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世界最強の元一般人 ~どん底の天才、異世界で一発逆転を狙う~  作者: ITIRiN
第七章

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第78話:理想と現実

再び全員が自分の椅子へと座ったのを確認したティアは漸く構えていた木刀をおろし


「まず、この四人以外にも勘違いしておる者がいると思うから言っておくがのう…確かにこやつは徹夜でゲームをした次の日の午前中は寝ておるが、それはなにも仕事がおぬし等に比べて少なかったりサボっておるわけではない。それどころかこやつには週休二日どころか一日もないことの方が多いからの」


「えっ、でも陛下がうちでは余程のことがない限り全員週休二日を実現できるように調節するって」


ん~と、この人は警備担当か。……そういえばリーダがいない、というかよくよく見たら騎士団の人全員いるわけじゃないのか。女の子とか一人もいないし…ってここは男子寮なんだから当たり前か。


「お主、いくらこの国が狭いからと言ってもたかだか百二十人しかおらん騎士団で本当に週休二日が実現出来ると思っておったのかの? そんなことが無理なのはサルでも分かることじゃぞ」


「でっ、ですが騎士団の者は全員ちゃんと休みを貰えているのですが」


「それはお主がいつも仕事をしておる部屋にある機器類のお陰で見回りの兵を極端に減らすことが出来るからじゃ」


「……なるほど! 確かにあれは犯罪等を事前に探知してこちらに教えてくれますし、転移魔法ですぐに現場へと急行できますからね」


そうだね。それらを用意したのは全部俺であって君が自慢げな顔をする意味が全く分からないけど当たってるよ。


「分かっておると思うがそれらを作ったのは全てこやつじゃからの。それとこやつは仕事以外にも書庫に篭って勉強したり、毎日城に住んでおる者達全員と…それも相手によって接し方をちゃんと変えながらコミュニケーションをとったりしておるんじゃぞ」


「でもあそこに住んでる方達と毎日遊んだり、お喋り出来るなんて楽しそうじゃないですか。ティア様を含めて女性陣はみんな可愛かったり、お綺麗ですし、団長とかセレスさんは面白いですし……。なんなら羨ましいぐらいですよ」


出たよ、ハーレムは男の夢とか王様は一切気を遣わないで済んで楽そうとか思ってるやつ。なんなら訓練場のシステムを使って疑似体験でもさせてやろうか?


「じゃあお主には毎日子供達と一緒に遊んだ後に自分の部下の愚痴や悩みを王という立場を気にさせずに聞き出したり、時にはそれらを自然に労うことが出来るかの? それに加えて三人もの婚約者を平等に、しかもそれぞれが求めておることをしてやれるのかの?」


それに関しては出来るだけやるよにはしてるけど、別に自信を持って出来てるなんて言えるほどのものじゃないからあんまり言わないでほしいんだけど。


「あの~、陛下って誰かと婚約なされたのですか?」


「………すまぬ、ソウジ。もしかして婚約の件はまだ言ったら拙かったかの?」


「お前が俺の名前を呼ぶなんて珍しいな。別にこいつらになら言っても大丈夫だろ。ただ普通に国家機密だから誰か一人でも情報を外に流したらどうなるかは知らないけど」


というのも今回の婚約相手ミナ・マリノに関しては隣国の、それもこの世界でもトップクラスに大きい国のお姫様がうちの国に嫁ぎにくるということは普通に凄いことなのだ。つまり俺達としてはこれを最大限に活かさない手はないということで建国宣言でサプライズ発表する予定である。


うちの情報部によると国民間でのミナの立ち位置はこちらが正式に発表してないこともあり、マリノ王国の代表として人手不足な俺達を手伝っているというのが一番有力な意見らしい。


「ちっ、ちなみにどなたとご婚約を?」


「ミナとリアーヌとセリア。……おい、今更耳を塞いだりこの部屋から逃げようたって遅いからな。お前らはもう聞いちまったんだよ」


「その悪そうな笑み浮かべながらこやつらを脅すのはやめい。それに三月七日まで黙っておればいいだけなんじゃからおぬし等もそんな怖がるでない。ただ、少しの間酒を飲むのは止めておいた方がよいかもの」


あ~あ、可哀想に。この感じだと役職発表時に言ったミナとリアの役職は一時的なものか冗談だとでも思ってたんだろうな。ちょっと前に情報部にも同じことを言ったら別に驚かれなかったどころか、やっぱりみたいな顔をされたから全員なんとなく察してるのかと思ったんだけど、違ったのか。


