表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/133

No.49『次回作』

佐原「ドアーッ!」


根岸「あ、博士、おはようございます。出てくるなりうるさいですね」


佐原「ドアーって叫びながらドアを開けると元気になる健康法じゃよ」


根岸「既に元気なんじゃないですかねそれ」


佐原「無理やり元気を出すことで、元気がなくても、元気になれるのじゃよ。根岸くんも起き抜けにやるといいよ、なんかいつもローテンションじゃし」


根岸「僕の部屋のドアは自動ドアなんで」


佐原「ふむ、自動でドアーッ!って音声が出る機能をつけておくよそのうち」


根岸「いりませんよそんな騒音機能」


佐原「そう。それは残念」


根岸「っていうか博士の部屋は自動ドアじゃないんですね」


佐原「いや自動ドアじゃよ。壊れて手動ドアになってるけど」


根岸「自動ドアじゃないじゃないですか」


佐原「自動ドアじゃよ、壊れてるけど」


根岸「まあ、いいですけど」


佐原「さてさて、起きて一発目の新発明、いっちゃう?」


根岸「寝てただけなのに新発明ができてるって、どういうことなんですか」


佐原「そこはほら、ワシ、天才だしぃ?」


根岸「そうですか」


佐原「ではでは、今回の新発明! これはすごいぞ! 天上天下新天地創造的な新発明!」


根岸「毎回思うんですけど、この何何な新発明、って部分、勢いだけで言ってますよね」


佐原「そりゃそうじゃ」


根岸「……」


佐原「ふふふ、ついにワシの時代が来たのじゃよ、いわばもう元号が儂になっちゃうくらいの新発明! 今年は儂元年じゃよ!」


根岸「儂元年……」


佐原「今回の発明は、これじゃー! ででーん!」


根岸「これは……でかい……」


佐原「うむ、でかい」


根岸「ロケットですか?」


佐原「ミサイルじゃ」


根岸「ミサイル……、兵器ですか」


佐原「世間でブームじゃからな! なんとなく!」


根岸「ブーム、かなぁ。兵器なんて作ってどうするんですか、危ないなぁ」


佐原「うむ、普通の兵器ならば、危ない。だがしかしこれは大丈夫、なんか大丈夫なミサイルなのじゃよ」


根岸「なんですか、なんか大丈夫なミサイルって、ぼんやりしてるなぁ」


佐原「うむ、これはいわゆる、ほんわか兵器のひとつでな」


根岸「初めて聞く兵器の分類だ……」


佐原「これに根岸くんをくくりつけて飛ばすと、ほんわかする。ワシが」


根岸「ひどい」


佐原「冗談じゃよ冗談、ミサイルジョーク」


根岸「なんだそのジョーク。博士をくくりつけて飛ばしますよ?」


佐原「うむ、それじゃ」


根岸「飛ばされたいんですか?」


佐原「あ、いや、そうじゃなくてね。その怒りの感情、そういった感情を、なんかほんわかさせるのが、このミサイルなのじゃよ」


根岸「……ほう?」


佐原「空中でミサイルが爆散し、人間の共感する神経あたりに作用するなんかアレが散布されると、みんななんかほんわかするのじゃよ。具体的には温泉に浸かったときくらいほんわかする」


