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どうも、邪神です  作者: 満月丸
冒険者編
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33/120

面倒な後処理です

「……うむ、流石、流石」


 パチパチパチ、とわりと本気の称賛を送ってから、私は惨状を見渡して感心する。

 丘陵部の百メートル四方だけが、光の雨によって焼け焦げたのだ。いやぁ、圧巻だね。敵を捕らえるのが難しいと判断して、点じゃなくて面攻撃したわけだ。で、逃げ場を無くしたネセレは哀れ極光の餌食となりました。ちゃんちゃん。


 しかし……これは予想外だったな。


 どうやらケルトだが、彼は強い感情を剥き出しにすれば、精霊詠唱をほぼ無視して魔法が撃てるようだ。いや、光の魔法だけだが。

 精霊詠唱ってのは『 』内の部分のこと。これ無しでも魔法は使えるけど、威力が大幅に落ちる。具体的には3分の1以下に減る。精霊は威力増幅のアシストしてんだから当然だよね。

 で、ケルトの魂は光の精霊だから、光属性の魔法は精霊詠唱しなくとも自分で威力の調整が可能なようだ。肉体的な枷で身の丈以上の増幅は出来ないけどね。まあ強い感情が必要だろうから、訓練は必要だろうけども。

 それでも、これは凄まじい。第4レベルの魔法だ。

 呪文だけでこのレベルの魔法が使えるのなら、詠唱がネックの魔法界の常識が覆されるだろう。うむうむ、流石。


 ……おっと、面攻撃を食らったネセレが立ち上がったぞ。どうやら、この程度では戦闘不能には程遠いようだ。

 手加減込みとはいえ火の神の一撃を食らってもピンピンしてたし、まだまだやれるって感じかね。


「糞どもめ……今度は容赦しねぇ……! ぶっ殺してやる!」


 おいおい、不殺はどうしたんだよ君。

 ま、ケルトは力の反動でふらふらなので、手を出してあげようかな。頑張ったのでご褒美だ。


「『第6の風精、我は汝へ乞い願う。捕らえ、縛り、かの者の力を削ぎ落とせ』ベシュト・エマ・セクト・バドレ=スン・フェリシア」


 途端、ネセレは空間に固定されたように動けなくなり、ナイフも取り落としてしまった。ぐぐぐっと抗うも、拘束はびくともしない。ふはは、良いザマだなぁ!なんか良からぬ事をしてやりたい気分になるではないか!


「くっそぅ……なんだ、てめぇがやったのかこのクソジジイ!」

「やれやれ、年上に対しての口の聞き方ではないなぁ、小娘よ。そもそも淑女としては壊滅的に口が悪い。最悪だ」

「あぁ!? 文句あんのかよこらぁ!?」


 チンピラかこいつは。

 仕方ないなぁ、それじゃ思い出させてあげようかな。

 ずいっと顔を近づけて、神の威圧感起動。


「我が畏れを忘れているようだな、定命の者よ」


 瞬間、ネセレが固まった。

 う~ん、いい表情だ。

 いつ見てもこういう驚愕の表情は良いね、好きだよ。


「て、て、てめぇは……!?」

「やぁ、久しぶりだなネセレ? 子供の頃以来という事は、十数年ぶりくらいかね? しかしお前も随分と大人になったなぁ。前に会った時はこーんなに小さかったのに……あれ、あんまり変わってないかな」

「る、る、る……ルド」

「はいストップ」

「ぬぐー!?」


 とりあえず名前は呼ばせねぇよ!

