第4話 勇敢に挑んだ結末がまさか・・・・・・・
最後の方を改善しました。
NO.21
個体名:『狡猾三頭の蜘蛛』
Aランクの蜘蛛型モンスター。
三頭ある蜘蛛の頭はそれぞれ『悪知恵』『卑劣』『暴食』の考えを持っており、非常に狡猾。
自身より強い相手には『逃走』を、
自身より弱い相手には『悪知恵』と『卑劣』思考を回し、粘着性のある糸で獲物を釣り上げたり、自身のフィールドに大量の蜘蛛の巣を張り、引っ掛かった餌を『暴食』の頭で食らう。
全くもって厄介極まりない相手だ。
「キシィイイイイイイ!」
「来るんだよルミナス!」
「モンチャは後方へ下がっていつも通りに俺を支援してくれ、」
「お任せなんだよ。」
俺は『狡猾三頭の蜘蛛』に向かって走り出す。
銀色に輝く剣に雷を纏わせ、木の幹を自身の足場に三角跳びで斬撃を与える。
だが前足の先端部分でガードされた。
ギギギギギギギギギギギ!
「硬いな、」
俺は蜘蛛の足と鍔迫り合わせるのを止め、奴の顔に強撃しようと正面に入る。
しかし奴は口から『糸の弾丸』を飛ばし、俺を拘束しに動いた。
「そんなチンケな攻撃は切り裂く!」
雷の熱と俺の光速斬撃の合わせ技で『糸の弾丸』を容易く一刀両断。
斬れた断面図は赤く焼かれている。
「拘束しに動くってことは俺なんか全然怖くないってことか?俺も甘く見られたものだな。だがその余裕が何時まで持つかな!」
『狡猾三頭の蜘蛛』が尻尾撒いて逃げないという事は自身より弱い相手と認識している証拠である。
だがそんな時、モンチャが補助魔法で攻撃力を強化してくれる。
【攻撃力強化】!
「ナイスだモンチャ!」
「何年の付き合いだと思ってるんだよ。」
戦闘時でも呑気に会話を挟みながら『狡猾三頭の蜘蛛』に俺達の仲の良しさを見せつける。
それと同時に俺は奴の懐まで一気に潜り込み、【雷斬り】で奴の前足二本を華麗なテクで切断してやった。
奴の余裕な態度も斬れれば一石二鳥だがな、
「キシィイイイイイイイイイイ!」
「舐めた態度取るからなんだよ。」
俺は攻撃する姿勢を崩さない。
『狡猾三頭の蜘蛛』は悲痛な叫びを上げて天を轟かせる。
だが直ぐに前傾姿勢になり、目の色が青から赤に変わった。
戦闘態勢だ。
『狡猾三頭の蜘蛛』は口から特大の毒弾を一発放って来る。
どうやら慢心する精神はゴミ箱に捨てて来たらしい。
「はああああああ!」
俺は飛び込みと同時に身体を捻る事で毒の弾を虚空で躱す。
そして剣を振るう。
『狡猾三頭の蜘蛛』の頭に斬撃が入る。
そしてそのまま奴の身体を上って【雷帝】を食らわす。
激しい稲妻が地を穿つかの如く強い衝撃と共に『狡猾三頭の蜘蛛』に電流が走り、雷鳴がなる。
ゴロロロロロ!
「キシィイイイイイイイイイイ!」
「案外Aランクモンスターと言えども楽勝だな。」
そう思った時、『狡猾三頭の蜘蛛』はお尻の向きを天井へと突き上げ、自身の傷口へと被さるように『鋼糸』を噴出した。
「一体何を・・・」
止血だ。
丈夫な糸をグルグル巻きにする事により、血が漏れないよう包帯の代わりとして使ったのだ。
さすが『悪知恵』を働かせるだけの思考能力があるモンスター。
『狡猾』とはよく言ったものだ。
「っ!?Aランクモンスターにまでなるとこんな事までするのか!?」
「キシィイイイイイイイ!」グググ
『狡猾三頭の蜘蛛』が体を揺さぶり俺を落とそうとしてくる。
自身の身体を樹へ叩きつけたりもして必死だ。
「キシィイイイイイ!」ドン!ドン!
なのでここは俺も一旦退き、『狡猾三頭の蜘蛛』の身体から降りる。
しかし、俺が地面に着地した瞬間を狙い『狡猾三頭の蜘蛛』はお尻から酸性の毒糸を網掛け上に出し、攻撃して来る。
俺は【エナジーボルト】を放って対抗する。
シュウウウウ!
「溶けた!?」
互いの攻撃が衝突した時【エナジーボルト】が溶けた。
これには吃驚仰天である。
「躱した方がよさそうだな。」
冷静な思考で判断し、軽い足取りで後ろへ跳ぶ。
だが・・・
「!?」
俺の足に蜘蛛の糸が付着していた。
一本の細い糸ではない。
綱引きに使う縄の様に、螺旋を描いた太い蜘蛛の糸で俺の足を掴んでいた。
『狡猾三頭の蜘蛛』が中前足を軽くピクッと動かす。
すると俺は足を持って行かれた。
そして瞬きをするまでも無く俺は半径20mの範囲でグルグルと回され、樹に叩きつけられ、そのまま『狡猾三頭の蜘蛛』がいる所まで土を抉りながら引きづられ、短くなった蜘蛛の前足で拘束された!
「ぐはっ!」
いつの間に糸を・・・気付かなかった。
もしかして俺があの攻撃に注意を向けられている瞬間に糸を忍ばせていたのか?
狡猾な奴め、
「ルミナス!」
「来ちゃ駄目だモンチャ!」
「でも!」
「お前が倒れたら誰が回復するんだ?モンチャはサポート役兼回復係。まずはスキルで、ぐはっ、はぁはぁはぁ、あの攻撃で相当のダメージがっ、」
口から大量の血を吐血し、手足がしびれて動かない。
鉄の鎧はボロボロになり、土だらけ。
剣は遠心力が働いた時に落としてしまい、頭からは血も流れてる。
頭がくらくらし、向こう側の世界が見えそうな所まで陥る。
全体的に力が入らない。ヤバイ。
これは・・・終わったか?
いやまだだ。まだ魔力がある。
半分切ってしまったが、強力な魔法を一発撃てるだけの魔力がある。
それにスキルだって、
俺はまだ諦めないぞ!
だが現実は非常である。
『ダンジョン』
それは過酷な環境内で課せられる試練。
どれだけ仲間がいたとて強力な一なる個体に通用するかどうかは別問題。
腕に自信がある奴でも儚く散り、『夢』も『希望』も『憧れ』も呆気なく砕け散る。
「ルミナスー---!」
考える思考を放棄し、本能のまま飛び駆けるモンチャ。
だが事態は既に手遅れだった・・・。
ガブッ!!
抵抗も出来ずに俺は『狡猾三頭の蜘蛛』に食べられた。
本当に食べられた。
モンチャを残して食べられた。
「キシィイイイイイイイイイイイ〜〜」
「ルミナス・・・?」