第2話 ダンジョン内部で早々に緊急事態!?
第2話だよ。
修正、ムレバツソウをEランクからDランクへと改変しました。
俺たちは『ダンジョン』の登竜門を潜った。
そしてその先にあったものは、辺り一帯に広がる綺麗な緑である。
健康的な緑葉が春風の様な温かい風で靡いており、陽光が晴天から差し込む。
雲が悠々と空を泳いでいる下では綺麗な花々も咲いており、幻想的世界を形成していた。
不思議な景色である。
いや、そもそも『ダンジョン』は神なる存在が作ったとされる古の建造物。
『ダンジョン』の中にもう一つの世界を作る事くらい不思議じゃない。
そして・・・
「ここが・・・『ダンジョン』
昔から夢見てた憧れの『ダンジョン』内部。俺の冒険はここから始まるのか。」
無意識の内に、内側からやる気の様なものが段々と込み上げてくる。
感情が高ぶっているのだ。
一方モンチャは、
「おおー-!凄いんだよ!地上の世界には無い植物がいっぱい生えているんだよルミナス!!見て見て!」
辺りをウロウロしては飛び回り、俺に『ダンジョン』の凄さを必要以上に教えて来る。
俺だって初めて『ダンジョン』に来たんだ。
凄さなんて言われるまでも無く分かる。
「まぁまぁ落ち着けってモンチャ。興奮する気持ちはわかるが『ダンジョン』に入ったからにはモンスターの存在は必然。だからここは俺が守ってやる! からモンチャはいつも通りに後ろから付いて来い、」
しかしモンチャは俺の話に聞く耳を貸さず、自由奔放に飛び回る。
モンチャめ、『リニアプラント』に辿り着く前にあれ程俺に注意事項を馬鹿みたいに垂れ流してきた癖に今は呑気に観光気分か?
ここは『ダンジョン』
危険がいっぱいの『魔物祭り』ぞ!
いつもは心配性な性格が露骨に出る癖に始めて見るモノには好奇心旺盛なんだから注意散漫にも程があるだろ!
「あの植物は何かな~?甘い香りがするんだよ。果物?にしては蜂蜜のような~、スイーツのような香りがするんだよ~。ちょっと近付いてみよっと、」
モンチャは昆虫のように甘美な香りに誘われて、如何にも毒々しい色した花へと距離を縮めて行く。
「鼻腔を幸せな気分にしてくれる最高の匂いだよ~、」
おまけに俺の話なんて横流しだし!
ん?あの植物って・・・マズイマズイマズイ!
俺は嫌な予感がしたので大声で危険を知らせる。
「バカバカバカ!その植物に不用意に近付いたら・・・」
俺は急いでモンチャを連れ戻そうと走って手を伸ばす。
だが、遅かったようだ。
シュルッ!
「うわっ!何なんだよこの蔓は!って痛い痛い痛い!茨が翼に、耳に絡みついたんだよ!!助けてルミナス!」
頭部に生えている白翼が何処からともなく現れた蔓と茨でグルグル巻きに拘束され、茨の棘に内包されている毒を注入されてモンチャは毒状態になった。
「うっっっ・・・」
「えぇい!俺の相棒を離せ!」
「やれやれ」と言った感じで腰に下げている剣を抜刀し、俺はモンチャを縛っている蔓と茨を斬りつけ、解放する。
「モンチャは後ろへ退避。それから急いで買ったばかりの毒回復ポーションを飲んで状態異常を回復。それからモンスター退治は俺に任せろ!」
注意を促していると周りの草むらから先程と同じような蔓と茨が四方から襲ってきた!?
一方向だけじゃない事に驚きを露にするが、問題ない。
流れるような動作で繰り出される剣技で全ての攻撃を捌いて行く。
「確かこの植物は『ダンジョン記録』で見たな。名前は"ムレバツソウ"だっけか?
