見つめなおせ
「ここは…?」
目の前はぼんやりだがかすかに明るい光が見える。眩しいな。目を擦ると視界が開けてきた。
そこには見慣れた風景があり、俺が何年も通ってきた道だった。見覚えのある木、見覚えのある家。
どうやら俺は道端で寝てしまっていたらしい。たしか今までなにか変な夢を見ていた気が
するんだが。
「まあ、気のせいか。」
ここにいても何もないし、とりあえず動くか。立ち上がり特に行くあてもなく、ただ
ぼんやりと歩き始めた。
普通の人なら、まず家に帰るのだろうか。それが普通なのだろうか。俺はその意味が分からないし、
分かるはずがない。おれは親に愛されていないし、親を愛していない。そう、俺は見捨てられて
いるのだ。人が家族で過ごす当たり前の事が、俺には理解できない。楽しそうに過ごす家族を
見ると、羨ましくなる。それと同時になぜおれだけこんな目に、という絶望感がのしかかる。
「おい!遥斗!」
ああそうだった。俺の名前は遥斗だった。クズ親父につけられた名前だから人にまともに
自分の名前を言わなかったな。
そしてそのクズ親父が今、目の前にいる。頭が真っ白になった。怒りや恐怖などでは無く、
あいつからは逃げられないんだという絶望感に襲われた。
「ちょっと話がある。」
そう言ってあいつはこっちに小走りでやってきた。おれは動かなかった。いや、動けなかった…。
「いままでごめんな。本当にごめんな。許してくれとは言わないから、ただ謝らせてくれ。」
「え…」
その瞬間俺は深い眠気に襲われて意識が遠のいていった。
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「ここは…?」
「ああ目を覚ましましたか。おはようございます。」
どうやらこの世界にも”あいさつ”という文化はあるらしい。日常的には地球のときと
あまり変わらないのだな。
いや、今はそんな事はどうでもいい。まずこの状況を把握しろ。今まで俺は夢を見ていたのか?
だとしても何でそんな急に…。
「どうでしたか?私の魔法は。何か言っておけば良かったんですがね。説明すると
時間がかかりそうだったので何も言わずに術をかけてしまいました。そこは謝っておきます。
でもこれは私のスキルではないので安心してくださいね。」
そうかおれは術を掛けられて眠ってしまったわけか。でも術をかけたのがあいつではない
としたら、残るはあの石板がしたわけか。まったく迷惑な奴だ。何がしたいんだか。
「おれはどういう術をかけられたんだ?」
「願望の術ですね。自分が一番叶えたかったことを夢の中で達成することですね。
私のときは私をいじめていた奴らをボコボコにする夢でしたね。あれはとても気持ちが良かった
ですね。」
そういわれた瞬間、俺は唐突に理解した。おれは他のどんな事や人よりも、ただあいつに
必要とされ、愛されたかったのだ。そのことに気付いた瞬間、俺はなんとも言えない敗北感で
いっぱいになった。あいつが俺にしてきた事は許される事ではない。でも、あいつともう一度、
面と向かって話し合うことができたのなら……。
そのためにもおれはこの異世界からもといた世界に帰らなければいけない。
そのために敵国から情報をゲットしなければいけない。ハイバラシアとなって。
「そんじゃ、いっちょ頑張りますかー。」
俺には魔導士の意識の侵入を防いだという前代未聞の実績をもう果たしているのだから、
最悪でもバラシアあたりの実力はあるはずだし。まあ大丈夫でしょ!
「今から測定ルームへ移動するので私の半径1メートル以内にいておいてくださいね。」
こいつのスキルか?いいスキルだなー。ていうかこいつの名前聞いて無かったな。
「ねえあんたさ、名前は?」
「今聞きます?それ。」
彼はもうすでに術の行使の態勢にはいっていた。間が悪かったか。
まあこんなやつに気を遣う意味も無いしまあいいか。
「どちらの名前ですか?」
「は?」
反射的にキツイ口調が先走ってしまう。悪い癖だ。
「先ほど説明した通り我々魔導士は召喚者の肉体を借りています。
まああなたみたいな例外も何例かありますが。」
何?俺が初例じゃないのか。当たり棒のガ○ガ○君を溝に落としてしまった以来のショックだ。
「じゃあ魔導士の方の名前を教えてくれ。」
「・・・・・・。」
「なんだよ。」
「口の聞き方がなってませんねー。」
「お、教えて下さい。」
「よろしい。私の名前は・・・。」
「ミラ…」
「私の名前は革命のミラです。」
載せたい話がたくさんあって話の展開が遅いと感じられる方もいられると
思いますが、次は頑張って進めようと思いますので
ご期待ください!
それでは!