根岸「リラックスするってことです?」


佐原「まあ、だいたいそんな感じ」


根岸「相手側の戦意を無くさせたりできるわけですね。メンタルに効くタイプの兵器ですか、これはなかなか……」


佐原「違う違う」


根岸「はい?」


佐原「そういう目的に使っちゃダメダメ、これはほんわか兵器じゃよ? 相手がほんわかしたら、こっちもちゃんとほんわかするの!」


根岸「それは、どういう……?」


佐原「発射と同時に、こっち側にもちゃんとほんわかするアレが散布されるから、あっちもこっちもほんわかするの。それがほんわか兵器」


根岸「そういうものなんですか」


佐原「これぞ未来の兵器じゃよ、これで戦争とかそういうよくないのとはサヨナラじゃ! 人類の未来もこれで安心!」


根岸「なるほど……」


佐原「きっとどこぞの国が実験してるミサイルもコレじゃよ」


根岸「いやそれはどうだろうなぁ……」


佐原「あるいは空中で爆散して、桜の花びらが国中に舞うタイプのほんわかミサイルに違いない」


根岸「ないだろうなぁ……」


佐原「ふふふ、発射が楽しみじゃなぁ」


根岸「どこに向けて撃つつもりなんですか?」


佐原「んー、とりあえずはどこでもいいんじゃよ、地球全土カバーできる威力じゃから」


根岸「範囲広っ!」


佐原「ふふふ、ワシの作るものに不可能はないのじゃよ」


根岸「でも博士」


佐原「ん?」


根岸「博士が寝てる間に、人類滅んじゃってますよ?」


佐原「……へ?」


根岸「まじで」


佐原「…………えぇぇ!?」


根岸「博士がコールドスリープで数世紀寝てる間に、いろいろありまして」


佐原「いろいろあったのかぁ……」


根岸「この研究室だけは博士の作ったバリアーで無事でしたけど、外はもうだいたい植物だらけですね。地球は既に緑の星になってます」


佐原「そっかぁ、ほんわかミサイル出番無しかぁ……」


根岸「無しですねぇ」


佐原「せっかくコールドスリープ装置で未来にやってきたと思ったのになぁ」


根岸「未来の技術とか、楽しみにしてましたもんね」


佐原「人工知能搭載で喋りまくるロボットとか、見たかったなぁ」


根岸「……自分は?」


佐原「んー」


根岸「自分もロボットでしょ?」


佐原「確かに、確かにね。根岸くんはワシの作ったちょーすごいロボットじゃよ?」


根岸「ええ。自律行動をし、半永久的に動く―――」


佐原「でもね、未来じゃないの。全然」


根岸「めちゃくちゃ未来っぽいのに」


佐原「例を上げて説明しよう―――。例えば他の科学者が作ったこのロボット」


根岸「ぬいぐるみ?」


佐原「簡単な会話なら可能じゃよ? ナデナデシテーとか言うよ? 逆さまに吊るすとオロシテオロシテとか言うよ? だがこんなの未来じゃない!」


根岸「むしろ90年代後半だそれ」


佐原「他にはこれ、近くで音を立てると踊る植物型ロボット」


根岸「どんどん時代が古くなってる気がする」


佐原「これらは確かにロボットじゃよ、だがな、未来じゃない。決定的に未来じゃないのは、根岸くんと同じ動力、そう、電池で動いているということじゃ」


根岸「ちょっと待って」


佐原「ん、待った」


根岸「電池なんですか!? 自分の動力源」


佐原「そうじゃよ? しかもボタン電池。たまごっちとかで使ってたやつ」


根岸「えぇぇ……」


佐原「これで半永久的に動くんだから、すごいよね」


根岸「エネルギー効率だけ極端に未来っぽい」


佐原「しかし、そうかぁ、滅亡しちゃったかー人類」


根岸「しちゃいましたねぇ」


佐原「んー」


根岸「どうします? また数世紀寝ます?」


佐原「んんー」


根岸「自分はまた何年でも何万年でも待ちますけど」


佐原「いや、ちょっと作ろう」


根岸「新発明ですか」


佐原「いや、発明としては前にも作ったことあるから、新発明じゃないんじゃけど」


根岸「また作るような、役立つ発明とかって以前にありましたっけ?」


佐原「根岸くんを作る前の発明品じゃしなぁ、知らんのも無理はない」


根岸「その頃は役に立つものを作ってたんですね」


佐原「いやー、役に立つかはどうじゃろうなぁー。ワシの作るものじゃしー」


根岸「自分で言った。―――半永久的に自律行動をするロボットとか、たまにすごいもの作ってるじゃないですか、たまに」


佐原「あ、いや、実は根岸くんもすごい発明じゃないんじゃよ?」


根岸「まじすか」


佐原「ただのツッコミロボだもん」


根岸「……えぇ……」


佐原「というわけで、まあ、とりあえずひとつ、あ、いやふたつか。作ってからまたコールドスリープするとするよ」


根岸「何を作るんです?」


佐原「人間」




閉幕

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