行きずりの仲間も冒険の醍醐味よね
廃坑道に飛び込んだ一行は、真っ暗闇のそこに少しだけ気後れしつつ、奥に進んだ。
「ラ・フレム」
ケルトの杖先から灯された灯火が、薄暗い坑道をぼんやりと映し出している。陰影の強いそこに気配はなく、ただ泥のような闇だけが蟠っているだけだ。
「っと!……ちっ、案の定、シケた場所のようだな」
最後のネセレが飛び込んできて、彼女の松明の明かりが加わって光が増した。これならば歩くのにも支障はないだろう。
「んで?この曲がりくねった廃坑をどうやってクリアするんだ?てめぇは覚えてるのか?」
「心配はないさ」
リーンは微笑みながら頷き、目を伏せて詠唱する。
「『第1の風なりし精霊よ。我が声を聞け。流れ、導け』ベシュト・パ・フェリス」
風が動き、一同の前で緑の発光する球体が出現した。それは解けるように光の糸となり、坑道の中をふわりふわりと飛んでいく。
飛んでいく糸を見ながら、ケルトが興味深そうに呟く。
「風の流れを探知しているのですね」
「そうさ。出口までの流れを探知する魔法でね、なかなか重宝するんだ」
「っていうか、てめぇは魔法士だったのか?」
「正確に言えば、魔法剣士だがね」
魔法は知識が必要な分野なので、魔法を体得するのは基本的に社会の上位層と相場が決まっている。或いは教会でそれなりの地位に就くものか。身なりも悪くないリーンは、そこそこに良い身分の出身なのだろう。…余談だが、ジャドも魔法剣士である。出身に関しては、言わずもがな。
同じく感心していたハディが、ピンと何かを思いついたようにリーンへ尋ねた。
「なぁリーン。その魔法って複数使える?」
「ああ、可能だが…」
「じゃあ俺が斥候するよ。身軽だし、背後はネセレが居てくれれば安心だろ?」
「…ふん、まぁいいだろ。だが、ヘマすんじゃねーぞ、チビ助」
「もちろん!」
そう言いながら、ハディは光を追いながら足音を消し、一行の先を進みながら暗闇の中へと姿を消した。
それを黙して見送ったケルトは、少しだけ眉を顰める。
その間、再び魔法を唱えたリーンの光の帯が動き出したところで、一行も後を追う。
「さあ、行こうか」
彼女の先導により、一行は薄暗い坑道を進み始めた……。
・・・・・・
・・・・
・・・
そして、問題なく坑道を抜けることは成功した。本当になんの襲撃も魔物の気配もなく、落盤や落石に出会うこともなく、曲がりくねった道に足を取られる事は何度かあれど、一行は無事にそこを抜け出すことに成功した。
それに、ケルトはやはりどこか腑に落ちないように、怪訝な顔をしていた。
坑道を出た先は山の南側、朽ち果てた小屋の残骸が転がる、森に面した場所であった。古道が敷設されていることから、おそらく砦からここまで繋がっているのだろう。かつて、ここは鉱山として活用されていたのだろうから、当然だ。
まだ夜明け前な周囲の気配を探りながら、松明を掲げながらネセレが尋ねる。
「さて、出たは良いが…お前ら、どっちに行く?」
「…砦方面は、危険でしょうね。当然」
「だな。砦は山間の関所も兼任してる。もしもそこが襲われてるんなら、あの周辺で砦を迂回して回る事は難しい。なにより、敵勢がうろうろしている周囲を行くなんざ自殺行為だ」
「では、西へ。確かこの先は…」
リーンが地図を取り出しながら、明かりに照らしつつ答える。
「カーベス湿地帯があるはずだ。あそこは泥濘みが多く、足が取られやすい場所だから気をつける必要があるはずだな」
早速、一行は西廻りにヴェシレア王国への道を歩く。人間があちらの国に入り込むことで問題は出るだろうが、そうは言っていられない事態だ。そもそも、人間だが冒険者なので、多少はお目溢ししてくれるかもしれない。
