第9話 5人の冒険者パーティ
『魔法の鞄』について二度目の説明が入っていますが、再確認という事でよろしくお願いします。
「はあああああああ!」
俺は今、手当たり次第に出て来たモンスターと交戦中だ。
相変わらずこの『エリア』はF~Dランクモンスターが多いが、『魔石』と『素材』だけは沢山手に入る。
特に『魔石』に限って言えばお金に換金できるのでありがたい。
まぁ、換金できる施設は地上にしかないんだけど、
数時間後、
俺は向かってきた全てのモンスターを倒した。
一匹一匹が雑魚モンスターだとしても量当てればキツイ。
「お疲れ様なんだよルミナス~、」
「おうモンチャ。今順調に"経験値"が入ってる気がする。あと散らかってる『魔石』と『素材』を回収しなきゃな。」
「分かったんだよ。」
そう言って俺とモンチャは辺りに散乱している『アイテム類』を回収しては『魔法の鞄』に入れて行く。
これだけ入れてもまだ許容量上限は超えていない。
本当に優秀な『アイテム』だ。
この『アイテム』を購入した時は250,000リーベで激高だったんだが、今に思えば最高の買い物だ。
モンチャがぶら下げてる鞄の中に全部の『アイテム』が入るんだから、
これ程楽な事は無い。
荷物にもならないしな。
キン!キン!キン!!
「ん?モンチャ、何か聞こえないか?」
「金属がぶつかり合う音なんだよ。」
ズドン!ズドン!
「今度は重い音だな。」
「魔法でも放っていると思うんだよ。」
「ちょっと行ってみるか、」
「え?危険人物だったりするかもしれないんだよ。ひょっとしたら音で釣って一人づつ確実に食い殺して行く恐ろしいモンスターだったり、敵の罠の可能性も、」
「そんな可能性のこと言ってたらキリがないぞ。」
「む~~~」
モンチャは不本意ながら俺の後を雛鳥の様に飛んで付いてくる。
『魔石』は全部回収しきれていないが、この際どうでもいいだろう。
今は兎に角、音の鳴る方へ進んで行く。
すると、5人の冒険者パーティがいた!
一人目は片手剣を持っていた。
職業は『剣士』と言ったところだろう。
二人目はデカい大盾を両肩の側面に装備し、ミスリル性の全身鎧まで纏っている。『守護者』だ。
三人目は杖を持ってる。
杖先には空色をした魔力の宝玉が、職は『魔法使い』だな。
四人目は弓を持ってる。
説明不要で『弓使い』だ。
五人目は手ぶらで装備は軽装。しかし地面に魔法陣を展開してはその中からモンスターが出てきた。狼型のモンスターだ。
あれを職業と仮定するならば『召喚士』だろうな。
初めて『召喚士』という職を見たが、あれが召喚モンスターか・・・。
面白い。
5人とも個性あるパーティだ。
その者たちは今、以前俺を空の彼方へと蹴り飛ばした忌々しいモンスター、『樹木型の樹怪人』と激戦を繰り広げていた。
俺は戦闘シーンを傍観する。
「ルミナスは助けに入らなくていいの?」
「必死に戦っているのに俺が入るのは野暮だろう。それにこの地の冒険者の実力を見ておきたい。戦いの参考にしてより上位のモンスターを倒す為の糧とするんだ。」
「四日前にAランクの『狡猾三頭の蜘蛛』を討伐したんだよ。」
「あの勝利はまぐれさ、いずれはAランクモンスターなんか軽くブッ飛ばせるような実力をつけて再戦でもするさ、」
「勝ったなら問題ないんだよ。」
「確かに問題ないが、今のままじゃいつまた何処で強い高レベルモンスターに出くわすとも限らん。例え"1エリア"だとしても。だから強くならきゃ行けないんだろう。」
「なるほどなんだよ。」
俺達が喋っている間にも5人パーティの激戦は繰り広げられていく。
唯一パーティの中で近接戦が出来る『剣士』の男が『樹木型の樹怪人』に単身で突っ込んでいく。
そしてひたすらに攻めの一手で攻撃を続行しては素早い動きで翻弄する。
『剣士』の男に『樹木型の樹怪人』の攻撃は当たらない。
素早さで言うと圧倒的に『剣士』が有利だ。
その後ろからは『弓使い』『魔法使い』『召喚士』が援護射撃でサポートする。
『樹木型の樹怪人』は背中を盾代わりにしてモロに攻撃を食らう。
「ブゥオオオオ!」
反応を見るに効果覿面だ。
遠距離攻撃の直撃を受けて『樹木型の樹怪人』は奇声を上げる。
「グオオオオオオオオオオオ!!!」
向きを反転し、『樹木型の樹怪人』は援護射撃及び支援サポーター達に攻撃を仕掛ける。
地面から棘を生やし、串刺しにする牙突だ!!
しかし攻撃と仲間の間に割って入るのは『守護者』だ。
「させん!『全撃防御』!」
自慢の大盾で牙突を何発も何発も弾き、防御する。
後ろへ届いた攻撃は一発たりとも無い。
全て防いだ!
それを見た『樹木型の樹怪人』は織り交じった樹木の腕を伸ばし、『守護者』に剛腕パンチを仕掛ける。
しかし、いとも簡単に防がれる。
そしてそこから『守護者』である褐色の大男は、ガードの姿勢から手を伸ばし、『樹木型の樹怪人』の剛腕パンチを両腕で掴んで固定する。
「掴んだ!今だ!!」
「はっはー!ナイスだ!!」
そしてその隙を突いて『剣士』が伸びきった腕を一刀両断!
すると腕を斬られた反動で『樹木型の樹怪人』は後ろへ巨体を仰け反らせ、『弓使い』『魔法使い』『召喚士』に攻勢の隙を見せた。
『弓使い』は一点突破の眉間狙い、風を切る火の矢を放つ。
『魔法使い』は木属性に効果抜群の炎の魔法を使う。
『召喚士』は『炎狐』という焔を纏いし狐で火炎攻撃する。
その攻撃を『樹木型の樹怪人』がこのタイミングで躱すことはないし、躱せるビジョンは見えない。
見えるのは、只ひたすらに迫り来る天敵属性の応酬だ。
そして『樹木型の樹怪人』は炎に包まれ大炎上した!!
「グオオオオオオオオオオオオオオ!!」
大気を燃やし、炎上する火炎の中で声を轟かせ、身体が黒く炭に変化していく。
時間が経てば経つほど身体はボロボロと崩れ落ちて生命力が低下していく。
ぷしゅ~~~~~
炎が消えた。
『樹木型の樹怪人』は両膝を突き、弱々しく一組のパーティに顔を向ける。
「これで終わりだな。俺達の連携攻撃の勝利だ。」
そう言って、最後の止めは『剣士』の男が斬撃のラッシュで切り刻んだ。
Cランクモンスター『樹木型の樹怪人』は抵抗する事も出来ずに討伐されて『魔石』と『素材アイテム』だけを残し、朽ちて行った。
「よっしゃー!討伐成功!!」
勝利の雄叫びと共にパーティは一か所に集まり、ハイタッチをした。
この勝負、愉快なパーティの勝利である!