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【4日目 覚書1】
『覚書』は箸休め回となります。
毎日そんなに事件が起きるわけじゃない。書くべきことがない日だってあるよね。
書くべきではない日も。
処刑された一家の話を聞いた。
あの日に手綱を握っていた御者の、その家族だった。
領主の息子を危険に晒したのだから、連座は当然の結果だろうと囁かれていた。
異端憑きになって殺されたことは広まっていなかった。隠すべき対象らしい。
食事の時に、父親とした会話を思い出す。
事故は誰の責任だとか、誰に罰を与えるだとか、そういう話はしていただろうか?
……していなかったように思う。そういう話題が出たら、警戒したはずだ。
実際、処刑は俺が寝込んでいる間に行われている。当事者の俺にすら、事後報告で良いほど、普通の対応ということ。
だから、そう。
俺のせいじゃ、ない。今はまだ。少なくとも――
「――そんなことしか、考えられないのか?」
…………………やめよう。
深く追求するな。
このことは、最低限の記録にだけ留めておく。
自傷してる暇はない。
痛覚を鈍らせろ。
今はただ、生き残るために。