そして湿地帯への道を歩く途中、日が昇ってきたのか空が白んできた。
明かりも必要なくなり、同時に食事を取るべき時間でもあったので、ネセレは三人に隠れた場所で休憩を取らせ、自らは一人で先の道へ斥候に向かった。こういう時、人種最速の強みが発揮されるのだ。
地を蹴り木々を蹴り、動物を尻目に飛ぶように森を抜け、河を超えた先にある湿地帯が見える場所まで走る。河は広いが大木の橋が運良く掛かっていたので、そこを通ってじめじめした湿地帯へ足を踏み入れた。
泥濘んだ泥に靴を取られ、重装鎧を着込んだ者はたいそう苦労する道行きだろう。また底なし沼も到るところにあるようで、これでは確かに軍を進めるには難しい場所だ、と思わせる。この先は険しい丘陵と渓谷が連なっているはずなので、これらの要因がこちら側に軍が駐留しない理由となっているのだ。
枯れ木が点在する湿地帯は広く、視界は良好だが、やや赤色を帯びた霧が出ているのが気にかかる。
ネセレは身を低くしながらマントを裏返して濃い迷彩色になる方を表に羽織り、身を隠しながら先に進む。そして、気づく。
(…マジか。こっちも魔物だらけかよ)
いくつか点在する枯れ木は全て、木に扮した魔物。
泥の中から何かが盛り上がって飛び出し、傍を飛んでいた鳥を鋭い顎で捕らえて潜り込んでいく、巨大な魔物。
木の魔物はトラント、泥の中に居るのはカエルに似ながらも牙を持つ魔物、フローグだ。どちらも、森や湿地でたまに目にする程度で、こんなにもウロウロしている筈がない連中だ。
試しに投擲で石を遠くまで放てば、落ちた瞬間に周囲四方からフローグ飛びだして襲いかかっている。魔物は近づけば融合する性質だというのに、こいつらは不思議と融合せず、そのまま何事もなかったかのように潜っていく。
そんな状況に、ネセレは再度、内心で舌打ちする。
(くそ、既に包囲網は出来てるってわけか。つまり、アタイらはあの砦に逃げ込むしかねぇって感じだな)
正直、ネセレだけならば、この湿地帯を抜けることも容易い。いや、ワスプの群れから逃げることも難しくはない。
問題は連れの存在だ。足手まといを抱えたまま、魔物の大軍とやり合うのはあまりにも無謀だったのだ。
(…気に食わねぇ)
内心で呟き、隠密しながら元の場所へと戻る。
もしもここに迷い込んだ連中が逃げ出しても、魔物を操る敵から逃れるのは難しいだろう。冒険者が消息を絶ったというのも理解できる状況だ。
だがしかし、何故に昨日は逃されたのか。そこがどうにも気にかかる。
戻ったネセレは、炙り干し肉を齧りながら湿地帯の状況を説明した。
どうにもヴェシレアへ逃げることも難しい現状、八方塞がりである。
「坑道を戻って、また見つからないように北へ進むというのは………難しいですよね」
「ワスプは本来、獲物に対して執着を持つ魔物だぜ。街にも関わらずに突っ込んでくるのは知られてるだろ。もっとも、あんな大勢のワスプなんざ、普通はお目にかかれねぇがな」
魔物は群れない、それはこの世界の常識であった。
しかしその常識が覆されている現状、下手な行動はあまりにも無謀であった。
「つまり、お前らという足手まといを抱えている以上、アタイらが出来るのは砦が無事なのを祈りながら見に行くしかねぇってこったな」
「…結局、行くしか無いのか」
消沈するリーンに、しかしネセレは悪態をつく。
「もともと、魔物を連れてきたのはてめぇだろ。弱音言わずに死にたくなけりゃ着いてこい」
「ネセレ、そういう言い方は感心しませんよ」
