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アルカナレジェンド・億年ダンジョン~神なるダンジョン攻略せし者、全に挑む~  作者: 十五夜の月
第1の神なるダンジョン「癒され、惑わされ、心を強く真っ直ぐに、」
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第18話 狂気の獣

 パーティ名『賑やか隊』は北東へと進路を決めて出発した。

 装備も食料も気持ちの整理もコンディションもばっちりだ。


 目的地は『宿場町・イリアル』


 前衛には近接主体の俺とフォーリン、そしてブライアン。

 後衛はケビンとリンとアレイヤとモンチャ。


 この並びにはちゃんと意味があり、すぐさま戦闘態勢及び安定したバトルをする為に初めの内から陣形を組んでいる形だ。


「行くぞ!『正義(ジャスティス)』!!」


「『賑やか隊』なんだよ。」


「諦めろフォーリン。」


「くっ、」


 俺達は目的地へと歩き出した。







 ー-----------------







 北東のとある区画。

 そこでは緑色の緑葉が深紅に染まり、絶望の絶叫が波及していた。


「ぎゃあああああああ!」


「助けっ、」ブシャ!


「なん・・・・で、こんな所にこいつ等が・・・いるんだよ・・・」バタリ


「くそくそくそくそくそくそくそくそ!!何なんだこいつ等!なんで3体も、」ブシャ!


「ここは"(ファースト)エリア"だぞ。何でこんなっ・・・上級モンスターの中でも中位に入る強さのこいつ等が何故!?」


 とある3組の冒険者パーティが臨時で協力して()()上級モンスターに立ち向かう。

 しかし魔法は当たらない。

 弓も当たらない。

 スキルを使っても当たる気配が一向に見えない。

 近接攻撃をしたとしても相手の素早い動きについて行けずリズムを崩し、隙を作って瞬く間に瞬殺されていく。


 そこで『守護者(ガーディアン)』の男が前へと出る。

 しかし出た途端に大盾ごと引き裂かれ死んでしまう。


 仲間は叫ぶ。

 絶叫する。

 絶望する。

 助けを求める。


 それでも諦めずに何人かが連携攻撃しては安定した布陣を引き攻撃していく。だが、10人以上いる即席の協力パーティ全員がモンスターの餌食になって行く。


「化物がっ!!」


 後衛職の『魔法使い(ウィザード)』が火力重視の『水塵過翁』を連続で放ち、扇の形をした水の刃が木を切断しては正面へと飛んでいく。

 しかしパーティ全員が恐れるモンスターは周りに沢山生えている樹木を足場に三次元的移動法を用いて立体的に動く。


 現時点でパーティに居るのは『魔法使い(ウィザード)』2人に『弓使い(アーチャー)』1人

回復術士(ヒーラー)』1人に『銃撃士(ガンナー)』2人


 見事に後衛職ばかりだ。

 即ち、当然相手の素早さに目が追い付くことも無く翻弄され、知らず知らずの内に仲間が一人、また一人と斬殺されていく。


 残されたのはあの3人。

 その内一人が提案する。


「ダメだ、勝てない。このままでは何も成せずに全滅する。おいそこの『回復術士(ヒーラー)』」


「はい、」


「お前は此処から離脱して全力で『エリオン』側へと走れ、俺達の事は気にするな。」


「え?でも、」


「いいから行ってくれ!ここで全滅したら仲間たちの命が全部無駄になる。伝えるんだ・・・この緊急事態を、残すんだ・・・我々が逆行にも屈せず戦った勇気ある闘争を、」


回復術士(ヒーラー)』の子は何も言わずに只コクリ、と一回頷き走り去っていった。

 後ろは見ず、只々ガムシャラに走ってこの事を伝える。


 強力なモンスターが出たと、

 恐ろしい上級モンスターが出たと、


 Aランクモンスター、『狂悦血爪(デスピニス)』が()()()()したと!


回復術士(ヒーラー)』の女性が走るその後ろでは、勇敢に立ち向かう二人の後方職の冒険者が戦っている。

 その戦闘音を背景に、息を切らして走り続ける。

 しかし数秒もすれば痛みの感情が含まれている絶叫が聞こえて来る。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」


「やめろお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!」


 しかし『回復術士(ヒーラー)』は振り返らない。

 急いでこの事実を伝える為に、


「ガルルルルルルルル!」ニヤリ


 現場では目と鼻の距離にて『狂悦血爪(デスピニス)』が仲間の返り血を浴び、冒険者の頭を持って笑みを浮かべている狂獣の姿が佇んでいた。


「血に飢えた化物め!刺し違えてでもお前をっ!!!」シュバッ!


 叫びと同時に男は体中を引き裂かれる。

 男は倒れる。

 最後の遺言を小さく呟く様に言いながら、


「気を・・・付けろ・・・奴は、危険だ・・・逃げろ・・・ひたすらに逃げろ。適う相手じゃ・・・ない。」ぶつぶつ


 そうして腹から致死量の鮮血を出して、死んだ。


 一方『回復術士(ヒーラー)』職である女性は、森の中をまだ駆け抜けていた。


「早く、伝えなきゃ、」はぁはぁはぁはぁ


 一目散に逃げ、息を切らしても筋肉が悲鳴を上げてもまだ走る。

 全ては()()を紡ぐために。


 カサッ!


「!?」


 すると、周りの木々の緑葉が騒がしくカサカサ音を出し始めた。

 この辺りに生息しているモンスターか?と思ったが違う。


「ガルルルルルルル!」


「なんっ、で・・・・こんな所に、」シュパッ!


回復術士(ヒーラー)』の女性は突然腹を引き裂かれた。戸惑う女性。

 まともに一文を発する事も許されずに血を流して瞼を重くする。

 だが女性は見た。

 朧げな視界でその現実を、

 自分の腹を引き裂いたその正体を、


 同胞の返り血で身体を銀朱に染め、剥き出しの強靭な牙と爪、鋭い眼光にニヤリと三日月に浮かべた口元、全体的に見て悪魔・・・。


狂悦血爪(デスピニス)』だ。


 元々黒い体毛を持っているからだろうか?

 その獣は血で赤黒い体色になっていた。


狂悦血爪(デスピニス)』は愉悦する。笑っている。

回復術士(ヒーラー)』の子は数秒もすれば息を引き取った。

狂悦血爪(デスピニス)』はそれを確認して、次の愉悦と血を求めてこの森のどこかで彷徨い続ける。

 仲間と共に・・・


 狂気の悪魔が動き出した。




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