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迷子の少女

 「困ったね 非常に困っちゃったね」

いまさっき目を覚ましたけど、目の前には例の美少女の姿はもう無く、残されたのは一枚の紙きれ。

肝心の中身はよくわからない文字で埋め尽くされていて読めないから意味のない紙なんだけど、一応捨てないで持っておく。


 「あれ声が、嘘…………だよな」

自分の声が先ほどの美少女の声にとても似てる。

理解したくはないけど身長も縮んだように感じる。

嫌な予感がするので自分の姿を確認した。

―――俺はいつもの寝間着を着ているはずなのに、黒色の見覚えのあるドレスを着ていた。

慌てて近くの湖で顔を確認する。

濁って確認できないオチとかはなく、すんなり確認できた。

そこには少しだけやつれた表情をした例の美少女の姿が映っていた。


 「黒のドレスに長い金髪、そしてまな板ボディ、入れ替わってるみたいだね」

自分の姿は間違いなく例の美少女になっているようだ。

 

これからどうしよう……………………

あの少女の言うことが正しいならここは異世界ってことになる。

まだ状況を飲み込めてはいないけど、とりあえずここでジッとしてても(らち)が明かない。

周りを少し調べてみよう、何かあの少女(自分の体の正しい持ち主)についてのことがわかる物があるといいんだけど。


 「……何にもないな、いきなりこんな状態で捨て置きやがって、まったくあの少女はいったい何を考えているんだかな」

普通なんの特徴もない男の体なんて奪うもんなのかねぇ。

ましてや相手は美少女だからな、体を奪い取るメリットなんてないだろう。

ただ一つだけ気になることが意識を失う直前に残した言葉「自由になれない」とかなんとか言ってたような気がする、何か訳ありなのだろうか…

まぁ、こんなとこで考え込んでも仕方ないから直接聞くしかないだろう、例の少女に。

居場所わからんけど。


 とりあえずこの森の中を探索するか。

人里を見つけられたら御の字だが、獣とかに出くわしたらどうしようか、まぁ出たとこ勝負でいくか。

 

 



 「おなか減ったなぁ~、なにも進展ないし、むしろ日が傾き始めているし、やばいなこれ、動物の姿はちらほら見えるが、捕まえて食べるわけにもいかないし、てか多分捕まえられないし、のど乾いたけど泉はもう見えないし、これは探索したのは悪手だったか」


 「----------?」

そんなことつぶやいていたら、いきなり声を後ろからかけられた。

慌てて後ろを振り向くと、皮でできているであろう装備をした女性が剣を携えてこちらを見ていた。

雰囲気的になにかを質問しているみたいだが、言葉がわからない、無視するわけにはいかないが、おそらく自分の言葉も通じないだろう。


 「------------、--------、--------?」


 「ごめんなさい、言葉がわからないです」

長く考えてたせいか、女性はもう一度なにかを質問しているみたいだが、やはりわからない。咄嗟に日本語で答えてしまったが、やはり相手も言葉がわかっていないみたいで、首をかしげている。

相手の姿は18歳ぐらいの女性で、赤色の髪のロングにルビーのような赤い瞳が特徴の美少女だ。体が小さくなっているせいで見上げるような形なのが結構ショックだ。

いやいや、まてまて、のんびり美少女ウォッチングなんてしている場合じゃない。会話を成功させないと野宿は逃れられないから、意地でも街の場所は聞かないと。

言葉が通じないから、ジェスチャーで会話を成功させてやる。ジェスチャーなんて恥ずかしいけど野宿は絶対に嫌だからな!!!


 <<????side>>

 

 「セイレーンの泉の調査?」


 「ああ、なんでもそこに不審人物の目撃情報が届いてな、そこでお前さんに調査をお願いしたいわけだ」

そうお願いするこの目の前の男は、ここエルドハイドの街のギルドマスターね。


 「でも、その程度の依頼で私は過剰戦力じゃないかしら?」

私はこれでもSランク冒険者の一角だからだだの調査に派遣されることはないと思うけれど。


 「どうやら不審人物は相当な魔術の手練れらしい。

見たこともないぐらい巨大な魔方陣を用意していると聞き、調査に向かったが、なにも後がなかった。だが巧妙に隠してはいるが、そこに人が住んでいる後があると報告されてな。まだ確証はないが嫌な予感がする、だからきみに調査に出てもらいたい。どうだ?」

手練れの魔術師ほど恐ろしいものはない、見たこともない魔法をいきなり打たれては、ベテランでも死ぬ可能性があるだろう。

 

 「わかったわ、調査の依頼は受けることにするわ」


 「そうか、ありがとう。だが気を付けろ、なんか嫌な感じがするからな、準備はしっかりしていってくれ」

 

 余程に事が大きいのか、いつもうるさいぐらいの声で話すギルマスは、真剣な表情で伝えてきた。




 それが私がこの森にいる理由なんだけど、見るからに怪しい少女がいたから後ろをつけてたけど、これは…………完全に迷子ね。

少女が周りを警戒しながら探索してる姿はかわいい、とってもかわいい。あ、(ころ)んだ。さすがにあんまりだから声をかけようかしら。

聞いたことのない言葉でなにかをつぶやいてるみたいだけど。


 「こんな森で何をしているの?」

後ろから声をかけてみた。


 「!!!」

少女はビックリしているみたいで飛び跳ねるように振り向いた。かわいい、小動物みたいでとても愛くるしい。不審人物の可能性は0ね。かわいいは正義だから。間違いないわ。

でも隠れて移動したわけじゃないのに後ろにいる人の気配も感じ取れていないということだよね。

そんな子がこんな人里離れた森にいるのが少しだけ不可解だった。

 

 私が聞いた質問は当たり障りのないことだから、すぐに答えが返ってくると思ったけど、少女は困惑したような、迷っているような表情で固まってしまった。

日が暮れてしまうと面倒ね、早めに街に帰りたいから、ここはもう一度聞いてみようかしら。


 「もうそろそろ日が暮れてしまうわ、そんなドレスじゃ森を歩くのは大変でしょう、街に帰らないの?」

 

 「---------」

少女はなにか言葉を放ったが、聞いたことがない言語だった。

これまで色々な土地を旅したけど、どこにも似たような言葉がないわ。

おそらくこちらの言葉も通じていないのだろう。少女は申し訳なさそうにしているから。

しかしこうなるならフィニアについてきてもらえばよかったわね、あいつがいたら翻訳魔法ですぐに解決できるのだけど。

そう考えてたら少女は身振り手振りでなにかを伝えようとしてきた。

正直に言うなら萌死んでしまうかと思ったわ、必死な表情で伝えようとしているけど、自信がないからか、もじもじしているのがたまらないわ。

可愛い所はひとまず置いておいて、この子は街を探しているみたいなので街まで案内することになったわ。


 

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