第19話 前哨戦
『宿場町・イリアル』を目指して『エリオン』から旅立ち三日後・・・。
小さな山を越え、進行方向に出て来るモンスター共を討伐し、『ドロップアイテム』を回収しては野宿をして順調に冒険を進めている俺たち『賑やか隊』は今、ある『ダンジョン内部』の一か所にて血痕を見つけた。
真っ赤で染まり、まるで何かに引きづられでもしたかのような血の痕である。
それを見た途端俺はパーティメンバー全員に報告する。
そしてその報告を受け取ったフォーリン達は目を細め、軽く頷き指示を出す。
「はっはー!警戒態勢を取れ、そしてケビンは索敵魔法を展開。みなの者は武器を構えて大きな音は出すな。気取られるな。後手に回る戦い以上に厄介な事は無い。」
気持ちを一転し、冷静な雰囲気になる。
そんな中、ケビンがとある魔力を感知した。その数16匹!!
「こちらに向かって来てるよフォーリン。どうする?」
「はっはー!もちろん戦闘準備だ!!」
各々武器を構える。
剣、大盾、杖、弓、魔導書と様々だ。
不気味な圧を掛けられながら定位置に移動し、陣形を取りながら警戒を更に強める。
だが俺は自身の成長を確かに実感しながら「ばっち来い!」てな感じで、心躍ってモンスターが来るのを待つ。
モンチャは魔導書を胸に力強く抱きしめてサポート兼回復できるようガチガチに構えている。
そして、ガサガサ!と前方の茂みから音が鳴った時を境に時は来た!!
目の前の草むらから現れたのは下級モンスターである。
ゴブリン、幻妖、木人、植物大蛇、オークと沢山。
どうやら感知したモンスターはこいつ等だったらしい。
「よし行くぞモンチャ!」
「分かったんだよ!」
「はっはー!俺達も行くぞ!新入りに負けるなよ!」
「「「「おう!」」」」
それぞれが戦う覚悟を示し、モンスターに立つ向かって行く。
モンチャは予め全ての『強化魔法』を掛け、全員ステータスに補助効果が入っている状態だ。
「はあああああああ!【雷轟電軌】」
俺は轟く雷鳴の斬撃をゴブリンや木人に入れて斬り進んで行く。
隣では同じく並走しているフォーリンの姿があり、燃える灼熱の刃を向かってくるモンスター共に間髪入れずに入れて行き、俺に負けないくらいの勢いで数を減らしていく。
「やるなフォーリン!」
「はっはー!当たり前よ!伊達にパーティのリーダーじゃないやい!」
そしてそんな俺達の姿を後ろで見守る後方支援者とブライアンはまじまじと見つめ、「こりゃあいつらが全員倒すな、」と感想を心の中で零し、一歩も動かず待っていた。
しかし警戒は怠らない。
何時いかなる時でも緊急トラブルは付きもの。
だから気は抜かない。
そしてその結果、前衛を奇跡的に抜け出して来た"幻妖"と言われる幻惑使いの魔物の存在をいち早く察知して『守護者』のブライアンが盾となり、『弓使い』のケビンと『魔法使い』のアレイヤが後ろから攻撃することが出来た。
一瞬である。
両方とも火力重視の魔法を放ち、一撃で仕留めた。
「ナイスだ二人とも。」
「「当然。」」
一方で『召喚士』のリンは、"ゴーレム"を三体召喚して自律型の『守護者』を作った。
それにより守りは更に強化。
完璧な鉄壁の要塞の完成である。
「よし、こっちも大丈夫だよ。」
「ふむ、」
その光景を尻目で確認した俺は満足そうに頷き、余裕を残したまま全てのモンスターを討伐した。
ここまで、僅か3分の事である。
「はっはー!これで全部かな。」
「お疲れフォーリン。」
「あぁ、ルミナスもよくやってくれた。やっぱり俺の作ったパーティは最強だったらしいな。」
「はいはい・・・。まぁでもこれで一つ分かった事があるなフォーリン。」
「ん?」
「レベルじゃなくてやはり経験がものを言う。つまり、よりモンスターを倒したのはこの俺で!このパーティで一番活躍したのも俺だって事さ、」
「ふん!何をぬかすかと思えば、バカ言え。総討伐数は俺の方が多い。お前は二番目だ。」
「いやいや、」
「いやいやいやいや、」
戦いに勝利を収めた俺達パーティは傷一つ付かない余裕の勝利で幕を閉める。完勝だ。
そして、『ステータス更新』をしたことにより成長具合を確かめつつ自身の活躍ぶりを自慢する。
「それにしても、あの血痕の正体って本当にあのモンスター達だったんですかね~?」
「はっはー!当たり前だろ?あんなにモンスターが出て来たんだ。冒険者の一人や二人くらい死ぬに決まっている。囲まれたか、それともレベルに見合っていない実力の者が死んでしまったのどちらかだ。」
「本当にそうだと良いのですが・・・。」
少しだけ不可解な事に納得のいかないリンは頭の片隅で疑問と謎を抱える。
フォーリンやその他のメンバーは特に気にした様子はない。
そうして皆が各々の話をして多少盛り上がっている最中でも俺だけは警戒を怠っていない。
何故なら、冒険業をしているのだから常に警戒網を引いておくに越したことは無いからだ。
『狡猾三頭の蜘蛛』戦で学び、それからの冒険業でも少しづつ形にしていった結果である。
なので俺は気付けた。
"邪悪な魔力"がこちら側へと向かっていることに、
俺は急いで皆に報告する!!
「皆まだだ!まだ終わってない!」
「え?何を仰っているのかですか?モンスターは全て討伐したじゃない。」
リンの言葉に追随するようにして一同が揃って頷く。とその時!
アレイヤの真上から赤黒い色した獣が鋭い爪を滾らせて降って来た。
そして攻撃した!!
だが俺がギリギリのタイミングでアレイヤを抱きかかえて飛び込むように危険を回避!!
背中スレスレの神回避だ。
「あ、ありがとう・・・」
「礼はいいから早く立って、フォーリン指示を!」
「あ、あぁ!!」
そこに佇むは一匹の魔獣。
毛並みは刺々しく眼光は鋭い。
目の前の魔獣が赤いのは血・・・なのだろうか?
元々が黒い体毛をしているモンスターだとしたらあれは返り血・・・。
強靭な牙と爪には深紅の液体がぽたぽたと流れ落ち、地面を真っ赤に染める。
つまりは・・・
「あの血痕の正体は・・・コイツだ。」
俺は一目見て理解した。
コイツが、この魔獣こそが血の正体。
禍々しく荒々しい邪悪な魔力の正体だ。
俺達は額に汗をかきながらゆっくりと構えを取る。