「あぁ?事実だろうが」
「い、いや、大丈夫だ。…元はと言えば、私が君達を巻き込んだのだからな。仕方がない」
とはいえ、少しだけ震えているのも無理のないことなのだろう。死地から逃げてきて、またその死地に戻るのだから。
それを気遣うケルトを見ながら、ネセレはけっ!と悪態をつく。お熱いことだ。
ついでに、八つ当たり紛いに吐き捨てる。
「ま、喜べクソガキ。お前の望む通り、吸血鬼退治と洒落込むことになったぜ。お陰様で死ぬかも知れねぇパーティへご招待ってわけだ」
「…俺は」
昨日から消沈しているハディは、ネセレの皮肉になにか言い返そうとして、しかし何も言えずに黙した。一晩経って頭が冷えたのだろうか。どこかバツの悪そうな顔であった。
そんな、場の空気が悪くなった一行は、無言のままに野営後を隠して、東へと進路を取る。
…そして、大量のゾンビーを相手にする羽目になるのである。
※※※
「なんっなんだよこりゃぁ!?なんだってこんな大量のゾンビーが湧いて出てんだこらぁ!?」
「わ、わけがわかんないよ!?」
「これは…あまりにも異常ですね…!」
森の古びた街道を進む最中、唐突に木立の合間からゾンビーが顔を出したのだ。咄嗟にそれを切り捨てたネセレによって、ゾンビーはドロドロと身体を溶けさせてから、魔核だけを残して消え去った。
一難去ったか、と一同がホッと息を着く間もなく、ついで次のゾンビーが現れた。そしてそれを倒して次は2体、その次は3体、と徐々に数を増やし、あっという間に大量のゾンビーに囲まれてしまったのである。
緑色の腐ったような皮膚、異臭の漂う臭いに、骨すら見える相貌。眼球は落ち、筋繊維が微かに見える顔は生前の面影をわずかに見せてくれる。だからこそ、普通の魔物よりゾンビーは相手にしにくいのだ。
5体を一瞬でバラバラにするネセレだが、舌打ちしながら次のゾンビーを蹴り倒し、周囲を見る。
数は減れども、勢いは増している。あまり良くない兆候だ。
逃げ場があれば良いのだが、この辺りの状況を知らないネセレ達としては、どこへ逃げるべきなのかの判断がつかない。
迷いつつも、ハディに襲いかかっていたゾンビーを切り飛ばし、ネセレは考える。
(戻るか?いや、こいつらを引き連れて坑道を彷徨うことになったらゲームオーバーだ。ワスプに待ち伏せされる可能性が高いし、このゾンビー共、意外と足が速い。チビどもと一緒に逃げるには分が悪すぎる。…さぁて、どうすっかな)
思案しつつも身体は勝手に動き周り、無尽蔵なゾンビーを手当たり次第に細切れにする。本音を言えばさっさと逃げ去りたいのだが、チビ達を置いて逃げるわけにもいかない。パーティという集団行動に慣れていないネセレは、本気が十全に出せない現状に苛立っていた。
この耐久レースが延々と続くのか、と一同は絶望感に支配された時、
『我が月の恩寵を賜らん!火よ、我が声に従え!我が敵を燃やし尽くせ!!』
唐突な精霊語の詠唱に、ケルトがハッとなった。
同時に、円陣を組む一行の周囲四方に火炎が渦巻き、舐めるようにゾンビーの群れを焼き尽くして…そのまま四方から一行へも襲いかかってきたのだ。
「な、なんだっ!?魔法…!?」
「いや、原始魔法だ!」
「『来たれ4つの火、我は汝に乞い願う。我は光の同胞、我が思索は汝に望む』…ラダ・バドレ・スン・ヴィエフレア・フレス!」
ケルトが杖を掲げれば、赤い結界が炎を防ぎ、その業火の勢いを弱めて鎮火させた。
驚き戸惑う一行の中、ネセレだけは相手を捕捉した。
「…そこかっ!?」
投擲したナイフが木々の合間を煌めき、樹上の誰かへ向かい…
キィン!