 口を塞ぎながら、私はネセレへ良い笑顔で恫喝する。


「さて、ネセレ? 互いに積もる話もあるだろうが、まあここは私の顔に免じてナイフを収めてはくれんかね?」

「は、はぁ……!? な、なんでアタイがお前なんかの言うことを!?」

「またフナムシに体を集られたいのかね?」

「ひぃっ!?」


 はははー面白いなー、苛め甲斐のある子は好きだよー。


 ま、そんな感じで、ネセレは不承不承、仕方なしに武器を収めてくれた。素直で大変よろしい。

 で、メルの結界を解いたら、


「おじい様のアホンダラァァ!!」

「うわあぶねっ!?」


 解いた瞬間に超速ラリアットが飛んできた。思わず避けたけど、食らってたら首がゴキってなってたかもしれんな。痛そう。

 鼻息荒いメルの怒りもごもっとだけど、とりあえず平謝りして宥めた。今回の事がケルトたちにとってどれだけ重要か説明したけど、納得いかない様子で睥睨された。あ、なんか癖になりそうな視線。でも私は見下されるよりは見下したい。


 ともあれ、皇女ちゃんお手製ポーションをぶっ掛けられたことで、ハディとケルトはなんとか回復したようだ。血が流れたので猛烈に飢餓感を抱くハディは、酷い顔色で瞑想を始めている。血を流すと生命エネルギーが減るみたいだ。

 ケルトは、さっきまでの怒りは消えたのか、いつもみたいなボーッとした顔に戻っている。強い感情は長続きしないからね。けど、自分の手を見て不思議そうにしていた。まだ実感が湧かない様子だ。


 そんで、完全に警戒してる猫みたいなネセレには、いい笑顔で言っておく。


「さて、ネセレや。お前が盗んだ宝玉は返してもらうぞ。ああ、あとお前が盗んだ戦利品も全てな」

「くっ……この強欲ジジイめ……! わぁったよ! 好きに持ってけよ!」


 不貞腐れてぷくーっと頬を膨らませているが、まあ大人になっても子供のような奴だな。見てくれは子供だが。

 と、そこでメルメルがネセレへ厳しい表情で尋ねた。


「それで? 下々の間では義賊と名高い貴方が、どうしてシェロス商会を襲ったのです? 悪徳商会や貴族しか盗みを働かない貴方が、どうして今回だけ?」

「……ちっ、必要だったからに決まってんだろうがよ」

「必要? それは、誰かが怪我をされたのかしら?」

「……見たほうが早いだろ。おら、こっちだ」


 そう言い、ネセレは不貞腐れたままアジトまで案内した。我らは顔を見合わせてから、とりあえずついていくことにする。え、罠? 私が居る時点で無意味な心配だよ、それは。


 さて、丘陵地帯からやや東へ向かった、大岩の影にそのアジトの入り口はあった。天然洞窟だろうが、崩れないか心配になりそうな入り口だな。

 無造作に中に入るネセレに続けば、中から部下らしき下っ端盗賊がわらわらと出てきた。いや、3人しか居ないけど。

 当然、我ら一行の姿を見てオロオロする下っ端。


「と、頭領!? そいつらは一体ナニモンで……!?」

「やめとけ。こいつらはアタイより強い……無駄な抵抗は死に等しいと思っときな」


 ネセレの言葉に下っ端連中は震え上がった。

 恐怖の象徴でもあるネセレが観念するというだけで、確実に相手は化物だと察したんだろう。懸命だ。


「むむむ、なんじゃ結局負けて帰ってきおったのか」

「ちっ、クソババアめ……なんで逃げてねぇんだよ」


 と、そこで最後の一人がやってくる。

 灰色ローブとフードを纏った、枯れ木のような腰の曲がった魔女だった。鷲鼻の魔女は歯抜けた風貌でひぇっひぇっひぇ! と高笑い。なぁんてセオリー通りの姿! なんか気に入ったぜ。

 魔女は水晶玉を掲げながら、ネセレへ良い笑顔を寄越している。


「だから言ったじゃろう? お前は必ず負けると」

「うっせぇ! なんでこのジジイが居るって言わなかったんだよ!? 知ってたらアタイだって喧嘩なんざ売らなかったに決まってんだろ!!」

「ひぇっひぇっ! 鼻っ柱の強いお前が悄気げて帰ってくるのを見るだけで、価値はあるかと思ってのぅ。案の定、随分とこっ酷くやられたようじゃなぁ。こりゃあ愉快愉快! ひぇっひぇっひぇ!」

