へ?
野宿を賭けた運命のジェスチャーに見事勝利してなんとか街に案内してもらえることになったが、道中にアクシデントは起こるのは運がないからなのか。
…………体奪われてる時点で運はないのだろうけど。
「---------(クレセントボアね)」
何かをつぶやいた彼女の先にいるのは、月のような白さの肌に大きな体をもつ巨大なヘビだ
あきらかに友好的な顔ではないので回避するのかなと思っていたら、彼女は剣を引き抜き、一閃。一撃で真っ二つにして見せた。
無茶苦茶かっこいいな!!! 正直に話すなら、彼女は絶対戦闘は苦手だと思っていた、隣で微笑みながら案内してくれている姿から戦う様子が想像できなかったからな。
申し訳ないなと心の中で謝る。
ヘビを倒した後は順調な道のりで、そこそこ歩いた段階で森を抜けて、平原に出て夕暮れには街についた。
街を見た感じの一言は大きい、街を囲む壁も大きい、見張っている衛兵らしき人も大きい。
さっきの蛇といい、大きいのがデフォルト仕様なのかねこの異世界は。
ちなみに、もう察しているよ。
あからさまに見たことのない街だからここは完全に異世界なんだってことに。
衛兵さんと彼女が少し会話してから、街にはすんなり入れた。これ多分一人でここにきてたら追い出されたんだろうな、そんなことを思いながら心の中で感謝する。
言葉が通じないから、ありがとうすら伝えられないことに、もどかしさを感じつつ。
街まで案内をしてもらったから、ここでお別れなのかと思っていたが、どうやら彼女はどこかに俺を連れていこうとしているみたいだ。どうせ行く当てもないから彼女のあとをついていく。
街を歩くついでに周りを見てみるか。
建物はどうやら中世ヨーロッパのような感じみたいだな、周りを見渡すと、教会のような建物や、いかにも貴族が住んでいるような建物などが見える。
道行く人たちの容姿は、いろいろな髪の色をしていたり、尻尾があり、耳がケモノのような人たちもいるみたいだ。おそらく獣人って言われる人たちだろうな。
尻尾がモフモフしてて可愛いな。
余程変な表情をしていたのか、彼女に訝しげな表情をされる。
…………少し反省だな。
周りの人たちの服装は大体布でできているものが基本みたいで、鎧を着てたり、皮っぽい装備を着ている人もいるみたいだ。
剣や弓を持っている人もいるみたいだけど、あれはやはり冒険者なのだろうか?
もしそうなら俺もなりたいなって思う、冒険者はロマンだからな。
………それにしても、なんか見られてるような感じがするんだよな。
おそらく黒いドレスを着ているからだろうなと思うから、早く着替えたいな。男物の服をこの体でも着ることが出来たらいいけど、なんか嫌な予感しかしないんだよな。
そんなことを考えていたら、どうやら目当ての場所についたみたいだ。
ここは宿みたいだけど、彼女が中に入っていったからあわてて俺も後ろをついていく。
「---------(あら、フレアさんね、おかえりなさい、今日も泊まっていかれるのかしら?)
「---------(ええお願い、それともう一人分部屋は空いているかしら? 空いていないなら私と相部屋でもいいから、この子を泊めてもらえるかしら)」
「---------(ごめんなさい、今日はフレアさんの分だけしか残っていないから、相部屋なら大丈夫よ、それでその子の分も夕食を用意したほうがいいのかしら?)
「------(ええ、お願いするわ)」
中に入ると40代ぐらいの恰幅のいいおばさんがでてきて、彼女と何かを話しているみたいだ。一瞬こっちを見たようだが、なにを会話しているのかわからないからどうすることもできない。
っと、どうやら2階に向かうみたいだから、おばさんにぺこりとお辞儀をしてから、後ろについていく。
会話もせずに通るのも気が引けるからと、お辞儀をしたんだが、おばさんはなぜかほっこりした表情をしていた…なんだったんだろうか。
2階の部屋に入ると部屋に置いてあったバックらしきものから小さいネックレスを取り出して、彼女が俺の首にかけてきた。
「これで言葉が通じるかしら?」
「へ?」
初めての会話でこのセリフはないなと後で後悔したのは言うまでもないだろう。