たまには遠出しましょう
あっという間に数年が経過し、宣戦布告した半獣の王国が人間の帝国と戦争したのである。
かつて仲良くしていたのが遠い過去のようだ……いや、千年以上前なんだから遠いか。
かつて、半獣は始祖が統治する王国の人間と同盟を組んでいたんだけども、その始祖が居なくなってから王国とは疎遠になってたんだよね。で、王国が滅んで帝国ができて、帝国が大きくなるにつれてそれを脅威を感じたのか、それとも潤沢な資源が欲しかったのか、戦争を仕掛けたのだ。まあ帝国って南にあった夜の民と戦争してたし、次は自分らだって思っても仕方がないね。実際、帝国も次は半獣の国をロックオンしてるから、その懸念はもっともである。
ま、そんな戦争が巻き起こったところで、世界全体でみればさして大きな事ではない。獣種も戦国時代がとうの昔に終わって部族間で独立したんだが、また仲の悪い同士で小競り合いしている。翼種も、天族が勢力を減らした分、メルディニマ大陸南のバラバラな群島で多くの地族が国を作り、北山脈の天族と睨み合ってる。どこにでも争いは起こるものなんだよ。
争いといえば、地下世界カーで数が増えてちょっと剣呑になってた夜の民の中に、なんか光エルフの村々によからぬ事をしやがった連中がいたんで、ガリガリくんの帝国跡地にほっぽり出しといた。めっちゃ謝られてるけど、手を出した時点で私は知らん。後は君らでなんとかしなさい。
そんな経緯で、夜の民がひっそりと南山脈で国を作り、隠れるように大きくなった。ジョーより元素が濃いカーで過ごしてた影響なのか、夜の民は魔法に長けててね、魔法使いが多い。しかも、何百年も前に彼ら独自のオリジナル魔法を編み出しててさ、感心しちゃったからその時ちょっと力を貸してあげたんだけど……改めて確認したらもっと凶悪に進化していた。私の力と紐付けたので月魔法という魔法体系になり、威力はないけど別の意味でとんでもない代物と化している。
そんな力を持ってるせいか、いつの間にか彼らは自らを「夜魔族」と呼ぶようになった。肌の色合いも仄かに青っぽくなってるけど、これは太陽が無かったカーでの影響の一種かな? 光エルフは白いし、ラプ族は金の毛皮だし、ティレット族は明るい黄色肌である。不思議なもんだな。
そうそう、それとね。
ゲンニ大陸の帝都北に、魔法都市が生まれたのだ。戦争に次ぐ戦争での戦力拡大を狙う為の、魔法使いを養成する都市って感じね。巨大な学園が実権握る、貴族経営の独立都市って感じなんで、入学してくるのはもっぱら貴族である。が、魔法の才能がある一般人をスカウトしたり引き取ったりして、ここに入れて学ばせてもいるようだ。その後、育ったら戦地に送られるんだろう……まあ、強く生きろ。
そして、ここの講師の一人に、成長した皇女ちゃんが入っていたりする。当然のごとく身分を隠してね。
この子、獣種のザーレド大陸で錬金術を用いた大魔法実験で山一つぶっ壊すレベルの道具を作ってたけど、大丈夫か? と少し不安になる。爆弾魔は養成しないでおくれよ。あと爆弾は広めないでね。絶対に。
皇女ちゃん、ことメルサディールは錬金術科の講師として教鞭を奮っているが、なかなかスパルタ方式なお嬢さんだ。しかし、錬金術……ようは魔法陣を介して物質変換したり魔法効果を籠めたアイテムを作ったりする技術ね……によって、帝国での魔法の利便性が大幅アップしている。ほら、ファンタジーでお馴染みな飲んだだけで超回復なポーションとかも出来始めてて、そんな回復アイテムはすごい重宝されているのだ。そのせいか、他の講師達から一目置かれてるし、彼女の気品ある佇まいに気後れしているし、ついでに美人なので鼻の下伸ばしてる野郎共も多い。
