第20話 血染めの獣
モンチャは嫌な気配を肌で感じる。
皆も一瞬で戦慄するその姿を見て感じ取り、体中にこびり付く様にして纏っている赤い鮮血を見て悟った。
「コイツはヤバい」と、
「何だコイツは・・・」
「獣型の魔物か・・・なんと悍ましい姿。」
前方に立ち塞がる様にして佇んでいる獣には目が六つあり、赤黒い体毛に飢えた牙。
手足の爪が剃刀のように鋭利な刃。
まさに魔獣と呼ぶにふさわしい姿をしていた。
コイツは確か・・・「ダンジョン記録」で見たぞ。
確かコイツはA級モンスターだ。
名前は・・・・そう!『狂悦血爪』
しかしこいつは"4エリア"に生息しているはず、
一体どうしてこんな"1エリア"なんかに居るんだ?というか現状非常にマズイ。
何が不味いかって・・・・・まぁでもごちゃごちゃ考えても始まらないし、とりあえず戦って倒すしかないな!
頭で考えるのが面倒臭くなり体を動かす。
剣の柄を握りしめて低い姿勢を取る。
俺以外のパーティメンバーは今『狂悦血爪』の存在が強すぎて目を奪われ若干硬直状態。
現状戦えるのは俺一人のみ、そして『狂悦血爪』はこの場に一体。
モンチャの回復魔法だってある。
大丈夫、勝てる!
と思っていたのだが、直ぐにその考えは泡の様に儚く消える事になる。
「みんな・・・」
「ど、どうしたアレイヤ。」
「右にもいる・・・・」
「!?」
「フォーリン、左にもいるぞ。」
どうやら『狂悦血爪』は一体だけじゃなく、合計三体いたらしい。
これはいよいよ不味い。
三体の『狂悦血爪』に囲まれたのだ。
「くっ、囲まれたぞ。どうするの皆!」
「と、とりあえずいつも通りの陣形を組もう。僕を含める後衛兼サポーターの人達は援護と支援が出来るように準備と警戒度マックスで維持。そしてブライアンさんは僕たちを守ってください。近接主体である二人は攻撃。」
「はっはー!確かにそれが一番いいな。いつも通りにやれば問題ない。問題なく勝てる!!」
「勝てるの?本当に大丈夫なんだよ?」
「あ、あああああ、当たり前だよモンチャん、わ、私達なら勝てるよ。」
「目を泳がせながら震え声で言われても説得力がないんだよ。」
「グルルルル」ニヤッ
口元を緩めてゆったりと笑う。
狂気に満ち満ちている不気味な笑みだ。
そして正面の『狂悦血爪』が動き出す!
俺達は表情を強張らせ、威嚇するかのような目付きと体重を下半身に乗せた。
三体いる事は既に確認済み。
どの方向から来ても反撃できる準備はバッチリ。
俺はその事をコンマ数秒の間に整理し、まずは正面から来た『狂悦血爪』の引き裂く攻撃を剣で受け止め、相手の動きを僅かながらに止める。
そして流れるようなコンビネーション技で後ろから弓による援護射撃とフォーリンの剣が襲う。
しかし、並外れた身体能力にものを言わせた跳躍力で見事に回避される。
その隙に後ろの『狂悦血爪』二匹も一斉に飛び掛かる。
「「ガルルルルルルルルルルルルル!」」
一体はブライアンの方へ、もう一体はリンの召喚体である『ゴーレム』が防御する。
しかし、『ゴーレム』の方だけはたったの一振りで引き裂かれ、その勢いを殺さずして召喚主であるリンに差し迫った。
そして攻撃を貰う。
「うっ!!!」
リンが戦闘不能に陥った。
赤い色をした液体が流れ、流血が止まらない。
胸からお腹辺りまで『狂悦血爪』の爪痕がしっかりと残っており、痛々しい傷を残してしまう。
「リン!」
「【ヒーリング】を掛けても血が止まらないんだよ!」
裂傷状態だ。
原因は『狂悦血爪』による爪とその爪に内包されている毒である。
モンチャは全身に汗をかきながら治療に専念する。
そして、その光景を尻目に確認したフォーリンと他のパーティメンバーは確かな焦りを感じる。
噴火の如く、汗が噴き出して止まらない。
「ルミナス!前の敵は任せるぞ!!」
「あぁ!」
俺は素早く了承し、フォーリンは迅速に足の軸を後ろへと反転させて飛ぶ。
そして後ろにいる二体の内の一体と正面衝突して『狂悦血爪』と交差する。後衛職とサポーターたちは魔力を高めては魔法を放つ。
ブライアンは気合で『狂悦血爪』一体を押し留めている。
俺は戦局が良くない方へと転がって行くのを尻目で感じ取り、目の前の『狂悦血爪』から片付けようとスキルを使う。
後ろにいる二体は仲間を信じて任せるしか手はない。
「【金魔雷公纏う収束殿】発動!!」
黄金色に光る雷を剣に纏わせ、俺は目の前に立ち塞がる様にして愉悦の笑みを浮かべているいけ好かない獣一匹を狩る為に本気を出す。
全てはパーティを守る為、そして自身の目標と無事に目的地へと帰る為に!!
「行くぞ!!!」
「ガルルルルルルルルルル!」




