きで見ていたが、悉く攻撃を躱す俺、そして段々と強く成長していく俺に恐怖を覚え、数歩ほど後ずさる。
「キ、キシィイイ!?」
「逃がすかああああああああ!【雷帝】!!!」
「いっけえええええええええルミナス!!!!!!!」
スキルと強化魔法の恩恵が上乗せされた渾身の一振りを俺は振るう。
すると、緑生い茂る『ダンジョン』のある一か所で雷鳴が轟き、眩い雷が激しく落ちた!
ゴロロロロロロロロロロロロロロ!!!!
「キシィイイイイイイイイイイイイイイ!!!!」
『狡猾三頭の蜘蛛』は俺の一撃をモロに食らい、真っ黒く焼き焦げ木炭となる。
そして『魔石』を落とした。
他にも『ドロップアイテム』を落とし、紫色の血を流して『狡猾三頭の蜘蛛』は俺に敗退した。
「か、勝った。」はぁはぁ、
「勝ったんだよルミナス!」
「あぁ!」はぁはぁはぁ、
先の攻撃で魔力が完全にゼロとなってしまい、全体的に見れば波乱万丈な結果。
しかし超ギリギリで勝ち取った制勝。
俺とモンチャは心激しく喜び合い、笑い、勝利の達成感に浸る。
この勝負、俺とモンチャの勝ちだ!!!!
~ドロップアイテム~
・残光なるギョロ目
・丈夫な糸
・『狡猾三頭の蜘蛛』の毒袋