No.13『二人で一人』
根岸「俺たちは」
佐原「二人で一人の」
根岸&佐原「探偵さ!!」
根岸「俺が探偵で」
佐原「俺が犯人!」
根岸「犯人はお前だ!」
佐原「なぁぜぇわかったぁ~」
根岸「なんか違くね?」
佐原「俺もそう思う、これだと二人で一人の探偵っていうか、二人でワンセットのアホだ」
根岸「正解だ、名推理だな、探偵クン」
佐原「この程度は朝飯前さ。だから当然気づいているとも、お前が怪人にじゅーめんそーだ!」
根岸「違います」
佐原「違いましたか」
根岸「俺が怪人二十面相だと二人で一人の探偵にならないだろ。俺も探偵なの」
佐原「俺も探偵なのに?」
根岸「そう」
佐原「それじゃあ二人で一人の探偵じゃなくて、二人の探偵じゃん」
根岸「うん、まあ、大概の二人で一人の何某もそうなんだけどね、それ言っちゃったら実も蓋も無いじゃない」
佐原「難しいなー、二人で一人、どういう感じならいいんだ」
根岸「定番は、片方が頭脳で」
佐原「もう片方がブレインか」
根岸「脳しかない! 違うよ、片方が頭脳で」
佐原「もう片方がお邪魔虫」
根岸「この状況はまさにそれだよ」
佐原「だいたい、二人で一人ってどういうことなんだよ」
根岸「そんなこと今更言い出すのか。まあ一心同体とか、そういうことだろ?」
佐原「……わかったぞ。俺の推理が今まさにバックドラフト!」
根岸「わかりづらい」
佐原「つまりオンブバッタ!」
根岸「……」
佐原「……」
根岸「……うん、一心同体からオンブバッタにたどり着いたのはわかった。でも違う。一心同体ってのはそういうことじゃない」
佐原「むむぅ、違ったか。でも俺たちは二人で一人の探偵なんだろ?」
根岸「ああそうだ、俺たちは二人で一人の探偵さ」
佐原「どんな難事件も俺たち二人にかかれば解決さ!」
根岸「そう、俺たちは」
佐原「二人で一人の」
根岸&佐原「探偵さ!」
ばばーん
佐原「ってことはさ」
根岸「うん」
佐原「俺は事件を半分しか解決しないでいいの?」
根岸「半分解決って、どういう状況だよ」
佐原「犯人を特定する」
根岸「終わったじゃん、事件終了じゃん。俺の出番は?」
佐原「犯人を捕まえる」
根岸「それは警察の役目だよ」
佐原「じゃあ半分解決ってどういうことだよ!」
根岸「俺が聞きたいよ!」
佐原「俺たちは!」
根岸「二人で一人の!」
佐原&根岸「探偵さ!」
じゃじゃーん
根岸「勢いで流したな」
佐原「よくわからんなー、二人で一人の探偵」
根岸「まさかの事件解決どころか、事件発生前にこんな謎にぶちあたるとは」
佐原「一心同体……一心同体……」
根岸「まあ、二人で力を合わせて事件を解決しましょう、ってことだろ?」
佐原「ああ、そういうこと? なんだ、簡単だな」
根岸「まあ、簡単だよ、そういうことだ」
佐原「じゃあ俺は晩飯の用意をしておくから、事件を解決してきてくれたまへ」
根岸「いや、力を合わせて、事件を解決しようぜ」
佐原「腹が減ったら推理できないだろう! 俺は、お前の推理を食事でサポートする!」
根岸「そんな二人で一人の探偵聞いたことない!」
佐原「斬新じゃん」
根岸「探偵とコックだよそれじゃあ。だいたいまだ事件も起きてない」
佐原「わかったよ、じゃあまず事件を起こすから、解決してくれ」
ざくり
根岸「ぎゃー。 じゃないよコラ、俺を刺すんじゃない」
佐原「事件発生だ、探偵さん!」
根岸「現行犯だし、犯人はお前だ!」
佐原「くそぅ、さすがは名探偵、名推理だ……」
根岸「事件の発生から解決まで、全部二人でこなす」
佐原「俺たちは!」
根岸「二人で一人の!」
佐原&根岸「探偵さ!」
ぴかりーん
根岸「っていうかお前事件の解決になんら役立ってないよね? 犯人だし」
佐原「バカ言うな、犯人がいなきゃ事件は解決できないんだぞ。俺は犯人になることで事件を解決に導いたんだ」
根岸「ややこしいなー」
佐原「難事件だったな! だがこれにて一件落着!はっはっはっはー」
根岸「それ違う、探偵じゃない」
閉幕