全ての始まり
いつもの見慣れた景色毎日同じ道。でも、何故か今日はそれさえも新鮮に感じてしまう。
そう何故なら今日俺が告白するからだ!
昨日から2時間ぐらい自分の部屋で黙読したから多分大丈夫だと思うけど、朝から手あせがすごい
んだけど。
「おい懍!俺は今日花怜に告白する!」
自分でも頭おかしいのかと思う。
「急にどうしたんだよ。」
まあ当然の反応だ。
「実はな…昨日ふと明日明日告ろうと思ったんだ!」
「何で急に脳筋バカ感出してんだよ。お前はこの中学校の天才だろ。」
「痛っ!…」
頭痛が走った。
「大丈夫か?」
「あれ?俺今まで何言ってた?」
「お前今日大丈夫か?病院行った方がいいんじゃね?」
「うっせえよ。大丈夫だ。」
「あ、いつものお前だ。」
何か今日変なんだよなー。自分のなかにもう一人いるみたいな感じがする。
「で、いつ花怜に告るんだ?放課後か?」
「は?何でお前知ってんの?」
「何でって、お前朝大声で言ってたじゃん。」
きっと今日寝ぼけてるんだな。早めに家帰って休もうかな。
「ごめん。凛今日俺先帰帰るわ。」
「体。気を付けろよ。」
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そのまま俺は家に帰った。俺が唯一得意な事は勉強くらいで、模試でも上位を俺はそれが凄いこと
だって思わないし、今の生活が楽しいかと聞かれたら、楽しくはない。何故ならあいつが
いるからだ。
「おい!何もう帰ってきてんだよ!」
俺の父親のせいだ。あいつは母さんが死んでから、ろくに働きもせず、酒に明け暮れた。
「頭痛かったから帰った。」
「今日のバイトはどうすんだよ。」
「行かね…」
「行けよ!」
「うっせえな!じゃあお前が働けよ!」
「親になめた口聞いてんじゃねえ!」
そう言われて俺は顔面を五発近く殴られ無理矢理バイトに行かされた。毎日この繰り返しだ。
テストで悪い点を取ったら殴られる。朝飯を作っていなかったら殴られる。もう疲れた。
そう思い俺は、歩道橋に足をかけて空を見上げた。
「今日も曇ってんな~。」
こういう時って遺書書いたほうがいいんだっけ。まあいいや。遺産とかないし。思い残すことも
無いし。あー凛には申し訳無いなー。転生して覚えてたら謝ろう。
「どうしたの?如月君?」
振り向くと花怜がいた。いつの間にかもう6時になっていた。なんか自殺する前に見られたの
めちゃめちゃ恥ずかしいんだけど。
「あの、こんな状況で悪いんだけど、聞いてくれないかな。」
「うん。いいよ。」
「実は俺、花怜のことが好きだ。」
自分でも頬が赤くなっているのが分かる。
「………。」
彼女はとても驚いた顔をしていて、数秒間うつむいて、そして天使のような笑みを浮かべながら
「私も!」
この世のすべてが報われた気がした。また生きていこうと思った。そう安堵した瞬間、俺は歩道橋
から落ちていた。
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「&%$#@§仝∞$¥℃£¢」
何言ってんだこいつ。というかここはどこだ?
「はっ!……」
思い出した。俺は歩道橋から落ちたんだ。ということはここがいわゆる黄泉の国っていう
やつか?
「*@$&#”!&?」
また変なこと言ってるし、あの人…人?
「すいません。何言ってるんですか?」
そう言うと、
「え?あなたヒュースさんじゃないんですか?あの人が異世界召喚失敗するんですねー。」
さっきから独り言のように何言ってんだこいつ。見た目は男っぽそうだけど、ガリガリだし、
なんか背中に羽生えてるし!!めちゃくちゃ小っちゃいけど!!
「なんかよく分からないけど、俺は死んだってことでいいんだよな?」
「いえ、あなたが死ぬギリギリに異世界召喚しました。」
状況がいまいち分からない。つまり、俺はまだ死んでないってことか・・?
「じゃ元の世界に帰れるんですか?」
「それはできません。あなたにはこの国で軍事兵器として働いて貰います。」
なんだそのめんどくせー話。まず俺を召喚させたヒュースっていう奴誰だよ!一発殴らねば。
「あのー。さっき話に出できたヒュースっていう人誰ですか?会ってみたいんですけど。」
「ずっといますよ。あなたの中に。」
は…?頭大丈夫か?こいつ。
「すいません。異世界召喚について説明が足りませんでしたね。異世界召喚というのは、
こちらの魔導士というものがあなたのような元の世界で生きる意味をなくした人たちを
召喚して、魂を乗っ取るというものです。」
「じゃあ元の魔導士は?」
「魂が抜けたので、あなたたちの世界の死というものですね。」
じゃあ、ヒュースっていう人は死んだのか。
「なんで生きる意味を無くした人を召喚するんですか?」
「それは、そういう人の方が魂を乗っ取るのが楽なんですよ。あと人生楽しんでる人召喚
したら、可哀想じゃないですか!?」
今すごいイラっとした。
「話は大体理解しました。ところでまだあなたの名前聞いてないんですけど。」
そういうと、彼は慌てたようにして、
「申し遅れました、私ガゼラと申します。こちらの世界の意味では、『天才』
という意味なんですよ?」
こいついっつも一言多いな。
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これが俺の地獄の物語のすべての始まりだった。