第22話 奮闘
辿々しい歩行で一歩ずつ仲間との距離を縮めて行く。
背中からは大量の血が、生々しい熱を感じる。
だ、大丈夫だよな・・・。
死んでないよな。
こんな所で死ぬなんて俺は許さないぞお前ら・・・。
歩くのも辛いであろうその傷でも尚、仲間の命と明日の為に立ち上がる。
一歩一歩の足取りが重く、痛みと疲労が蓄積していく。
だが俺は歩く。進む。
守りたい者も守れないで何が『ダンジョン攻略者』だ。
仲間の屍を踏み越えてでも成るつもりは俺にはない。
『攻略者』に俺が成る時は傍に皆がいる時だ・・・・だからこんな所で死んでくれるなよ。
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約一時間前の出来事・・・
「ぐっぅぅぅぅぅ」
リンは『狂悦血爪』の攻撃をまともに受け、血をダラダラと垂れ流している。
このまま行けば出血量が更に増えて行き、体温の低下や血液の運搬が不可能になり心肺停止に陥ってしまう。
「裂傷状態とは中々面倒くさい事をしてくれるんだよ。」
「直せそうかモンチャ!」
「やってやるんだよ!」
「よく言った!ならば頼む!!お前だけが頼りだ。」
「うん!」
戦闘中のブライアンから余裕のない心配声がモンチャの耳に届く。
モンチャはこのパーティの回復係であり、唯一の生命線でもある。なので俺を抜いたフォーリン達はモンチャと負傷したリンを全力で守る為に応戦している。
勿論こんな所で死ぬわけにもこいつ等の餌になる事など微塵も思っていない。
なんとしても耐え抜き、倒す。そしてみんな揃って生き抜く。
俺たち冒険者パーティが今思っている事は満場一致で生還の二文字だけだ。
しかし、ブライアンの守りを抜けた一匹の『狂悦血爪』が意識を手放したリンへと無慈悲に襲い掛かる。
ニッコリと笑い、止めの一撃を入れようとする。
「しまった!」
そして今までの人生の中で間違いなく心の余裕と焦りを含んだ表情をしたブライアンは強硬手段に出た。
『守護者』であるブライアンは俊敏さに欠ける。
だからこその強硬手段だ。
その手段とは・・・
「アレイヤ!ケビン!俺をお前らの魔法でブッ飛ばしてくれ!!背中にだ!」
「ちょ、正気なのブライアン!?」
「此処でやらなきゃ俺はこの世で一番後悔する。今しかあの二人を救える手段はない!お願いだ。」
「アレイヤ・・・やるよ!仲間を失うより四肢の一つ捥げた方がまだマシだ!」
「わかった!」
一瞬の気も抜けない極限状態になった中で覚悟を決めた三人は、早速ブライアンの懇願通りに魔法を使い、瞬間的に加速しては『狂悦血爪』の距離にまで一気に追いついた!!
「うおおおおおおおおおおおおおお!」
そしてブライアンは更に【鋼の根性精神】と言われるスキルを発動して、身と心を強化する。
何事にも恐れず何時いかなる時でも絶対に守り抜く鋼の如き精神を持つブライアンだからこそ得られたスキルである。
「うおおおおおおおおお!」
ブライアンは両肩側面の盾を上手く使い、『狂悦血爪』の攻撃を防ぐと同時に【シールドバッシュ】で雀の涙程度の反撃をする。
そしてブライアンが『狂悦血爪』の攻撃を防いでいる間に後方支援組は魔法、弓などで援護射撃をする。
1VS3の構図である。
『狂悦血爪』の攻撃を防いでは攻撃し、防いでは攻撃しての反復行動で泥仕合の様な歯痒い戦況は続く。
それに苛立ちを覚えた『狂悦血爪』はまず、後方支援組を片付けようと睨みを効かせる。
そして動く!
「させはせん!!」
しかしブライアンがそれを許さない。
再び己の守りを固めて攻撃を防ぐ態勢に出る。
「グアッ」ニヤリ
「!?」
だが『狂悦血爪』はブライアンの思っていた通りの行動とは違い、大盾を自身の踏み台として使い、足の裏をしっかりと盾の側面へと着地させ、勢いよく空中へと跳んだ!
「グアアアアアアアアアアアア!」
「しまった!?防御を逆手に取られた!こんな魔物が存在していいのか!?」
何故か自我がある様にして知恵を回し、こちら側を的確な動きとタイミングで殺しにかかる『狂悦血爪』
「援護射撃しか出来ないと思ったら大間違いだよ!」
「僕たちの力を見縊っているようだね。やるよアレイヤ!!」
「うん!」
「燃えなさい!【火炎泡沫】!」
「穿つは一矢の白風!【疾風ノ俊攻】!!」
二人の魔法は猛牛の様に迫る『狂悦血爪』へと向かう。
迸る深紅の炎熱は散布する様にして辺りを焼き尽くして進み、一矢の白い弓矢は風圧をものともせずに穿ちながら大気を翔ける。
対する『狂悦血爪』は迷わず突っ込む!
果たして結果は・・・
「「いっけえええええええええええ!!」」
「グラアアアアアアアアアアアア!!」




