表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/6

1-4 カイルの力

 

「カイル様…どうされました? 何か調べものでも…」

「ギル、ヨハン病知っているか?」


 私はあの青年と別れた後、古城の地下にある書庫へと向かっていた。目的はただ一つ、ヨハン病を調べるためだ。以前、書庫を訪れた際、ヨハン病について書かれた本を手に取った記憶がる。


「はい、存じております」

「その病気を治す治療法は無いのか?」

「カイル様…まさか…」

「ああ、そのまさかだ…お前の報告通り、ズウースの青年はヨハン病を患っている…」



 ボロボロになった背表紙に『ヨハン病』と書かれたものを見つけ、慎重に取り出す。古書独特の香りを感じながら、埃を払う。ここの書庫は私がまだ人間と繋がりがあった頃、趣味で集めていたものが置いてある。何百年前のものもあり、人間界では高く値がつく古書もここに保管されている。ここには、ヨハン病について書かれた書籍は多く揃っているはずだ。この病は、私達吸血鬼にも深く関わる病だからな。


「…くそっ…何一つ載っていない」

「あの青年を…治すおつもりなのですね」

「そうだ…あの青年には洋菓子店を継いでもらわなければならない、あのまま閉店となって

 は困るからな」

「ふっ…すっかりズウースを気に入られて」

「ああ、お前に連れられ沢山の店を周ったが、やはりあそこが一番だ」

「ですが…カイル様…ヨハン病は治らない病気なのです」


 そう、私の努力は無駄だと自分が一番理解している、この行為は無意味だ。しかし、私の気が済まないのだ。ヨハン病に関する本に全て目を通し、私は部屋へ戻った。これで良かったのだ、彼を救うことは出来ず、あの洋菓子店は数十年後に消えて無くなるだろう。ヨハン病は不治の病だからな。


「お疲れでしょう、さあ」


 テーブルの上には、いつもと同じ香りの珈琲と、「ズウース」の菓子がすでに用意されてあった。ズウースのケーキは素晴らしい。何度食べても飽きない味だ。


「カイル様、一つ私に考えがあるのですが」

「なんだ、言ってみろ」

「ヨハン病を治すのではなく、消滅させるのはいかがでしょうか」

「何を言っている、そのようなことが出来たら既に実行している」

「可能ではありませんか…カイル様のお力をお使いになれば…」

「……私の力は不幸になる者を増やすだけだ」

「しかし、現時点でその方法が一番有力かと…」

「いいや、ダメだ…その力はリスクが高い」

「上手くいけば、ここでこのケーキを一生食べられるかもしれませんよ?」


 確かにあの青年を助ける方法はある、しかし、それはヴァンパイアの私だからこそ出来ることだ。あまり人間に使用するのは気が進まない。



「お前…ヨハン病だったな」


 私はまだ、この提案を懐疑している。私のこの力は、本当に少年のためになるのだろうか。


「はい、そうですが」

「その病治したいか?」

「はい、もう諦めていますが…」

「私なら、お前をその病から解放出来ると言えば…信じるか?」

「は…? 何を…」

「信じるのか? 信じないのか?」

「信じるわけないじゃないですか! 散々治らない、不治だって言われ続けてきたのに!」

「そうだな…」

「一体貴方誰なんですか!? 何で僕に構ってくるんですか!?」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