「この守銭奴ババア……いっぺんなます切りにされてぇのか? あぁ?」

「言っておきますけども、アタクシの目の前でそんな事はさせませんわよ」


 メルメルの言葉に、ネセレは舌打ち。どうやら、ネセレはメルメルの力量に気づいているようではあるね。まあ成長しきった勇者に勝てる人間なんて居ない。

 で、私は興味本位で魔女の婆さんに話しかけてみる。


「ふむ、君が件の占い師か。その占いで、シェロス商会の宝玉を知ったのだな?」

「ほぅん? なんとも奇怪な気配を持つ御仁だのぅ。ヴァルが凄まじくドス黒い…………まあ、その通り! ワシが占ってみせたのさ。なんと言ってもネセレ盗賊団の精神的紅一点! 百発百中のギムナ婆さんとはワシのことじゃね!」

「てめぇのどこが紅一点だクソババア。100年遅いんだよ」

「かっー! これだから若いもんは口さがなくて困る! ワシの貴重性をまったく理解しとらんから呆れるのじゃよ!」

「高い金払って雇ってんだ。雇い主への敬意ってのを見せたらどうなんだ」

「敬意がほしけりゃ金よこしな。ほら、銀貨10枚」

「くたばれ」


 なんとも守銭奴な婆さんなようだ。うん、嫌いじゃないよ。

 軽妙な掛け合いを横目に、疲れてそうなケルトが尋ねる。今にもぶっ倒れそうだな。体力無いもやしっ子め。


「……それで、貴方が怪我を直したい相手とは、どなたなのですか?」


 ネセレは思い出したようにハッとなり、それからバツが悪そうに頭を掻いていた。


「……そこのジジイに見られるのはシャクだが、まぁしゃーねえか。こっちだよ」


 アジトの奥には更に通路があり、そこを通りすぎた先には、上への扉が。

 その落とし戸を開けて出てみれば、そこはなんと火山の上だった。これには皆ビックリだ。


「な……や、山の中!? 俺たち、たしか丘の上に居たよな!?」

「なるほど、空間魔法ですわね。師匠が使用していたのを見たことがありますわ」

「そ。ギジクウカン? ってやつだよ。さ、この先だ。さっさと来い」


 ネセレの先導で火山を登れば、辿り着いたのは山頂。

 開けた山の上は彼方まで見渡せるが、しかし眼下に広がるのは荒野のような山々と、そして海である。なんとも、殺風景な領域だな。

 で、その山頂には、1匹の赤い鱗のドラゴンが横たわっていたのだ。

 その威容を見て、最初に反応したのはメルだ。


「ドラゴン……まぁ、久しぶりに見ましたわね」


 精霊王の試練にドラゴンの鱗とかあったな。取りに行った時にドラゴンとやり合ってたね、確か。

 しかし、初めてドラゴンを目にする子供組は戦々恐々だ。


「ど、ドラゴンって、あのお伽噺のやつだろ?なんでこんなとこに……」


 それに、やはりネセレは舌打ちで悪態。


「怪我してんだよ、だからアタイが助けてやったのさ。……ったく、じゃなきゃなんでアタイがあんなチンケな盗みをしなきゃなんねーんだか」

『……私は頼んだ覚えなど無いのだがな』

「なんだ、起きてやがったのか」


 ドラゴンは顔を擡げて、ネセレだけを見た。どこか寝起きみたいな、ぼや~っとした目だな。しかし、負傷とな? ドラゴンが傷つけられるとは珍しい。

 また顔を伏せたドラゴンに、ネセレは少しだけ眉を顰めてる。


「以前、こいつが根城を張ってた北の山脈に、甲殻虫どもが押し寄せてきたんだよ。で、アタイとの戦いで弱ってたこいつは、この通りってわけだ。へっ、ザマァねえな」


 あれ、甲殻虫って私が変えたあの元天族か……じゃ、この事件の発端って、私が原因じゃ…………。


 うん、知らないなぁ~僕知らないなぁ~。僕のせいじゃありませ~ん。


 明後日を向いて口笛吹く私を、歴史に詳しいメルメルが睨みつけてくる。だから違うって、私のせいじゃありませんってばぁ。

 そんなこっちを尻目に、ケルトは興味深げにドラゴンの鱗を観察している。


