夕食で敗北
軽く自己紹介を終えて今は夕食の時間だ。
森を彷徨い歩いていたから腹が減ってもう限界寸前だったからありがたいな。
食事のメインはパンで、それと肉と野菜の炒め物っぽいものと、野菜のあったかいスープだ。これだけ聞くと普通だが量が尋常じゃない。皿が大きいし具も大きい、いかに俺が空腹でも所詮は少女の体だからね。食べきれないだろうなぁ。
「これ全部食べるのは厳しいと思うんだが残すのはまずかったりするか?」
小声で隣に座るフレアに聞く。小声なのは台所らしきところに出迎えてくれたおばさんがいるからだ。
違う国に来たみたいな感じから、思わず取った行動がまずかったりする可能性があるから、フレアさんに確認をとる。
食事を残すってことは失礼になることがありそうだからね。
「ああ、ここの宿は冒険者専用みたいな感じだからね、実際は違うんだけどよく来るのは冒険者ばかりだからご飯の量が多いのよ。だからクリューちゃんは残しても仕方ないわ。余ったらわたしが食べてあげるから」
…そんなことを簡単に言うが、めちゃくちゃ量が多いんだよな、本当に大丈夫なのだろうか。
俺のは少ない(俺の判断では大盛り)けどフレアの方は大盛り(俺の判断では特盛)だぞ、あれだけ食うって冒険者って凄まじいなぁ。
って違う違うそこじゃない。いや俺の余り分を食べるってアカンよ、アカン。同姓なら問題ないかもしれないけど、俺は一応は男だからマズイよな。
今この瞬間は大丈夫だろうけど、男だとばらしたときに大変なことになるな。
残したらまずいから腹くくって戦うか山盛りの夕飯と。
「はぐ、はふ。むぐむぐ。おいしいです」
こちらの様子を心配そうにみているおばさんにそう言い、微笑む。もちろんこれは保険だ。何も言わずに夕飯を残すのは申し訳ないからね。
いや、なにが保険だ! 残すこと前提で考えてどうするだ! たかが夕食程度でつまずいていたら元の体を取り戻すことなんてできないだろ。全部食って男を見せてやるわ!!!
無理でした。
ああ、侮ってたよ少女の体。
もう食べれないんじゃないんだ。もう動けないんだ。食べる以前に腕が上がらねぇんだ。
ちらりと皿を見るが、半分ほど残ってる…志半ばで無念。
みかねたフレアが、当然のように残りを持っていくが止められない。体が動かねぇ。
それでも必死に腕を伸ばして止めようとするが、苦笑いするだけで動きは止めず。
そしてあっという間に完食して見せた。顔から血の気が引けるがどうしようもない。いつかくるその時にむけて謝罪の練習をしないとな。
夕食も食べ終え2階へと戻る。
ちなみに一歩も動けないため背負われている。
部屋のベットに割れ物を扱うように下ろされて若干思うこともあるがスルーして、これからのことを考える。
現状宿にいるけどお金がないからマズイんだよなぁ。それと服の問題もあるし、いつまでもドレスは勘弁だ。せめて一般人が着てる例のTHE・布の服が欲しい、欲を言えば3着ぐらい。もっと欲を言うなら男物で。
それと借りているこの自動翻訳式ネックレスだ。
これ見た目はとても高そうだけど、これは生活するうえで絶対に必要だろう。
今は流れで借りれているが今後のために是非買いたいからね。
これらのことの問題は結局「金がない」この一言に尽きる。
これはどうにかして金を稼がないといけないな。