No.16『忍法タイムマシン』
佐原「忍びの道とは、ほろ苦く、少し甘い」
根岸「チョコレートの宣伝みたいですね」
佐原「うむ、忍びとチョコレートとはきってもきれぬ関係なのじゃ」
根岸「おお、さすがは師匠、わけがわからない」
佐原「では、今日の忍術修行を開始する」
根岸「忍びとチョコの関係説明は投げっぱなしなのか」
佐原「今日は、分身の術じゃ」
根岸「おおお、すごそうなのが来た!」
佐原「これまで行ってきたティッシュ配りの修行も、全てはこの分身の術のため!」
根岸「ただのバイトじゃなかったのか!」
佐原「バイトもできて修行もできる、一粒で二度おいしい修行じゃ、ついでに度胸もつく」
根岸「修行って言葉の地味ーなイメージとかけ離れてるな」
佐原「現代の忍術修行はハイソでミステリアスなのじゃよ」
根岸「ティッシュ配りにハイソさは無いと思います」
佐原「ばかもん!」
根岸「うわぁ」
佐原「ティッシュ配りはのぅ、三百年前には無かったのじゃぞ!」
根岸「そりゃそうだ!」
佐原「現代という名の混沌が生み出した真なる闇、その闇を永久より引継ぎし者だけが行える行為、それがティッシュ配りじゃ!」
根岸「さっぱりだ!」
佐原「まあ、つまりはティッシュ配りをしている人はみんな忍者なのじゃよ」
根岸「うそん」
佐原「草の任務というものを知っているか?」
根岸「ええ、忍の者が一般社会に溶け込み、情報収集などを行う……はっ、そうか!」
佐原「違う!」
根岸「え、違うの……」
佐原「草になりきるのが草の任務じゃ!」
根岸「ティッシュ配り関係ない!」
佐原「秘伝の巻物絵巻、ガラスの仮面をちゃんと読んでおらぬな」
根岸「なにその秘伝の巻物!」
佐原「まあいい、そのうち読んでおくように」
根岸「あ、はい……」
佐原「というわけで、まあなんやかんやあって、分身の術を伝授しよう」
根岸「なんやかんやありましたね」
佐原「まず、タイムマシンを作って、5分後の自分を連れてきます、はい増えたー」
根岸「ちょ、待っ」
佐原「どうした?」
根岸「超展開すぎてついていけませんでした」
佐原「そうか、ではゆっくり説明しよう。まぁ~ずぅ~たぁいむぅまぁ~」
根岸「もういいです」
佐原「なんだ」
根岸「まず、ですよ?」
佐原「うむ」
根岸「タイムマシンを作るんですか?」
佐原「うむうむ」
根岸「ど……どうやって!」
佐原「確かに、現代の科学では技術的に不可能だ」
根岸「ですよね……」
佐原「だが、現代の忍者なら忍術的に可能だ」
根岸「What's!?」
佐原「正確には、江戸時代にはタイムマシンは作られていたらしいのだが」
根岸「そんなばかな!」
佐原「かの有名な忍者、キテレツ斎様は忍術的にタイムマシンを考案していたのだが、作る前に幽閉されてしまったそうでな」
根岸「きてれつー!」
佐原「奇天烈とか言うんじゃない、すごい方なのだぞ」
根岸「へぇ……」
佐原「というわけで、忍術的に作ったタイムマシンがこちらです」
根岸「できてたー! 既にあったー! なんだこれー!」
佐原「これで、5分後の自分を連れてくることによって、分身するのじゃ」
根岸「忍術すげー」
佐原「では実践じゃ、ちょっと5分後のワシを連れてくる」
根岸「あ、はい」
ぶいーん ぶいーん
佐原「ただいまー」
根岸「早いですね」
佐原「出た時間に帰ってくればいいだけじゃからな、というわけでこっちがワシ二号じゃ」
佐原「やぁ」
根岸「うわぁ、ほんとに増えたけど、これ忍術なのかな……」
佐原「立派な忍術じゃ、巻物を咥えて巨大なガマガエルを出したりするのと同じで、忍術を使ってタイムマシンを出したのじゃよ」
根岸「うわぁ……忍術すげー」
佐原「じゃろう?」
ぶいーん
根岸「なんか出てきましたよ」
佐原「お、5分後のワシー、ちょっと来てくれー」
佐原「おう、では根岸くん、ワシはちょっと行ってくる」
根岸「へ、あ、はい、行ってらっしゃい」
ぶいーん
佐原「じゃあワシは自分の居た時間軸に戻るから」
根岸「あ、さっき連れてこられた師匠。わかりました、お疲れ様です」
ぶいーん
根岸「……あれ?」
閉幕