「しかし、ドラゴンとは……初めて目にしますが、名はあるのですか?」

「ああ、フェスベスタってんだ。火の神の……なんだっけ? ヴァルなんとかってのの眷属だとよ」

「火の神……ヴァルフレアですか。その眷属とは、なんとも偉大な存在ですね」


 ケルト、君もその偉大な存在の一人なんだけども、自覚ないねこりゃ。

 と、そこで微睡んでるフェスベスタが顔を動かして、ケルトを見た。

 で、真紅の瞳を眇めて呟く。


『……珍妙な人間と思いきや、これは意外なところで出会うものだ』

「意外……とは、私のことですか?」

『なんだ、覚えておらぬのか。ならば致し方ないな』


 記憶があるかどうかはランダムだからね。その点、フェスベスタはラッキーな方でもある。いや、非人間時の記憶があっても、だからなんだって感じではあるけど。


『だが、それよりも奇妙なのは……そこの老人。貴様はなんだ。妙な気配をしおって……』


 お、なんだ君、気づいてなかったのか。

 それじゃ、サプライズでもしようかなぁっと。

 コホン、と咳払いを一つ。


「久しぶりだな、フェスベスタ」

『……なんだと?』

「お前が食べられかけた時、お前の主神に話しをしてやったのが誰か、忘れたのかね?」


 その瞬間、微睡んでいたフェスベスタは目を見開き、慌てたように体を起こして頭を下げた。


『こ、これは夜刻』

「はいはい、我が名は呼ばずとも宜しい。それと敬いも必要ないぞ。今は非番なのでね」

『ひ、非番とは……?』

「ちょいっと後進に冥府を任せていてな、その合間にこうして鍛えているのだよ」


 ケルトを見て言えば、それだけでフェスくんは納得してくれたようだ。うん、言葉要らずで助かる。当人はわけわかんない顔で首を傾げてるけど。

 しかし見た感じ、フェスくんの怪我はそこそこに深そうだな。ドラゴンの鱗を、弱っているとは言え負傷させるとはなかなかやるな甲殻虫。作ったの私だけど。

 ……っていうか、見てみたら深い傷のほとんどはナイフじゃん! おいネセレぇ! お前もうちょっとは手加減してやれよなー!


「手加減できる相手じゃねーっての! 火山噴火させたり隕石落としてくるドラゴン相手にどう手加減しろってんだよ!?」


 言われてみればその通りだな、すまんかった。

 ともあれ、とりあえずフェスくんの傷は、私が治してやることにする。


「『第8の光精、我は汝へ乞い願う。血を与え、輝きで癒し、或るべからざる傷を消し去り給え』ラダ・ルドア=マール・バドレ=ビン・マ・セーレシャイア」


 すると、輝きに包まれたフェスくんの体躯はみるみる再生し、あっという間に傷が塞がったのである。うむうむ、我が仕事ながら完璧じゃな。ちなみに光精を使ったのは、ケルトの教育のためだ。同じ光精同士、観察することで同調するかも知れんからな。

 癒やされたフェスくんは、さっきまでの微睡みが嘘のように元気になって、翼を羽ばたかせて天へと飛び立った。咆哮あげて超嬉しそう。良かったじゃん。

 そんなドラゴンを見上げてから、メルは厳しい顔でネセレを睨む。


「……さて、貴方がドラゴンの為に盗みを働いたのは事実ですわ。けれども、盗みは盗み。大人しくアタクシ達へ投降なさい」

「……ちっ! それで帝都まで運んで縛り首かよ。結構なこったな」

「そうですわね、本来ならそれも已む無しなのですが」


 と、そこでメルメルはピキーン! という顔をした。

 で、極上のにっこり笑顔で私を見る。

 なんだその、エルシレアみたいな無駄に爽やかで嫌な笑顔は。


「おじい様? 冒険者パーティを組む上で、理想の人数は何人かご存知ですの?」

「え?……いや、知らんが」

「一般的に理想の人数は5~6人ですわね。これは前衛、後衛のバランスが取りやすく、互いにフォローしあえる最低人数と言われてますの。それと、取り分の分配で揉めにくい人数とも言えますわね」