これだけの要素が揃ってたら彼女が勇者だって気づかれそうなものだけども、意外と気づかれていないのだ。まあ、救世姫は既に神界に旅立ってるって話しが流れてたし、伝説が目の前に居るだなんて誰も思わないんだろう。盲点ってやつかね。
しかし、「元悪役令嬢が勇者になって世界を救ったので魔法学園で講師やってます」とか、なんか小説になりそうな設定だな、と今更ながらに思ったり。読んでみたいな、そんな小説。
※※※
ある日、なにやら下界で唸ってるパツキンイケメン土の神を見つけたので声を掛けてみたら、ものすっげぇビビられた。私が何したっていうんだよ。ああ、いろいろしてたわ。
ともあれ、何を悩んでるんだ? とイケメン土の神のガイゼルムンドに聞いてみたところ、
「実は、歌に関して悩んでいるのです」
とのご返答が。
なにやら話を聞けば、彼の眷属である精霊の一体が転生したんだが、その子は精霊としての記憶を失っている状態のようだった。で、彼は貧しい農夫の家庭に生まれ、メルディニマ大陸の地族として育ったんだけど、いつかこの貧困から脱出してやる! と畑を耕しながら日々を懸命に生きていたらしい。
それでこの度、なんと天族の都市で歌唱大会が行われるようで、眷属くんも千載一遇のチャンスとばかりに「それに出てみせる!」と息巻いているようで。
ところが、天族の歌唱ってのは独特で、巧みな魔法を用いた二重音声とか声色変えとか、そんな技法を使うのが一般的だそうな。
当然、地族の彼はそんな繊細な魔法は扱えない。でも眷属だから頑張って優勝して欲しい! けど神の名で優勝させるのは違うし、歌唱の能力を与えるのもなんか違う! 神様ジレンマ!! ってなわけで。
ま、安易な能力譲渡は努力の否定でしかないから、賢いと思うよ。そんなねぇ、ほいほい才能を後付けで与えてたら、頑張る意味なんて無くしちゃうだろうし、我も我もってみんな集ってくるだろうし、なんであいつは与えて自分はくれないんだ不公平だ! ってなるだろうし。不平等は信仰離れにも関わるから気を使わないとね……え、勇者は良いのかって? いいのいいの、勇者は世界を救う特別な存在なんだから。
さて、それで歌唱だっけか。それってようは歌の技術の問題ってことだよな。
確か天族の主な歌唱って、独唱とか多重音声の輪唱とかだっけ。エコーかけたりビブラートも出来るんで機械要らずだな、とか思った覚えが。あとは詩吟、つまりは弾き語りだ。楽器は使うけど伴奏っぽくはなく、毛皮張ったドラムや木の縦笛、簡単なハープを鳴らす程度。なんでこんなに楽器のレパートリーが少ないんだよ……ああ、私が人口をふっ飛ばしたせいか。あと、翼種の技術製作レベルが、人間より劣ってるのもあるかもね。彫刻作るのは得意だけど。
ふふん、遅れているな天族共よ。ほら、我が大陸の楽器はなんと亀の甲羅のハープとかベルとかドラムとか……ほぼ一緒じゃねぇか!? なんでこっちもレパートリーが少ないんだよ! 私が人口をふっ飛ばしたせいですねわかります!
獣種も似たり寄ったり、なんとも、この世界の音楽関係は遅れているようだ。せめてギターくらいは欲しいよね、管楽器と弦楽器をもっと充実させてくださいな。
「ギター? ギターとは何でしょうか?」
ギターってのは、こう弦を張った木製で中に空洞がある……ああ、ファンタジー的にはリュートの方がいいか。
じゃ、お試しでリュートでも作ってみようかね。イメージすればイケるはず、イケ………………リュートってどんなんだっけ?