とその者がナイフを弾きながら、枝を蹴って飛来した。
「敵かっ!?」
ハディが剣で迎え撃てば、相手の双剣が鋭く閃き襲いかかる。
が、ハディはその全てを器用に弾き、防ぎ、躱しきった。
相手の猛攻を凌いだ瞬間、ハディは踏み込んで下から突き上げるような斬撃。
「っ…!」
咄嗟に背後へ飛んだ人物は無傷だったが、切り飛ばされたマスクだけは地面に落ちていた。
しかし、その人物を見た瞬間、ハディ達は少し驚きを顕にした。
「青い肌の…人間?」
「…ふム、よい腕をしているナ」
片言を発したその人物、男は、ハディたちとは似ても似つかぬ相貌をしている。
青い肌、髪は灰色、目は銀色。
珍しい色合いの壮年の男は、山岳の民が着込む民族衣装のような恰好をしていた。弓を背に負い、双剣を手に油断なくこちらを睨めつけている。
警戒するハディ達へ、男は辿々しい共通語で尋ねてくる。
「見たところ、オマエ達は昼の民であろう?このような場所へ、ナニ用だ?」
「な、何用って…俺たちは魔物に追われてここに逃げてきたんだ」
「…ナルホド、敵ではナイようだな」
少し嘆息してから、背後へ声を掛ける。
「ミイ、出てこい。どうやら、仕留めるにしても難しい相手のヨウだ」
『…なんなんだ、こいつらは。本当にただの昼の民なのか?』
木の上からもう一つの人影が落ちてきた。
その人物は、ケルトを見て眉を顰めた。
『…奇怪な気配をした奴だ。おいお前。私の言葉がわかるのだろう?』
「せ、精霊語ですか?ええと…『あなた方はいったい何者です?』」
『話しがわかるようだな。だが師父・ザムよ…こんな軟弱そうな連中、どうして仕留めないのだ』
『し、仕留めるって…』
精霊語を操るのは、青い肌をした若い女性である。髪は灰色、瞳は青色で、男と並べば親子にも見えるだろうか。
気の強そうな女性は、腕組みしながら見下すように、ケルトを睨めつけた。
『こんな場所に何の用だ、天光神の犬共。我が領地に土足で踏み入って、ただで済むと思っているのではなかろうな?』
『りょ、領地?ここは一応、デグゼラス帝国の領土でヴェシレア王国の地ではなかったと思いましたが…』
『馬鹿を言え!この地は我らが先祖伝来の地だ!貴様ら昼の民が我らから奪おうとし、我らを追いやったことが原因で我らは手放すことになったが…しかし、この地は我らの物だ!!』
「え、ええ…?」
「ミイ、そう興奮するナ。…昼の民よ。我らとシても、思うところは多いのダ」
「んで、てめぇらはいったいなんなんだ?青い人間なんざ聞いたこともねえが。それに、なんでまたアタイ達を狙った?場合によっちゃ、タダじゃすまさねぇぜ?」
凄みを利かせるネセレの言葉に、壮年の男は嘆息しつつ両手を上げた。
「オレはザムと言う。こっちはミイ。我らは南山岳に帰還しタ、夜の民…夜魔族だ」
「…ええええぇぇっっ!?!?」
夜の民という名を聞いて、一番ビックリしているのはケルトである。一方、あまり歴史に詳しくないハディ・ネセレは薄い反応であった。リーンはなんとも言えない顔で首を傾げている。
「よ、夜の民!?一夜にして消えたというあの夜の一族が、何故ここに!?というか、戻ってきたということは、今まで一体どこに居たんですか!?」
『勢い込んで叫ぶな野蛮人め!』
「我らハかつて、ルドラ神に導かれテ「地下世界・カー」と呼ばれる地に住んでイタのだ。しかし事情がアッテ、再びこの地に戻っテ来た」
聞き慣れた名に、ケルトがヒクリと引きつる。どうやらあの老人の仕業のようだ。
「本来ならバ、オマエ達は発見次第、始末すべきであった。我らの存在を昼の民に知られる訳にはいかぬからナ…」
「へっ!殺しに来るつもりなら容赦はしねぇぜ?言っとくが、アタイをそこのチビと同等に見るんじゃねえぞ?…両手足は覚悟しとくんだな」
