第16話 食堂の中で、
暖色系の明かりに照らされながら食堂の中は陽気な雰囲気に包まれている。皿の甲高い音が鳴り、冒険者の他愛の無い会話が聞こえて来る。
そんな中、俺達パーティは目的地が北東の方角にある『宿場町・イリアル』と決まった所で一旦飲み直すことにした。
気分を一転してアルコールの匂いが食堂内を包み込む。
テーブル上には色んな料理がバラバラに配置されてより取り見取りだ。
俺達は、そんなご馳走が並んでいるテーブルを囲んで盛り上がる。
しかし数時間にも昇る間ギャーギャーと叫ぶように騒いでいたら不思議と怪訝な目で周囲から視線を配られる。
他方の冒険者に迷惑を掛けているのだ。周りより一際五月蠅く、言葉のキャッチボールが不可能な程に木霊させている。
なので周りからは苦情の嵐に見舞われ、注意の言葉が虚空を飛び交う。
「うわわわわわ!料理は投げちゃ駄目なんだよ!」
「うるせぇ!五月蠅いんだよお前ら!!」
飛び交う料理。
飛び交う言葉。
飛び交う視線。
時間が刻々と進めば進むほど事態は深刻化していく。
更に他の冒険者が握り拳を作り、酔いに振り回されながら緩急をつけて殴り合う。
もう敵味方の区別がつかずして大乱闘に発展。
歯止めが効かない状態に困惑する店員と店長。
流石にヤバいと思った俺達パーティは、終止符を打つと同時に謝罪とその代わりとして「この場の代金は俺が持つ!」と客のご機嫌を取る様にしてフォーリンが啖呵切って言ってくれた。
その事により場は収まる。
フォーリンに感謝だな。
そして更に数十分後には周りのムードは完全に深夜テンションに突入し、俺たちも含め改めて飲み直すことに、
まぁ俺は未成年だから飲酒は禁止だけど、
更に1時間後・・・
場も収まり、再び酒と料理を胃に入れていく中話に没頭していく。
日常会話を挟みつつ、『ダンジョン関連』の話題も織り交ぜて話し合う。そんな中、アレイヤが何となくの疑問を発言する。
切っ掛けは"1エリア"の『ボスモンスター』という単語が自然と会話の中に出てきた時だ、
「そういえば、この『ダンジョンのボスモンスター』ってどんな姿をしているんでしょうね。」
その疑問にブライアンが答える。
「噂によれば骸骨の顔した植物の化物だとか、『幻惑』や『癒し』を与えてくれるモンスターだとか、そんな曖昧な事しか俺は知らないな。」
「へぇ~、『癒し』を与えてくれるなんて案外優しい『ボスモンスター』かもね。」
「拍子抜けしちゃう情報なんだよ。」
「そうだねモンチャん!!」ギュッ!
「うぎゃあああああああああああ!」←モフられる(現時点で16回目)
「骸骨のボスモンスターね・・・・・・・」
俺は『ボスモンスター』という単語を聞いて一つ思い出した事がある。
それはあの時、数日前の夜に見た"ヤマタノオロチ"のような超大型モンスターだ。
何しろあの生物は普通に考えて何処にでもいるようなモンスターではない事は明白だからだ。
それこそ逆に居たら困る。
明らかに異質な存在だ。
なので一つ聞いてみることにした。
「あの~、すごい変な質問するけど聞いてもらってもいいかな?」
「ん?何ルミナス。」
「蛇の頭が沢山付いていてうねうね蠢ている超大型モンスターって知ってるか?龍のような鱗が首と顔に付着していて、目も付いていて、足が蟹のようにカサカサ動き全体的に色んな植物が生えている変なモンスターなんだけど。」
俺が言葉を終えた瞬間、ある一卓のテーブル範囲だけがシーンと静寂に包まれる。
え?俺何か変なこと言ったかな・・・
純粋に情報をぶつけただけだけど、
「なるほどね、ルミナスも見たんだ。SSランクの徘徊型モンスターを、」
「SSランクの徘徊型モンスター?」
「なんかヤバそうなんだよルミナス。」
「そう、この『ダンジョン』で冒険業をしている皆が知っている周知の存在。
SSランクの徘徊型モンスター、その名は『"喰幻蛇浪のネフェルヴァイス"』
別名、『混呑の神蛇』と言われているモンスターだ。
全てを食らい、近寄る生物には恐ろしい幻惑を掛けて放浪する超危険個体!と言っても奴は夜の内にしか姿を現さないがな、
だが強さは折り紙付きだ。実際に戦いでもしたら即お陀仏コース一直線だろうから挑む奴は中々いないな。・・・今はね、」
「今?」
「昔は居たのさ、恐れ知らずの大馬鹿者どもが、」
昔?昔って言うと何年・・・いや、『ダンジョン』が現れたのは大まかに数億年前と言われている。
だから、既に数億年前挑んだ奴がいたんだろうか?
考えれば考える程謎や考察が増えて行くが、まぁそこは重要なとこじゃないよな。
俺が考えている間にも現在進行形で話は進んで行く。
「今ではもう逃げの一手さ、」
「『ボスモンスター』とどっちが強いの?」
「それは分からないわよ。戦う事は多分無いし、」
俺達が一つの突拍子もない話題に盛り上がっているとブライアンがパチ、パチと手を叩いて注目を集める。
一体何事だろうか?
折角良い感じに話に盛り上がってきたところだというのに、
「さぁお前たち、別に明日出発するわけではないが溜まった疲労は取らないとな。今回は丁度良く会話の区切りがついた事だしこの辺りでお開きにしよう。各自部屋に戻って就寝だ。」
前々から思っていたが、ブライアンって別にパーティのリーダーじゃないのにフォーリンよりしっかりしてるしリーダーシップめちゃ発揮しまくってるよな。
何か今まで普通に流してたけどやっぱり無視できないよな。
ホントはこのパーティのリーダーはフォーリンじゃなくブライアンだったりして、
ブライアンの発言に俺も含め、パーティは気の乗らない顔をした。
まだまだ騒ぎ足りず飲み足りない。そんな感じだ。
しかしブライアンが一回見下すようにして睨み付けると巨躯と合わせて凄い怖い。委縮する。
なので案の定俺達は逆らえず、大人しく各部屋へ戻って疲れを癒すことになった。
そして一週間後・・・
『ダンジョン攻略』に必要な『道具』『装備』『食料』『アイテム』を持ち、俺達パーティは町の中央区画にあるデカい噴水前へと集まった。
いよいよ本格的に『ダンジョン攻略』が進みそうだ。