と、イメージを固定化するために絵として紙に書き出したり、実際に木を弄ってみたり、紆余曲折を経てなんとかそれっぽいのが出来た。けど、リュートってヘッド部分が中折れ式だったはずだが、私にそんな知識はねぇ! ので、ギターっぽく真っ直ぐヘッド。今の世界、理解できないもんを作るのは神でも難易度が高いんだよ。
洋梨を真っ二つに切った形の丸いボディ、その中央に空洞、そして弦は8本、ナット式なので調律もできるよ! 私の世界では古楽器の一種だが、この世界では未来レベルの楽器だな。
……しかし、なんか違う。これってリュートの形しただけのギターじゃね? というか、今気がついたけどこれマンドリン……。
ま、まあいっか。弾ければいいんだよ、弾ければ。
で、その完成品を適当に爪弾けば、あらま貧相な音……おいおい、音量が足りんぞ。まあ適当に作ったから当然といえば当然か……。
これはあれだ、便利な奇跡で解決しよう。音量拡大する力を楽器に籠めてから弾けば、マシにはなった。ギターには程遠い音色だが……いや、だからこれリュートだって! 後ろに「?」が付くかもしれんけど!
で、そのリュート? が劣化しないよう保護を掛けてから、土の神に「彼へ教えてあげなさい」って渡したんだけども。
「あの、ルドラ神よ……これの使い方がわからないんですが」
えぇ~わかんねーの? こう、神様的な理解力でぱっぱっとマスターしてくれよな。そういう能力つけたでしょ?
「いえ、理解はできるのですが、これはまだ世界には浸水していない技術です。故に最初から理解の範疇外なのです……」
ああ、はいはい、世に出てない概念は理解出来ないか。そういえばそうだったな。この世界の神では新しい概念を生み出すことは難しいってことかね。
じゃ、どうしよう?
結論は一つ、私が教えてやらなきゃいかんってこった。わぁ面倒くさ。
しかし、まあせっかく作ったんだ。ここで捨てるのもなんか勿体ないし、仕方がないから私がじきじきに教えに行ってあげようかね。
「あ、ありがとうございます、ルドラ神……! このご恩は忘れません!」
いいよ、君はティニマの子だし。ヴァーベルの子より礼儀正しいから、特別に手伝ってあげるよ。
ってなわけで、私は仕舞いっぱなしだった美人の天使人形を取り出し、それを受肉させる。そして人形に演奏能力を付与しておこうか。それから歌唱能力も。才能が自由にカスタマイズできるのが神さまのいいところ。苦労せずにスキルマスターできるんだぜ。
そして、天使人形に入り込んで、操ってみる。
むむ、ちょっと違和感があるが、まぁ遜色ないか。楽器を弾く程度なら軽い軽い。
そんじゃ、ちょっくら下界にまで行こうかね
……え、約束はどうしたって?
だってこれ土の神の頼みだしぃ? 私の本体じゃないしぃ? ノーカンノーカン、モーマンタイ。
※※※
【その日、私はこれ以上もないほどに悲観し、打ち拉がれていた。
天族の都市で行われる歌唱祭に参加するために天族の都市へとやってきたのだが、聴衆からの反応がかなり悪かったのだ。曰く、重奏もできない時代遅れな技術じゃ優勝なんて夢のまた夢だ、と。私は自分には歌唱の才能があると思っていたし、歌に関して故郷や街でも非常に良い反応が返っていたので、そう確信していた。
だが、歌が良いことと、天族の言う技法に叶った歌唱というものには、大きな隔たりがあったようだ。彼らの中では、一人で重奏や輪唱ができるのは出来て当然の技術だったのだ。それらを体得していない私は、彼らの中では半人前ということだ、と。
これには私も頭を抱えた。農民として生まれ、貧しさから脱却するために大会で優勝し、どこかのお抱え詩人にでもなって親を楽にさせてやりたい、と唯一の自慢である歌を磨いたのだが、それすら通用しなかったのだから。
もはやこれまで、諦めて故郷へ帰って農業でも継ぐべきか、と思い悩んでいたとき。
