第25話 モンチャの戦い
「み、みんな・・・倒れちゃったんだよ・・・モンスターは倒したけど重症なんだよ。」
俺達が『狂悦血爪』との激しい攻防戦を繰り広げている別サイド視点。
そこでもまた、一匹の『フリューゲル』が一人の人間を生かそうと戦いを繰り広げていた。
その戦いは時間との勝負であり、相当に魔力を消耗する厳しい戦いだ。
そして・・・
周りの戦闘音が止んだ瞬間何かに引っ張られるようにして周りを見渡すモンチャ。
すると『狂悦血爪』が血達磨になって倒れていた。
討伐することに成功したらしい。
だがその代償としてパーティメンバーの姿も相当な血達磨になっており、それを確認したモンチャは手に汗握り、心臓の鼓動音のリズムが加速する。
「ルミナス、アレイヤ、ブライアン、フォーリン、リン、ケビン、こんな所で死んじゃうのは違うんだよ。生きるんだよ!」
怒鳴り声の様な迫力ある声で仲間たちの反応を確認しようと呼びかける。
だがそれに応えてくれる者などいなかった。
代わりに応えるは風が靡く音。
「モンチャ・・・」
しかし、俺は違った。
ちゃんと意識を保ち、モンチャの所まで足を引きずりながらも歩み寄って行く。
「!?・・・ルミナス!生きてたんだね!」
「なんとかな。だけど見ての通り全身にダメージを貰っちまい背中に大ダメージ。全体的にギリギリ・・・限界だ。」
蓄積されたダメージ効果で既に肉体は限界を迎えていた俺。思っていたよりもうんと『狂悦血爪』が強かった。
幾ら俺でもこんなに大ダメージを貰うとは思っていなかった。
俺もまだまだと言ったところか・・・。
しかし倒すことには成功した。故に、張りつめていた緊張が一気に解れ、その場で伏す。
「悪ぃな。」バタリ
「ルミナス!?ルミナス嘘だよね?いつも一緒に頑張って来たんだよ!死なないでよルミナス!つい2週間前くらいに約束したんだよ!!」
モンチャは泣きながらもリンの傷を癒す。
視界が涙で阻害されてまともな景色が見えない。
だがそんな時、声がした。
聞き覚えのある声だ。
「ブライアン・・・ケビン。」
声の主はこの『狂悦血爪』戦で一番ダメージを貰っていないであろうケビンと防御力お化けのブライアンだ。
ブライアンに関して言えば全身ボロボロ過ぎていつ倒れてもおかしくない程に不安な姿。
モンチャは心配そうな顔つきで見つめるが、本人は案外?大丈夫そうだ。
「悪いな。だけど俺は皆よりもダメージは酷くない。血は止まらないし、意識がくらくらと揺れるが問題な。仲間の為だ。今からモンチャの所に倒れた仲間を一人ずつ運んで行く。だからお願いだモンチャ。
俺の仲間を助けてやってくれ、当然ルミナスもな。」
「う、うん!」
大盾を外し、全身にダメージを抱えながらも右肩を抑えては仲間の為に歩いてくるブライアン。死にそうな形相をしながらも気合と根性で進み続けているのだろうか?
そう思っている内に、全てのパーティメンバーを集め寄せ、モンチャの傍へ横一列に並べる。
そしてブライアンとケビンもその中に入り、モンチャの回復効果を受ける。
モンチャはスキルを使う。
その名は【天なる幸福の楽園】
スキル【天なる幸福の楽園】:全体回復魔法であり、自身の魔力を半分捧げることでスキル範囲内(自身が仲間と思う人に限る)のダメージを全回復させる。
※しかし状態異常を治すことは出来ない。
「行くんだよ。」
「あぁ、いつでも来い。」
モンチャがスキルを使うとエメラルドグリーンの光が強く、そして眩く光り輝き傷ついた者たちを癒していく。
粒子が天へと昇り、幸福なる楽園の恩恵を貰った。
フォーリンの切断された左腕の傷口も治った。と言っても左腕が筍のようにニョキニョキと生えてきたわけではないが、
「これである程度良くなったけど、まだまだなんだよ。」
次にモンチャは『魔法の鞄』からポーションを取り出し、裂傷状態の人には『毒回復ポーション』を飲ませて内側にある『狂悦血爪』の毒を解毒。
それにより状態異常は回復して出血死は免れ、一応一命は取り止める。
だがそれだけで終わりじゃない。
ここはモンスター犇めく密林の中、及び『ダンジョン内部』
何時いかなる時でも油断などできるはずもない。なので安全地帯を探して『数日~数週間』の休憩時間が必要だ。
その為には休める良い立地を探すことが必然であり、その場所に行く為にはモンスターを倒す力が必要である。
「さて、モンチャのお陰でパーティメンバーは皆無事だな。感謝するよモンチャ。」
「良いんだよ。それよりこの場所でいつまでも居るわけには行かないんだよ。」
「そうだな、移動しなきゃな。沢山暴れて沢山血が流れて沢山魔力を撒き散らしてしまった。いずれはこの辺りを徘徊しているモンスターが襲って来るだろう。」
「戦うの?」
「いや移動する。今の俺達の実力では即死んでしまうビジョンしか見えない。まともな連携も取れずに全滅だ。」
「オイラもほとんど魔力残ってないし、半分以下にまで減った感覚なんだよ。」
「結構削れたな。」
「まぁね。なんだよ。」
「とにかく移動しよう。」
「「おう、」」
一旦の目的を整えたモンチャ達三人は安全地帯を探す為に仲間たちを担ぐ。
ブライアンは二人。
ケビンも二人。
モンチャは魔力回復に専念。
目的地は決まっていないが一応は『宿場町・イリアル』に向かいながら見つけられればいいなと思っている程度である。
というか、見つけなきゃヤバイ。
今の状態で大群のモンスターにでも遭遇したら一溜りもない。
だからモンチャ達は迅速に行動へと移行する。




