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No.32『出して』

佑原「新入生の諸君に、まずは入学おめでとうと言っておこう」


根岸「諸君……」


佑原「私は七不思議研究同好会部の者だ」


根岸「同好会なのか、部なのか……」


佑原「部活見学、大いに結構、存分に見ていきたまへ」


根岸「やっぱり部活なのか」


佑原「何か質問のある者はいるかね?」


根岸「あの……」


佑原「唯一の見学者くん、なにかな?」


根岸「ですよね、僕しかいませんよね見学」


佑原「生きている者はな」


根岸「えぇ……、霊とかいるんですか……」


佑原「わからん、私には見えないからな」


根岸「なんなん……」


佑原「それで、質問はなにかな?」


根岸「ええと、この部は―――」


佑原「そう、この部は学校の七不思議を研究する同好会部だ。ここに来たからには、多少なりとも七不思議に興味があるのだろう?」


根岸「ええ、まあ」


佑原「うむ、では時間の許す限り、紹介してゆこうではないか。それらを聞いて、おしっこ漏らしたりしないようなら入部を認めよう」


根岸「失禁するレベルなのか……」


佑原「いままでこの七不思議すべてを聞いて、失禁しなかったものはいない」


根岸「えぇ……」


佑原「ではいくぞ、覚悟はいいか」


根岸「あ、ちょっと」


佑原「どうした」


根岸「ほかのセンパイというか、部員の方はいないんですか?」


佑原「うむ、失禁したくないから帰ったのだな」


根岸「センパイは?」


佑原「私が帰ったら、誰が新入部員を勧誘するのだね。大丈夫だ、オムツを履いている。部活といえど、遊びではないのだ」


根岸「……なるほど、すごい覚悟だ」


佑原「ではいくぞ、まずひとつめは―――」


根岸「ごくり」


佑原「地下給食センターに潜む忍者の末裔」


根岸「……この学校、給食制じゃないですよね?」


佑原「そう、地下給食センターという謎の施設があるらしい。不思議だろう?」


根岸「そこに、忍者がいると……」


佑原「正確には忍者の末裔がいるだけで、そいつが忍者とは限らないがな。というか忍者の末裔は別に不思議なポイントではない。割と校内で見かけるぞ」


根岸「えぇ……なにこの学校……」


佑原「黒くて素早く、身を隠すのが上手いが、注意すればすぐに見つけられるだろう」


根岸「ゴキブリみたいだな……」


佑原「姿はゴキブリそっくりだ」


根岸「というかそれはゴキブリそのものだ。忍者ちがう」


佑原「そしてふたつめの七不思議は―――」


根岸「ごくり」


佑原「地下音楽室から夜な夜な聞こえるアニソン」


根岸「怖いのか怖くないのか微妙すぎる」


佑原「不思議なのであって、怖いものが集まっているわけではないからな、七不思議は」


根岸「というか、この学校、地下って……」


佑原「そう、地下など無い」


根岸「なんなんだ……」


佑原「地下給食センターに、地下音楽室に、地下闘技場に、地下鉄。確認されている未確認の施設はこの4つだ」


根岸「確認されてないじゃないか……。っていうか何だ地下闘技場と地下鉄って」


佑原「七不思議のうち4つは地下施設の不思議なのだ」


根岸「不思議だ……」


佑原「ちなみに地下へ行く階段は見つかっていない」


根岸「なにこの七不思議……」


佑原「地下へ行くエスカレーターはあるのになぁ」


根岸「どういうことなの……」


佑原「階段はいくら探しても見つからないのだ」


根岸「……あとの3つは?」


佑原「地下シリーズがあとふたつあるのだが。地下闘技場と地下鉄」


根岸「地下シリーズはいいです」


佑原「そうか、では次の七不思議。不思議、発見!」


根岸「……」


佑原「この学校には、部とも同好会とも区別のつかない組織が存在しているらしい」


根岸「ここだそれ!」


佑原「不思議なことに、学校非公認なのに部室が与えられているらしい」


根岸「ここだ!」


佑原「さて次の七不思議」


根岸「流された!」


佑原「この学校の2階の廊下の突き当たりに、大きな鏡があるんだが」


根岸「お、なんかやっとそれっぽい感じの」


佑原「そこに、鏡文字で書いた手紙を持って、深夜2時過ぎに訪れると、鏡の中の自分に手紙を渡せるらしい」


根岸「おお……」


佑原「手紙の内容によって、様々なことが起こることが報告されている」


根岸「おお」


佑原「『鏡の中の私のおかげで、意中のカレと両思いになることができました』ペンネーム恋するウナギちゃんさん」


根岸「おお?」


佑原「『鏡の中の自分がやった問題がテストに出ました、これからも続けていきたいです』ペンネーム部活との両立もばっちりですさん」


根岸「おおお?」


佑原「といった具合に」


根岸「思ってたよりノリが軽い」


佑原「不思議なおまじないとしてこの学校では最も有名な七不思議だな」


根岸「えぇ……」


佑原「それではラストミステリー。不思議、発見!」


根岸「……」


佑原「夜中だけ段数の増える階段」


根岸「……」


佑原「……」


根岸「ふつう!」


佑原「普通じゃないだろう、増えるんだぞ段数が」


根岸「あ、いやなんか、七不思議としてようやく普通のものが出たなぁと。っていうか他のインパクトが強すぎて、見事にインパクトないですねそれ」


佑原「うむ、この学校の七不思議の中でも、唯一ほかの学校でも同様の現象が起こっている報告があがる七不思議だ」


根岸「ちなみにその階段はどこの階段なんですか?」


佑原「地下へと続く……」


根岸「エスカレーターだそれえええええ!」


佑原「おおう……」


根岸「段数も何も、夜になって止まってるだけのエスカレーターだそれええええ!」


佑原「お、おちついて。はじめは誰でもおしっこ漏らしちゃったことにびっくりするもんだ」


根岸「漏らしてなーい!」


佑原「あ、はい」


根岸「ふぅ、ふぅ……」


佑原「落ち着いた?」


根岸「……はい」


佑原「それはよかった」


根岸「しかし、なんというか、なんというかな七不思議ですね……」


佑原「学校によるよ、七不思議なんて。二宮金次郎が動いたり、骨格標本が動いたりするところもあれば、学校によっては地下闘技場が確認されたりもする」


根岸「それはまあ、そうなのかもしれませんが……」


佑原「うちの学校の七不思議はこれなんだから、仕方ない」


根岸「なんか七不思議のイメージが」


佑原「もっと怖い感じの想像してた?」


根岸「ええ、正直」


佑原「ちょっと怖い感じのも、あるにはあるんだよ」


根岸「あるんですか」


佑原「モノによってはね、怖い報告も上がってる」


根岸「たとえば?」


佑原「さっきの、2階の鏡の話」


根岸「はい」


佑原「鏡の中の自分と、入れ替わっちゃったとかいう報告もある」


根岸「あ、ちょっと怖い」


佑原「怖いよね、本物はもう、鏡の中の世界から一生出られないんだ」


根岸「でも、周りの人は、入れ替わってしまったことに気づかない?」


佑原「注意すれば、利き手とか、見た目とかが―――」


根岸「ああ、鏡だから」


佑原「そう、左右が……」




閉幕

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