……その夜、私は宿で不思議な音を聞いた。竪琴に似た音だが、優しさを重点にしているそれとはずっと違う、どこか明るい弦の音色。その不思議な調べに導かれるように、私は宿を出て音の出処を探してしまった。
そして、見つけたのだ。
裏路地を通った先にある、小さな噴水広場。旧道では広場だったのだろうが、新しい大通りが出来てからというもの、誰も使わなくなった寂れた場所だ。
その噴水に腰掛け、月明かりに照らされながら、一人の麗人が座っていたのだ。
彼……彼女? は、酷く美しい容貌をしていた。長い金糸の髪は月明かりに映え、白磁の相貌は濃い陰影に覆われていた。抱いている楽器は見たことのない代物で、まるで果物を真っ二つに割ったような代物。それの弦を爪弾けば、ピンと張ったような高くも穏やかな音色が紡がれるのだ。その音色に、私は思わず夢中になった。
私は、気づけばその人物の前に飛び出て、膝を着いて教えを請うていた。
この楽器の音色は、今まで聞いたこともない素晴らしい代物で、またその人物の歌う詩吟は聞いたこともない音色だった。当時、詩吟や歌唱はあくまで声が主役であり、楽器とはただの添え物でしか無かった。
だが、この人の歌は違う。楽器の音色を主役に引き立たせながら、それでいて歌も邪魔にならないような音程で奏でられ、その相乗はまさにハーモニーという言葉がぴったりであった。そう、ハーモニー。その人物が呟いた言葉だった。
その人は、名を名乗らなかった。ただ、私に歌とは何か? と問いかけてきたのだ。
それへ、私は咄嗟に「人生での彩りだ」と答えていた。
その人は頷き、こう言ったのだ。
「そう、人生に於いて、音とは楽しみの一つだ。音楽とは皆が、演者も含めて楽しむ代物。皆と踊り、歌い、笑いあいながら、良き時を過ごすための手段。決して、出世欲や承認されるためだけの道具ではない。それを、忘れぬようにな」
そして、その人物は私にその楽器を手渡してきたのだ。私は夢見心地でそれを受け取り、その楽器を見つめていた。リュート、とその人は言った。それがその楽器の名だったのだ。
我に返った私が顔を上げると、そこにはもう誰もおらず、数枚の白い羽だけが空から舞ってきていた。天族なのかと思ったが、その人物の肌は白かった。天族では無いのかも知れない、と私は茫洋と思った。
私は、その楽器を託されたのだ、と察してから、一晩中そこで楽器を爪弾いていた。竪琴とはまったく違う、酷く扱いにくい代物だったが、それでも上手く扱えた時の感慨も一入であった。そして、あの人物が弾いていたような手法を思い出しつつ、見よう見まねで大会当日まで、ずっと練習を重ねていた。
そして、私は大会で特別賞を授与された。優勝ではなかったが、その画期的な楽器やまったく新しい歌唱法は大いに評価され、混迷を極めた大会審査員の中では外道ではあるが評価に値する、という事で特別賞となった。正直、私が天族だったら優勝を勝ち得たのではないか、と思わなくもないが、まあ世の中そんなものだ。
私はその腕前を再評価され、賞金と共に意気揚々と故郷へ凱旋した。家族は大きく驚きながらも私を迎え入れてくれた。そして後日、私の歌の評判を聞いた人物が尋ねてきて、共にその音楽を広めてみないか? と誘われたのだ。正直、種族で大きく評価法が変わる天族の基準にはウンザリしていたので、私は一にも二にも無くその提案に乗り、その尋ねてきた人物、後の相棒となるキュレスタと共に、リュートという楽器を世界に広め、音楽の楽しさを人々に伝えることにした。
今でこそ偉大なる詩人などと言われているが、しかし私は思うのだ。あの美しい翼の人と出会わねば、私は一生をただの農夫として終えていただろう。今のように称賛され、本を書くような栄誉には出会えなかったに違いない。あの出会いは、私の人生でもっとも尊く、もっとも偉大な出会いだったのだ。