「んで、説教はもう終わりでいいのか? そこの四人をどうするのかは知らねえけど」


「そんなわけなかろう。今すぐ騎士団全員を訓練場に集合させい」


「えっ? ですがそんなことをしたら入国審査をしている者や警備室にいる者までもがいなくなってしまいますよ。流石にそれは拙いのでは」


そんな当然の疑問を一人が問いかけるとティアは俺の方を見てきたので了解という意味を込めて一度だけ頷いた。


「言っておくがのう、こやつは警備等を自動化する魔法も地球の最新技術も使えるし、今まさにそれの準備をやっておる。この意味が分かるかの?」


「「「「「………………」」」」」


「なら自分達はいらないじゃないかと思った者は今すぐこの仕事を辞めてもらって構わんぞ。ここより快適な暮らしができて、給料も良い職場なんてないと思うがのう」


「「「「「………………」」」」」


この空気感、小学生みたいなことを考えた奴が数人はいたな。まあ俺に対して不満を抱えてる奴はこの四人以外にもいるだろうし、しょうがないか。


「警備関係の自動化と連絡は済んだけど、訓練場で何をするんだ?」


「なにって、今から今日の分の模擬戦をするに決まっておろう。この四人以外にも内心ではお主のことを馬鹿にしておる者がいそうじゃしのう」


そう言いながら再びティアが殺気混じりの怒りを醸し出しているのを見て、漸くこいつが何に怒っていたのかを理解した。






それから俺達は訓練場へと転移し、他の人達が集まるのを待ちながら見学者用のシールドなどを用意しようとすると


「こやつらには出来るだけ近くで見せとうから、観客席でのうてそこら辺にシールドを張ってたもう。あと気の遮断機能は全部OFFじゃ」


「そこら辺って、完全に場内じゃねえかよ。しかも気の遮断機能は全部無しって、ティアがみんなにどの程度の指導をしてるかは知らねえけど何人かはお前の殺気で気絶するんじゃねえか?」


「そんなお荷物がいたとしてもわらわが無理やり叩き起こして見学の続きをさせるから安心せい」


なんも安心できないし、それは流石にやり過ぎだろ……そう思った俺はなんとかしてティアを納得させようとしたのだが、どうやら俺の発言が気に食わなかったらしい例のお荷物発言をした男が


「失礼ですが陛下、私達は貴方より何年も前から騎士として戦ってきましたし、なにより先ほどのティア様に殺されかけた時でさえ一瞬固まってしまっただけですぐに復活できました。それにあれは完全に油断していただけであって最初から分かっていればあれくらい余裕です」


「………たかだか二週間ちょいしかティアとの修行や模擬戦で経験を積んでいない私より皆さんの方が経験や場数を踏んでいるでしょうし、確かに今の発言は私が失礼でしたね。すいませんでした」


一旦間をおいてから騎士団のみんなに向かって頭を下げ、特に誰も何も言ってこなかったので再び設定の続きを行い少しすると


「これで全員揃ったのう。このような状況になった説明は面倒じゃから各自知っておる者に聞いてたもう。……ということでじゃ、これからわらわとソウジが毎日やっておる模擬戦の見学会を始めるのじゃが……」


こうしてティアによるルール説明が始まったのでそれを要約すると


・武器に関してはティアは木刀のみ(超強化済みなので壊れることはない)、俺は何でもありだが殺傷性は全てゼロ

・防御魔法に関しては俺は何も無し、ティアはフル装備状態(服に付与されている防御魔法)

・ティアが生死に関わるような攻撃をしようとしてもこの訓練場の設定で自動的でシールドが出るようになっているので安心していい

・だが死ななければなんでもあり。別にあとで治せばいいだけだし

・決着に関してはティアが納得いくまで


いつも通りのルールとはいえ、改めて聞くと無茶苦茶だな。


「おっ、君は入国審査担当のアレクじゃん。丁度いいや、ちょっとこのコートとチョッキを持っててくれね」


「えっ⁉ あの、私の名前をご存じだったのですか?」


「まあこの前友達感覚でいいって言ったし、友達の名前くらい覚えるのは当たり前だろ」


という理由も確かにあるのだが、この子はアベルと同じ獣人でありうちの騎士団にはそれが少ないため

名前と顔を一致させやすいのだ。


ちなみに、特別種族による差別などはないらしいが一応そこら辺もミナが面接で確認済みらしいので普通に騎士団内ではお互い仲が良いようだ。


「あっ、ありがとうございます。……ですが~、このお洋服に関しては彼女達の誰かに渡した方がよいかと」


「彼女達って、……情報部の子達だよな? なんで?」


「なんじゃお主知らんのか? あの者達は女子ということもあって、お主の世界でいうセクハラが酷かったようでのう。それから助けられたことで()()のことを恩人と思っておるようじゃぞ。残念ながら恩人という気持ちが強すぎて恋愛感情は一切ないようじゃがのう」


こいつ、ワザと最後だけ()()呼びしたな。メッチャにやけてるし。

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