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第81話:副団長を決めよう

「さて、君達三人に残ってもらったのはお茶会をするためとかではなく、ちょっと話し合ってほしいことがあるんだよ」


「なんだそれ? 俺はなにも聞いてないぞ」


「まだティア以外には言ってないんだから当たり前だろうが。この脳筋」


というのもアベルは基本事務仕事系はやらずに体を動かす系の仕事ばかりをやっているのだ。まあ一日の半分を自由に過ごしているティアに比べればマシだけど。


「失礼な奴じゃのう。一日の殆どをお主と一緒に行動してやっておるどころか、時間が合えばお昼も作ってやっておろうに」


「それはここでお前に膝枕されたまま寝落ちした日だけな。あとは何時も傍にいたりいなかったりだろうが」


「なんじゃ、実は寂しかったのかの? 少なくとも今日はお主が起きるまでこうしててやるから安心してよいぞ」


「誰がいつそんなことを言ったよ。勝手に人の気持ちを捏造するな。それよりも話の続きだ」


そう言うとアベルは俺達のことをちゃんと覚えてたのか、みたいな顔をしながら


「んで、話ってなんだよ。お前がほぼ毎日師匠に膝枕されていることの口止めか? この三人は仕事の関係もあって姫様達と結構仲がいいからな。ぶっははははは」


「どうせティアは俺のことを弟か子供くらいにしか思ってないんだから、これがバレたところで別に何にも言われねえよ。その証拠にリアにこいつと二週間毎日同じベッドで寝てたってバレてもそっち方面では何も言われなかったし」


「ふ~ん……。じゃあなんの話なんだよ」


今のアベルの納得いってないような顔が少し気になるが…まっ、いいか。


「今月から騎士団に新しい人が何人か入るかもしれないのはお前も知ってるだろ? だからそろそろ副団長を決めようと思ってな。三人の中から誰かがなってくれないかな~と」


「別に能力的には三人の誰が副団長なっても全く問題はないけど、警備部のこいつらは基本戦場には連れていく気はないんだが。そんなのを副団長にしてもな」


「戦場での副団長はティアがいるから何の問題もねえだろ。それに俺は戦場どうこうじゃなく、女の子が副団長としていることで女性側の意見も言いやすくするのが狙いだから部署は関係ないぞ」


「なるほどね~。でも警備部の奴が副団長だと納得いかない奴も出てくるんじゃねえか? 今はあれだけど、今後は女で実戦部隊に入る奴がいるかもしれないんだし」


「そうそう、言い忘れておったがの、こやつら三人はちゃんと戦場だろうとどこだろうと連れて行くから問題ないぞ」


「ああ゛⁉ そんなの聞いてな…うっ、ヴッヘェ―――」


痛ってえぇ。


(部下の前では絶対に弱っておるところを見せるなと教えたじゃろ。そのままもう少し我慢しておれ)


「そんな三人揃って心配そうな顔をするでない。ちとこの馬鹿が治療中じゃというのに大声を出しおったから傷口が開いただけじゃ」


「……はぁ、…はぁ、はぁ……。おい、三人を戦場に連れて行くってどういう…ことだよ?」


「どういうこともなにも、こやつら三人は騎士としてもかなり優秀じゃからというだけじゃ」


「あ~、もうそれでいいよ。んで、誰かいないか?」


「はいはいは~い! 僕はリサがいいと思うな」


「私もリサさんを推薦したいと思います」


「えっ? えっ⁉ なんで私⁉」


う~ん、別に自分がやりたくないからリサに押し付けてるとかではなさそうだけど……。


「ふむ、わらわもリサでよいと思うぞ」


「まあ普段はこんなんでも、やる時は結構やるしいいんじゃないか」


毎日騎士団の教育をしているティアと、団長のアベルがそこまで言うか。


「もし駄目だったら俺達の誰かに相談してくれればいいから、取りあえず副団長になってみないか、リサ」


「……陛下がそう言うのでしたらやって…みようかな?」


「なんで疑問形? というか僕達がリサを推薦した時はあんなに嫌そうな顔をしてたのに、今は満更でもなさそうな顔をしてるし」


「リサさんの大好きなソウジ様ご本人からお願いされたのですから、仕方ありませんわね」


そう言われたリサは凄い勢いで顔を赤くし、両手を胸の前で振りながら否定し始めたので落ち着くまで放っておこうかと思った瞬間


(言っておくがリサの好きはloveじゃのうてlikeじゃから勘違いするでないぞ)


(そんなこと言われなくても分かってるし、別に上司として嫌われてなければなんでもいい)


てかユリーの口調がお嬢様口調なんだけど、実はどこかの貴族とか言うなよ。


(あれほど騎士団全員分の資料に目を通しておくよう言ったじゃろうに。ユリーはこの国の元お嬢様じゃぞ。まあ親の方針と自分の考えが合わなかった挙句、破門という形で騎士団に放り込まれたようじゃがの)


(もしかして、ユリーの親って……)


(二人ともお主が殺したの。本人的には感謝しておるようじゃが)


(そもそも親と揉めた原因はなんだ? というか元とはいえこの国のお嬢様が騎士団なんかで仕事をしてて大丈夫なのか? 国民から嫌われてたりしないよな?)


