第23話 ハラハラ
密林の中で大爆発が起こる!
木々を燃やし、風が吹く影響で炎が広がる。
『狂悦血爪』に直撃したのだ!
「どうだ!」
「やったかな?」
爆炎が支配する視線の先には赤く燃え盛る炎の概念。
アレイヤとケビンは勝利を確信してその先を見通すように傍観する。
だが・・・
「グアアアアアアアアアア!」
「「!?」」
凶器に晒され、血と愉悦に飢えた獣は止められなかった。
片腕一本を犠牲に魔法を防ぎ、それでも尚奴の笑みは収まる事を知らない狂気の獣。
爆炎が支配する炎熱帯の中から一匹の獣が二人に突っ込んで来る。
「ならもう一発ぶち込んでやる。見たところ攻撃自体は効いたようだな。ならば勝機はある!」
「おらああああ!」
突っ込んで来る『狂悦血爪』に対して同じ魔法を何発も何発も放って距離を縮めさせない為に、そして本気で討伐する為に攻撃の手を緩めない。
「「倒れろおおおおおおおお!!」」
暫く続く魔法の攻勢は『狂悦血爪』に向かう。
しかし、油断を捨てて純粋に戦いを楽しんでいるかのような表情をする獣は爪を肥大化させて空中へ跳躍した。
「わざわざ自分が不利になることを、やはり所詮は獣だね!」
「狙い撃つよ!ここが勝負の分かれ目!!」
思わぬ勝敗のターニングポイントに本気を出し、間髪入れずに攻撃魔法をぶち込む。
しかし『狂悦血爪』は身を翻し、すぐさま攻撃モーションへとチェンジ。
奴の視線の先にはアレイヤがいる。標的だ。
「!?」
ブライアンはその攻防戦を見ながら必死に駆け寄ろうとするが、俊敏性が低いために間に合わない。
なので嫌な予感をビンビンに感じながら攻撃対象にされたアレイヤに魔法でドーム状の『岩壁』を形成し、『狂悦血爪』の爪撃を防ごうとする。
だが『強鋭』になった肥大化爪は簡単にその守りごとアレイヤを引き裂いた!?
「え?・・・・・ぐはっっっ!」
「アレイヤあああああ!!」
『狂悦血爪』はそこから流れるような動作で隣に位置してるケビンに向かって爪を振るう。
反応は出来るが動作が追い付かないケビンは最後に『狂悦血爪』を睨み付け乍ら歯を食いしばる。
しかしそんなケビンを守るのがこの男!
立ち塞がる鋼鉄の盾、ブライアンである。
「グアアアアアアアアアアアアアアア!」
「来い!!全て受けきってやる!!」
攻撃力が上がっているので先程までの生ぬるい攻撃とはわけが違う。
魔法ごと引き裂き、人体なんぞ軽く烈段する。
しかしアレイヤの様子を見るに、切れはしたがまだ息がある。
守りのお陰でタイミングと距離感がずれ、切断事態は免れたのだろう。
しかし、時は一刻を争う。
「ケビン!最後はお前が仕留めてくれ!!」
「あ、アレイヤ・・・」
「ケビン!!!」
「!?」
「まだ負けてない!まだ死んでない!生きてる!!だからお前は最後まで足掻いて勝利を掴め!!俺達はまだこの先も生き続けるぞ!!」
「そ、そうでした。僕はまだやれます!!」
「そうだ!それでいい。」
気を落とした覇気の無いケビンに渇を入れ、自分は攻撃を防ぐことに集中する。
先程の爪撃とは違い、明らかに攻撃力が跳ね上がっている。
ブライアンは大盾を手前に徐々に後退していく。
あまりにも激しい爪の狂い裂きに立ち往生。そして大盾本体にも浅くだが、傷が入って行く。
「くっ!」
しかし、守っているだけではない。
こちらは二体一で数として有利を取っている。
ブライアンと『狂悦血爪』がぶつかっている今この瞬間、その後ろで静かに弓矢を構えている一人の冒険者がいた。
ケビンだ。
ブライアンが『狂悦血爪』の足を止めてくれているお陰で狙いは正確に、そしてより鋭く、より速く、しかし静かに獲物を狙う狩人。
焦点を合わせ、一気に仕留めるつもりだ。
そして、そんなケビンを後押しをするかのようにして横からバフが掛かる。
【二回攻撃】
モンチャからの補助魔法だ。
これにより、攻撃を一発放つ度に追加攻撃で二発目が自動的に出る追加効果。
ケビンは軽くニヤリと口元釣り上げ、スキルを使う。
スキル【風読み】
このスキルは大気の流れを完璧に把握する力。
一見大したことの無いスキルに感じるかもしれないが、使い道は沢山ある。だがそんな中、逆に大気の流れを利用しようとする気概と意外性を持つ若きエルフが獲得したスキルでもある。
そして弓の扱いともなればエルフに適う種族はいない。
「何としてもお前は此処で倒す。そしてケビンの為だ。」
ブライアンはそう言うと、盾を捨てて『狂悦血爪』の両腕を掴んでホールド。
抱きしめる様にして拘束をし、身動きが出来ずに爪撃が繰り出せない形になった。
「グアアア!?」
「お前の事だからな、なんやかんや躱すと俺は思っている。お前の俊敏さには苦労した。だからこれは念押しの、自損覚悟の固め技。お前は逃がさない。此処で確実に息の根を止め、俺達は明日を生きる。」
「グアアアアアアアアア!!」
『狂悦血爪』は叫び、拘束を解こうと腕に力を入れて力づくでも抜け出すつもりだ。
だが事態はもう手遅れ。
「ケビン!!俺ごと撃て!!!」
「ぶ、ブライアンさん。そんな仲間を討つことなんて・・・」
「此処でやらねば誰がやる。一体でも多く数を減らすんだ!こいつを倒せるのはお前しかいない。覚悟を決めろ!!!」
「・・・・わかりました。」
数秒の沈黙の後、ケビンは決心する。
そして撃った。
【激熾し・廻風猛威】
荒れ狂う風の波が螺旋を描き、全てを飲み込む津波の如く炎滾る森の中を翔け抜ける。
そして、白き風が全を呑み、『狂悦血爪』はブライアンと共に流される!
【二回攻撃】の効果も追加すれば、さらにもう一発の【激熾し・廻風猛威】が二人を襲う。
そして風が去った後に残ったものは抉れた地面、薙ぎ倒された数多の木々と消えた炎、そして倒れている二人の影だ。
その影をよく見ると『狂悦血爪』は全身から血を流し、真っ黒になってボロボロのまま死んでいた。
しかしそんな『狂悦血爪』でさえ死んでしまう威力の魔法を放ったのだ。
当然ブライアンはもっと悲惨な事態になっている事であろう。
その姿を目にしたくないケビンは視界を逸らそうとするが確認しないわけにもいかず、きっと死んでいるだろうブライアンの所へと駆け寄る。
すると・・・
「いてててててて。」
「ブライアンさん!?」
「おう、何とか生きてる・・・はぁはぁ、重傷だがな・・・・。」
「そ、そうですか。よかった・・・です。」バタリ
「魔力切れで倒れたのか・・・・・・まぁなんにせよ、こっちは勝利したぞ。フォーリン。」
『守護者』の持つ類まれなるその化物じみた『耐久力』と『防御力』がブライアンを奇跡的に救ったのだ。
これにて一体目の『狂悦血爪』、討伐完了である。




