No.35『パワードスーツ』
佐原「根岸警部」
根岸「ついに完成しましたか、佐原博士」
佐原「ええ、増え続ける凶悪犯罪に対し、警察が秘密裏に開発していたパワードスーツ」
根岸「これが……」
佐原「プラコップ!!」
ナレーション「プラコップ(低い声)」
根岸「誰だよ今の」
佐原「ナレーションです。時給220円の」
根岸「やっす!」
佐原「仕事時間が4秒だったので彼の収入は15円」
根岸「15円の仕事……」
佐原「プラコップ開発経費に含まれます」
根岸「含まれるんだ……」
佐原「さてではこのパワードスーツですが――」
根岸「あの、プラコップって?」
佐原「ロボコップ的な感じです」
根岸「あ、ああ、なるほど。――え、じゃあ何これ、もしかして材質――」
佐原「プラスチックです」
根岸「……大丈夫なの?」
佐原「プラスチックもちょっと工夫すればすごい強度になるんですよ」
根岸「ほう」
佐原「でも熱で変形するので火災現場には近づかないでください」
根岸「あ、熱はダメなんだ」
佐原「あと多分夏の暑い日は蒸れます」
根岸「あー」
佐原「問題点はその程度でしょうか」
根岸「強度はどんなもんなんだ?」
佐原「10年土に埋めても腐敗しません」
根岸「プラスチックだもんなぁ。いや、そうじゃなくて、殴られたりとか撃たれたりとかは?」
佐原「凹みますが元にもどります。強度はばっちりですよ」
根岸「へこむってことは中身にはダメージいくんじゃ?」
佐原「そりゃそうでしょう。衝撃吸収素材じゃあるまいし」
根岸「えー、大丈夫なのこれ。えっとじゃあパワーとかは?」
佐原「常人の一倍!」
根岸「それ常人と同じだ!」
佐原「人一倍、みたいなニュアンスと混同して脳内補完してください」
根岸「意味違うじゃん、ほんとに一倍じゃん……」
佐原「だって予算ないんだもん!!」
根岸「えー」
佐原「このパワードスーツ一着にかかるお金はなんと5000円!」
根岸「やっす」
佐原「ペットボトルの加工代です」
根岸「ペットボトルでできてるのかコレ、エコだな!!」
佐原「なんにせよ予算不足です。国はプラコップ開発に資金を投入する気はないようですし……」
根岸「実用性が無いわけだ……」
佐原「予算ももうひとつの部署に取られてて、あっちは年間2兆ほどのお金がつぎ込まれてるのに!」
根岸「すごいなオイ、むしろプラコップ開発部署が生き残ってるのがフシギだ」
佐原「うちの部署は上の人の娯楽ですから」
根岸「言い切ったよ!?まるで役にたたないじゃん!」
佐原「そうなんですよ……」
根岸「え、ちなみにもうひとつの部署は何作ってるの?」
佐原「ロボコップです」
根岸「大敗じゃん!パワードスーツ開発としてなんかもう全部負けてるじゃん……」
佐原「あ、いえ、あっちはパワードスーツじゃないんです」
根岸「え……まさか完全にロボット……?」
佐原「いえ、ロボットのコップです」
根岸「コップ!!」
佐原「自律AIとか持ってて、単独で事件を解決するコップです」
根岸「すごいなロボコップ」
佐原「まあ、そんなわけで、プラコップに過度の期待は禁物ですな」
根岸「あー、まあ、そういうもんなのか。実用性はロボコップのほうが上だな」
佐原「ただ、コストが問題になります」
根岸「なるほど……」
佐原「プラコップなら割と安いんですけどね」
根岸「実用性がなぁ……」
佐原「紙コップてのもありますよ。もっと安い」
根岸「……紙なの?」
佐原「そう、紙です」
根岸「パワードスーツなの?」
佐原「コップです」
根岸「ただの紙コップだそれ!」
ナレーション「紙コップ(低い声)」
閉幕