あの人が誰だったのかは、未だにわからない。神だったもかもしれないと思うが、私の魂は、それよりもっと高貴な存在であったと告げている。その勘を信じるならば、あの方はいと高き原初の…………まあ、ただの妄想であるが。
伝説の「吟遊詩人トゥーセルカの自伝」より】
【リュートと呼ばれる楽器は、実に様々な多様性に富んでいる。この楽器が始めて世に出たのは今から約1500年ほど前だが、それ以来、様々な改良を施された亜種の楽器が世界各地で作られはじめ、その種類は枚挙に遑がないほどだ。リュートと呼ばれる楽器は、現代の音楽文化への大きな貢献とも言える発明であったのは違いがないだろう。
このリュートだが、これを始めて奏でたのは、伝説ともなっている古代の吟遊詩人トゥーセルカであった。彼は翼種の地族出身で、黄色の羽毛の翼を持つ美しい男性だった。彼が始めて世に出たのは、天族が行った祝日祭でのイベント、歌唱祭に出場した時である。彼はその時、このリュートを携えて披露したという。
この時代、音楽文化はまだまだ発展途上であった。古来より、儀式の際に抑揚をつけて唱えられる呪文や祝詞へ情動を付帯して発する音が広まり、現在の声楽の源流となった。そこに手拍子や打楽器・器楽が入ることで音楽の幅が広まったのだが、その用途は害獣や獣避け、天災よけとしての呪術的要素が殆どであったという。歌や言葉に力があるというのは古くからの考え方で、魔法という存在がそれの後押しをしていたのだ。
そして時代を下り、天族は歌という主旋律を加え、そこに芸術性を見出すに至った。鼻歌程度ならばどこの民族にも存在していたが、明確な文化として擁立したのは翼種が始めてであろうか。
さて、当時の音楽の主流は、主に器楽で伴奏をつけた程度の歌唱が主であった。その伴奏もさして優れた代物とは言えず、また当時の楽譜も五線譜ではなく文字譜であり、そもそも楽譜が存在しないケースの方が多かったのだ。ハープの音を重ねてそれっぽく掻き鳴らしただけの音と、しっかりとした和音を奏でる伴奏では、天と地ほども違うのは明らかだ。
そんな時代、始めてしっかりとした「伴奏」を用いて演奏を行ったのが、トゥーセルカなのだ。彼が用いた新しい音楽に当時の人々は強い感銘を受けたと言われている。が、彼は当時の記録では優勝を逃していたようだ。おそらく、彼の出身が問題だったのだろう。当時の天族と地族は決して良好な関係とは言えなかったからだ。
このトゥーセルカが用いた音楽技法は、魔法の補助で成り立っていた天族の音楽文化に強い衝撃を与えたらしい。魔法を使わずとも、そこまで素晴らしい演奏ができるということに、魔法を至上主義にしていた彼らの価値観を揺るがす大事件であったのは、想像に難くない。そして、トゥーセルカが旅に出て世界中を巡り、リュート音楽を広めていくにつれ、その風潮は徐々に明るみになっていった。リュートを真似た楽器が多数溢れ出たのも、それが理由なのだろう。
しかし、現代まで残されているトゥーセルカのリュートに関して、不思議な部分が多い。弦は羊腸を用いられた代物ではなく、その工法は謎めいている。弦楽器に於いて弦はもっとも重要な部分であり、これの質如何によって音が大きく変わるのだが、トゥーセルカの弦は素晴らしく細く、固く、しなやかな音を出すのだ。ガットによく似ているが全く別種のこれが何なのか、未だに解明されていない。
このリュートを鑑定したエーティバルト氏曰く、「これは神の技法によるものだ」との感想を漏らしていたという。もしも、トゥーセルカの自伝に出た麗人が神であったとしたのならば、このリュートは神が与え給うたオーパーツと称しても、過言ではないのかもしれない。
リトス・ミューズ著「古代のオーパーツ」より】