「は、はぁ……それで?」

「それで、ですね。我がパーティは4人しか居ませんわ。つまり、もう一人追加すべきと愚考いたしますけども」

「…………え、なに、それは私に面倒見ろって言っとるのかね?」

「おじい様が戦わぬ場合があるのならば、二人だけではあまりにも無謀でしてよ。まかり間違って死んでしまう事態となったら目も当てられませんわ。ああ、おじい様にとっては些末な事かもしれませんけども、アタクシ達にとって死は取り返しのつかないことですからね」


 あれ、なんか皮肉言われてる? まださっきの件で怒ってるっぽい?


「それで、アタクシはこの盗賊を仲間に引き込むべきだ、と思いましてよ」

「で、私に小娘のお守りをしろ、と」

「そういうことですわね」

「……ってちょっと待てよ!? なに勝手に人の未来を決めてんだてめぇらは!?」

「あら? 捕まった賊風情に決定権がおありと思いまして? 言っておきますけど、もしこのまま帝都行きだということになれば、貴方はアタクシが監視することになりましてよ。逃げられるとはお思いになられないことね」

「ぐっ……!?」


 田人だから捕まっても逃げればいーや、みたいな考えがあったようだけども、メルメルは田人以上の才人だぜ。諦めな。

 だが……もう一人増えるのかぁ、しかも保護責任とか問われるし、面倒だなー。いや、まあ今更だけども。

 しかしメルメルめ。私への当て付けかね、これは。

 無駄に逞しくなって神様は少しだけ悲しいぞ。


「ええ、どこかの誰かさんのお蔭で」


 我が教育が行き届いているようで何よりです、はい。


・・・・・・・・・・・


 ま、そんな感じでネセレがパーティにインする事になった。戦ったハディは平然と嬉しそうに「よろしくな!」とか言ってたけど、胆力ありすぎだろこの子。ケルトは流石に硬い表情でよそよそしい。こっちが普通の反応だな。

 しかし、メルメル的にネセレは帝国軍へ突き出すつもりだと思ってたんだけどなぁ、意外。


「アタクシにも思うところはありましてよ。けれども、ここで死なせるには、あまりにも惜しい逸材ですわ。我が皇族への無礼千万な所業に関しては許しませんけども、だからこそその才覚でもって、今後もこき使ってやるつもりです。これで人様の役に立てばそれで良し。もし出来ないのならば、アタクシが確実に仕留めればそれで良いのですから」


 わー、こわーい。メルメルが(したた)かすぎてこわーい。


 ともあれ、ネセレはブータレながらも承諾し、我がパーティの一員となった。

 「ぜってぇに逃げ出してやる……!」とか言ってるけど、無理だからね? 神の目を掻い潜れるとは思うなよお嬢ちゃん。次はGでも集らせるか。


 なお、怪我が癒えたフェスベスタは、作り出した領域を消してから、自分の火山に帰るらしい。


『まこと、世話になりました。偉大なる御方よ。このご恩は忘れませぬ』

「あー、私は面倒だから忘れるんで、君も忘れなさい」

『は、はぁ……ともあれ、ネセレよ。世話にはなったが……次は負けぬぞ』

「へっ、なら次もアタイがぶっ飛ばしてやるよ。その首根っこ洗って待ってな! ドラゴンステーキにして食ってやっからなぁ!」

『……ふん』


 などと軽口を言い合いながら、フェスくんは去っていった。う~ん、あれかね。ネセレのライバルって感じなのかね。互いに強すぎて敵が少ないから、戦うことでじゃれ合ってるような感覚なのかもねぇ。うん、フラグかな?