(揉めた原因はこの国の王族、貴族の国民に対する態度。そして例に漏れずユリーの親も多くの犠牲を出すことによって甘い蜜を吸っておったようでのう。それが気に食わんかったようで、自分達の手でそういった屑共を排除、新しい国を作るべきじゃと何度も言っておるうちに……という感じらしいぞ)


ふ~ん、意外と真面な奴もいたんだな。それで騎士団に飛ばされた意味は分からんけど。


(わらわが面倒を見るまでは本当にこやつら騎士団の人間かと疑う程のレベルじゃったからのう。もしこの国が戦争でも起こしておれば間違いなく全滅しておったぞ。まあお主が殺しおった元団長や、一部の者達は結構使えるがの。そこの三人とか)


(なるほどね~。自分達にとって邪魔な存在が他の国に行って脅威となられるよりもあえて見える範囲に、しかも一番死ぬ確率の高い場所に送ることによって安心と。頭いいな、おい)


(残念ながらユリー自身の実力が高過ぎてお主が期待しておるような、ㇰっ殺展開はなかったようじゃがの……。冗談じゃ、冗談。そんなに怖い顔をするでない)


(んで、国民との関係は? 少なくともユリーとしては仲良くしようとしてる感じがあるけど、破門されたとはいえ一時期は自分達を苦しめて得た金で良い生活をしていたんだからそう簡単には納得いかんだろ)


(これに関しては本人の日頃の行いが出た感じじゃな。お主がこの国を乗っ取るずっと前から国民の味方として動いておったようでのう、評判だけなら今のお主よりも高いようじゃぞ)


(そのうち俺が国王になることに納得していない人達がユリー派とか組んでデモとかやりださないよな? こっちの後ろ盾はマリノ王国だけだぞ)


「マリノ王国が後ろ盾になってくださるだけでも十分過ぎますわよ。それに、普通の国民なら少なくとも今のソウジ様に文句を言うなどあり得ないですし、私の支持者というか…仲良くさせていただいている方々は普通の国民だけですので元からユリー派などというものはありませんわ」


……えっ?


「まったく、わらわ達の念話を聞かせてやる代わりに黙っておれと言ったじゃろうに」


「奥様とは仲良くさせていただいておりますのでよくソウジ様のことを聞いてはおりましたが、本当にここまでお優しい方だとは思いませんでしたので。そんな方を不安にさせるのは申し訳ないと思い…つい」


ミリーはまだリサで遊んでるところを見るに念話を繋げていたのはユリーだけか。まあ最悪アベルにも聞かれてた可能性もあるがそれはどうでもいい。それよりもだ


「おい待て。まずは誰が奥様か教えろ、そして今すぐ呼び方をミナに修正しろ」


「教えろと言っておきながら誰かをちゃんと分かっておられるじゃないですか。それに好きな殿方の奥様になるのは女の子全員の夢ですわよ。そして私達には絶対に叶えることのできなかった夢」


「その理論でいくと少なくとも奥様と呼ばなきゃいけないのがあと二人いることになるんだが、今後俺はどうやって誰の話をしてるかを判断すりゃーいいんだ?」


他の国はどうか知らないが俺のお嫁さんに関しては他国のお姫様だろうとメイドだろうと元お姫様だろうと全員正妻だと思ってるし、相手が誰であっても側室だの愛人だのと言わせる気はない。


「お主は相変わらず考え方が変わっておるのう。一夫多妻で正妻と側室の二つがあるのは嫌がらせでもなんでもないし、本人達はそれを承知で嫁入りする者も珍しくないというのに」


「これはミナさんの負けですわね。まああの方は仕方なくという感じでしたが」


どういうことか気になったのと、まだミリーがリサで遊んでいるので暇つぶしも兼ねて話を聞いてみると


ミナ・リア・セリアの三人とユリーで雑談をしていた際になんて呼べばいいのかという話になり、普通ならミナを奥様と呼び、残りの二人は様付けにするのだが、俺がそんなことを許すはずがないということで賭けが行われていたらしい。


それで賭けの内容としてはユリーがミナのことを奥様と呼ぶことに対して俺が何も言わなければずっとそれで通すことを他の二人が許す代わりに、もし訂正するように言われたら全員名前呼びにすることというものらしい。


「賭けの内容だけ聞いたらミナが嫌な奴みたいに聞こえるな」


「ミナさんがそんな方ではないということはソウジ様が一番分かってらっしゃるでしょうけど、これをネタに意地悪したりしてはいけんませんわよ」


「はいはい」


そんな話をしているうちに他の二人も落ち着いたようなので話を戻し、結局リサが副団長になることで纏まった。

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