『なんとも気の強い子供だ…それに凄まじく野蛮で口が悪い』
「あぁ?なんか言ったかこのクソアマ」
「だが、この者達の中でモットモ強い…ミイよ、下手なコトはするなよ。我らデハ決して勝てん」
『…ザムが言うならば、了承しよう』
渋々と、二人は武装解除した。
その二人を前に、ハディ達はひとまず敵意を収めながら、話を続けた。
「あのさ、二人は俺たちを殺す気なのか?」
「好きデ殺めるわけではナイが、我らとオマエ達とは確執がある。オマエ達と戦をし、我が一族は滅びの憂き目に遭ったが故に、外から来た者を秘密保持の為に処分しよう、という掟を作った………確かに、いきなり攻撃したコトは謝罪しよう。だが、これも我が一族のタメだ」
「夜の民…夜魔族は秘密主義なんですね…」
『ああ、貴様たちのお蔭でな』
共通語は理解できているらしきミイは、強い眼差しと敵意を籠めてくる。それに、ケルトはなんだか居心地の悪い気分になってきて、目線をそらしてしまう。
一方、胆力のあるハディとネセレは構わず続ける。
「じゃあ、もう殺そうとしないでくれよ?今は魔物だらけで俺たちも忙しいし」
「…マア、そうだな。非常事態なのは見ていてわかる。我らの退路も断たれているからナ」
『元々、我らは近くの昼の民の地が騒がしい事に宗主さまが不吉な予兆を感じられ、我らを遣わせたのだ。だというのに、降りてきて見ればこのザマだ…いつからジョーは冥府になったのだ』
「な、なるほど、つまりあなた方は夜の民…ええと、夜魔族の斥候部隊、という事でいいんですね?」
『そう思えば良い。だが、これは何なのだ?何故こんな場所に大量の生ける死者が彷徨っているのだ。昼の民どもは自らの墓場の管理も出来ていないのか?』
ミイは精霊語で責めるような口調で言うが、責められても困る事ではある。
「原因は目下捜索中ではあります。この先の砦に、吸血鬼と呼ばれる存在が居ると聞きましてね。その調査と、ついでに人間領への報告をするために抜けようと思っているのですが…ご覧の有様です」
『ふん、軟弱な。この程度の魔物相手に苦戦するとは、質が落ちたものだな』
憤慨する女性とは裏腹に、ザムと名乗った男は考えるように言った。
「ナルホド、つまりお前たちもコレの原因を追っているのだナ?…ならば、我らとの目的は合致シているワケだ」
「ああ、確かにそうだよな」
『ザム!しかし昼の民なんかと…!』
言い募るミイへ、ザムは厳しい眼差しを向けながら、精霊語で反論した。
『現状、我らの戦力では乏しいのはお前もわかっているだろう。先祖の感情に引き摺られて目的を見失うのは、半人前のすることだ、ミイ』
『………』
どこかバツが悪そうに俯くミイに、ザムは息を吐いてからこちらに向き直り、提案した。
「取引をシタイ。オマエ達の護衛をする代わりに、その砦の様子を見に行きタイのだ。…そして、先程の攻撃は詫びよう。すまなかっタな」
『………』
頭を下げるザムと、ぶっすーと不機嫌そうにしながらも、一応は謝意を見せるミイ。
そんな二人を見ながら、ハディ達は顔を見合わせた。
「…どうします?」
「ふん、人手が欲しいのは事実だ。それにさっきの魔法も強力だったからな………って言っても、いつ背後から襲われるか、わかったもんじゃねえけどな」
「たとえ襲われても、ネセレならなんとかするだろ?俺はいいと思うよ。仲間は多いほうが良いし、ここで戦っても何も得られないし」
「さ、流石に少し怪しいと思うが…私も異論はない」
「では、決まりですね」
了承を取った一向に、ザムは頷き、ミイは不貞腐れたようにそっぽを向いた。
「ならば、短い間だろうがヨロシク頼むぞ、昼の民達よ」