魔力の籠った根を他の植物の根に接続させることで周囲の植物を操るDランクモンスター。倒し方は本体を探して倒せば良かったはず、」
【轟雷電軌】
俺は魔法を使い、雷を纏った一振りで周囲から伸びて来る凶悪な蔓と茨を斬って行く。
モンチャを守りながら攻防一体の剣捌きで次々と倒して行く。
モンチャはわちゃわちゃして右往左往してる。
「はわわわわわわわ!う゛ぅ゛!?毒が・・・ポーションポーション・・・」
完全に戦力外通告を受けても皆納得するレベルで騒ぎ散らかす。
その間にも俺は、全方向から迫る植物を一人で捌く。しかし到底向こう側の方が手数が多い。
少しずつ傷が増え、ダメージが蓄積されていく。
「くっ、流石に一人は骨が折れるな。」
相手はDランクモンスターだが序盤で余計なダメージを負ってしまい、『ダンジョン内』でのモンスターの強さを肌に実感する。
そして切り傷が増えて行く。
そんな俺を「はわわわ」と慌てふためきながらもモンチャは横目で確認する。
「ルミナス・・・オイラも頑張る。」
自分を守る為に必死になって戦ってくれている俺を見たモンチャは冷静さを取り戻し、補助魔法でサポートする。
毒回復ポーションはもう飲んだようだ!
「ルミナス!補助魔法を掛けて上げるんだよ!【敏捷強化】+【防御力強化】」
「おっ、サンキュー助かったぜモンチャ。」
「はい、なんだよ!」
補助魔法の恩恵を受けた俺は破竹の勢いで蔓と茨を斬り伏せて行く。
そして、俺はずっと本体を探していた。
この攻撃を仕掛けて来てる本体を、周りの植物を操っているモンスターを、
そして発見した!
本体は草むらの中に隠れており、ラフレシアの様な真っ赤な色したデカい花びらを着けていた。
「これで終わりだ!【雷斬り】」
鋭い横一閃の電影が"ムレバツソウ"本体を襲う。
悲鳴を上げる事も無く魔石をドロップして消えて行く。
これにて討伐完了である。
「ふぅ、何とか討伐したか。初手からこんな調子じゃ先が思いやられるな。」
「ごめんなさい何だよルミナス。」
「気にすることはない。いずれはモンスターと戦う運命であった故に此処で経験を積めたことに感謝してるさモンチャ。そんなに陰鬱な雰囲気を出すな、俺は怒ってない。」
「ホントなのか?」
「あぁ、それよりモンチャ。毒回復ポーションは飲んだか?」
「それはバッチリなんだよ。」
「よし、じゃあトラブルはあったものの本格的に『ダンジョン攻略』に出発するぞモンチャ!」
「おおおおお!」
だがその時!
魔石を拾い、気分一転してこれから『ダンジョン攻略だ!』という時に、背後から突き刺さる様な魔力反応を感じ取った。
他の冒険者か?と思ったが違う。
地面が膨れ上がり、中から一体の『木人』が現れた!
「次は何なんだよ!」
「あいつはCランクモンスターの『樹木型の樹怪人』だ。Cランクモンスターと戦ったことは人生で一度もないが、ノープロブレム!ばっち来い!!」
「『バッチ来い!!』じゃないんだよ!『ダンジョン』に入ってから連戦の波が来てるんだよ。」
俺達二人は戦う姿勢を見せるが、予想以上にデカい図体を前に暫し硬直した。
樹木の魔物である『樹木型の樹怪人』が「グオオオオ!」と鳴く。
そしてモンチャに勢い迫った。
見た目からは想像できない程の素早い動きで身体を横に逸らせながらの蹴り。
俺の動体視力を上回った迅速な動きだ。
「くっ!?狙いはモンチャか、そうはさせんぞ!!」
しかし、俺は【敏捷強化】の効果もアリ、『樹木型の樹怪人』の強烈な蹴りがモンチャへと入る一秒前に間へと割って入ってはモンチャを抱き抱える。
そして『樹木型の樹怪人』の蹴りが俺の背中へとバコン!!!と当たり、上空へ吹っ飛ばされた!
「ぐっっっっっっっ!くはっ!」
「ルミナス!」
蹴られた影響により空中で吐血する俺。
そして焦り顔で心配するモンチャ。
俺達二人はその勢いのまま『ダンジョン』の奥深くへとシュートされ、最悪なスタートダッシュを迎えてしまった。
果たして無事に生き延びることが出来るのか?
後これは余談だが、世間では『ダンジョン』の中は常に計画通りに物事が進まない、というのが常識だ。
さっきの様な非常事態があるからだ。
モンスターに生態があるかどうかは未だ不明な課題だが、本能の赴くままに行動し、自身の敵を見つけたら攻撃する人形、という認識は疑う余地もない。
しかし太古より受け継がれる課題の一つ。
一体何故モンスターは我々を襲うのか、その課題は学者たちの頭を今も唸らせている。
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