 さてさて、それで依頼の宝玉なんだけども。


「……真っ黒ですわね」

「真っ黒だな」

「真っ黒ですね」


 ええ、ネセレが持ってきた輝きの宝玉の輝きは失われ、真っ黒でした。これはもう使い切ってるね、確実に。

 一同の無言の視線に晒され、流石のネセレも引いている。


「な、なんだよ、しゃーねぇだろう!? ドラゴンを癒すんだから使い切っちまっても無理ねーじゃん!?」

「困りましたわねぇ、これでは減額は確実ですわ」

「うーん、金貨10枚ってどれくらいなのか、俺にはよくわかんないんだけど。どれくらいなんだ?」

「中流階級ならば4~5年くらいは遊んで暮らせる金額ですね」

「そんなにするんだな……俺、金貨って見たこと無いし、触ったこともない」

「私もありませんね、そういえば」


 私はいっぱいあるぞ。


 と、そこで私はピンと思いついて、メルメルへ言う。


「メル、錬金術で魔法道具の充電は可能か?」

「え? じゅう……ああ、補充のことですわね? 不可能、とはいい難いですけども、問題はエネルギー補充方法をどうするか、ですわね。古代の魔法道具は作成者の力をそのまま宿しますから、作成者しか補充ができません。見たところ、とても質の良い、複雑な魔法道具ですもの。確実に苦戦しますわね」

「なるほど、なら私がエネルギーを供出しよう。それでお前が籠めなさい。出来るな?」

「……さらっと、とんでもないことを仰る方ね、相変わらず。ま、いいですわ、やりましょう」


 あっさり頷き、メルメルは地面に杖をついて、あっという間に魔法陣……錬金陣を展開。で、その中央に宝玉置いて、更に片手を掲げて別の陣を展開する。本来は手書きする必要があるんだけど、メルメルは魔法で陣を記憶して展開させてる。で、それを手直ししてるわけね。

 陣は呪文代わりでもあるので、書き上げるだけで、あとは仕上げ。陣の四方に《ヴァルタイト》という光る石を置いて、準備オッケー。

 私が魔法道具を解析し、その製作者のエネルギーを真似て供出、同時にメルメルが錬金術を発動させて、完了。


 そしてそこには燦然と光りを帯びた宝玉が!


 あっさりと完成させたけど、普通なら不可能なことです、言うまでもないけど。


 ……依頼品を回収してから、ネセレ一味はそのまま一緒に帝都へ来てもらうことになった。もちろん下っ端やギムナ婆さんも一緒だ。

 いやぁ、情報収集の手駒って欲しいじゃん? あと裏っ側の事情を知る連中。盗賊なこいつらは手足に向いてたので、そのまま帝都で潜伏、必要に応じて情報を持ってきてもらうことにした。だって私が探すの、面倒じゃん?

 なお、「勝手に逃げたり裏切れば自動で爆死する魔法かけたから」と、しっかりと念入りに釘を刺せば、みんな赤べこみたいに首を縦に振ってた。素直で大変に宜しい。占いオババさまに関しては、その手腕がかなり有能なので、そのままゲッシュの宿で雇うことになった。守銭奴なのが玉に瑕だが、前金で金貨を積んだら即オッケー貰った。チョロいな。


 そんな塩梅で処理をしてから、帝都に戻ってシェロス氏へ連絡を入れる。

 感激した風情の依頼人を適当に躱しつつ、私達もトンコー氏に会えるように取り計らってもらった。ほら、人の縁やツテって大事でしょ? いや私じゃなくて、ハディ達がね。


 さて、トンコー氏。いったいどんな人物なのやら。

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― 新着の感想 ―
「次はGでも集らせるか。」 やめてあげて!それはあまりにもひどすぎる!!! 人でなし!人心無! そんなのやられたら来世までトラウマを植え付けられるよぉ
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