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第7話:どうする……

もう面倒くさいから結果だけ言おう。


まず俺の分のホットケーキは一枚も残らなかった。


そして肝心のボハニアについてだが、これは俺の予想通り上層階級の人間が横暴なパターンだった。


なんでも自分達に逆らう人達は全員死刑だの、気に入った女子供をレイプだの、無理な重税だので無茶苦茶な国らしい。


そりゃー、そんな国に怪しい男が突然現われたら偵察にも来るわな。それもマリノがボハニアの隣国なら尚更だ。そしてそこから導き出される答えは


「つまりあなた達はボハニアへ偵察に来ていたが、周囲から怪しまれ始めたか、見つかったかしてここまで逃げてきたと」


「ええ。ソウジさんの言う通りどうやら完全にバレてはいないものの、やはり怪しまれてはいるようで、検問が始まる前にここまで逃げて来た。ということです」


まあ他国のお姫様が自分の国に無断で、しかもボハニアみたいな国にいたともなれば、何を言われるか分かったもんじゃない。


つか本当に検問が始まっていたら、この人達はいったいどうやって自分の国に帰る気なんだ。


というのも、現在地からマリノ王国に帰るには海を渡るかボハニア王国を通るしかないのだ。


「そこでソウジさんに相談なのですが、どこか私達のような者でも安全に泊まれる場所を知りませんか?」


………ボハニア以外の場所にある建物といえば一つだけ。つまりこのお姫様、俺の城のことを言ってやがるな。そういうことなら返事は一つ


「いや~、申し訳ないですが心当たりがないですね。私はただの冒険者でして。ましてやこっちには最近来たばっかりなんですよ」


「……そうですか。逆に気を使わせてしまうようなことを聞いてしまってすいません」


お姫様がそう返してきたので俺は適当に謝った後、洞窟を離れた。






洞窟で三人と別れた俺は自分の城へと戻り、本来の目的であった部屋の模様替えをしながら誰もいないというのに一人言い訳をしていた。


さっきの三人。物語の主人公が俺と同じ立場だったのならば、間違えなく自分の城に連れてきていただろう。だが俺はそれをしなかった。


何故か? そんなのは簡単だ。初対面の、それも本当に信頼出来るのかすら分からない奴らをただの親切心で自分の本拠地に連れていくなど愚策すぎる。


それに加えミナ・マリノとかいう女は自分のことを国王の娘だと言っていた。これが嘘だろうと本当だろうと関わったら最後、面倒くさいことに巻き込まれるのは明白。……つまり、俺の選択は何一つ間違っていなかったということだ。


それからもお姫様に嘘をついて見捨ててきたことについての言い訳をしながら部屋の模様替えを続け、全部終わった頃には外が真っ暗になっていた。その為いつも着けている腕時計で時間を確認すると


もう夕方の五時過ぎか。………外は絶対寒いよな。


「…………あー、もう‼」


俺は大声でそう叫んだ後、頭の中に昼間の洞窟を思い浮かべながら転移魔法を使った。






「さっむ‼ てか、暗っ!」


あまりの寒さと暗さに大声を上げながらポケットからスマホを取り出して周りを照らすと……昼間と同じ格好で三人が武器を構えていた。


「うおっ⁉ ビビったー」


「……あら? やはりソウジさんでしたか。でもどうやってここへ?」


「そんなこと今はいいから、取り敢えず移動するぞ」


そう言いながら三人の近くに移動し……今度は自分の城を頭の中に思い浮かべ、再び転移魔法を使った。






「うおっ⁉ ここはどこだ?」


「お嬢様、ご無事ですか?」


「ええ。私はなんともないです。それよりも、先程ソウジさんがいたような気がしたのですが」


「ああ、いたぞ。あと悪いが敬語は面倒くさいからもう使わないからな」


俺の声を聞いた三人は一斉にこっちを向いたかと思えば……アベルはつまらなさそうな顔を、お姫様とリアーヌさんは子供を見るような優しい顔をしていた。


「なんだその顔は。特にそこの二人」


「ふふっ、私とリアーヌはソウジさんが戻って来てくれることを信じていましたよ……。それと別に敬語は気にしなくて大丈夫です」


「どういうことだ?」


「実はマリノ王国の血筋のものは相手の言っていることが嘘か本当かを見分けることが出来る能力を持っているんです。それに私も王族の一人ですからね、ソウジさんが凄く罪悪感を感じながら嘘をついていたのは最初からお見通しです」


おいおいマジかよ。嘘を見抜く能力持ちがいるなんて聞いてないぞ。それに加えて人を見る目まで備わってるとか、王族半端ねー。


「はあ~。こうなったらもう嘘は無しだ。あんたらに協力する代わりに、こっち側の事情にも巻き込ませてもらうぞ。別に悪いことじゃないから安心しろ」


そう言いながら右手を三人に向け、知識共有魔法(ブレインリンク)を発動させた。すると俺の右手から柔らかい光があふれ出し、それは三人の頭に降り注がれた。


「おい坊主、俺に何しやがった!」


「うるせえ。今から説明するから少し黙ってろ。……まず最初に言っておくが俺はこの世界の人間じゃない。だから今魔法でこの城で生活するのに必要な知識を一通り三人の頭の中に送った。ってことでまずは風呂に入って温まってこい」


そう言い俺は三人を風呂場まで連れて行き、それぞれ男湯と女湯に押し込んだ後…変身魔法(フェイク・フェイザー)で見た目を戻し、地球に転移して買い物をしたり、夜ご飯の用意をしたりしているうちにお風呂から上がったお姫様とリアーヌさんがリビングにやって来た。


「あのソウジさん。このお洋服、私達が着ても良かったんですか?」


「えっ? ああ、さっき俺が選んで買ってきたやつだから気に入らなかったら無理に着なくてもいいぞ」


「いえ、そういうわけでわ。というよりデザインも着心地も凄く良くて脱ぎたくないくらいです」


「そうか。女の服なんて初めて選んだからな。気に入ったなら良かった。リアーヌさんはどうだ?」


「はい、私もお嬢様と同じ感想なのですが……お嬢様には普通のお洋服をご用意したのに私にはメイド服というのは…ソウジ様のご趣味ですか?」


そう、今お姫様が着ているのは半袖のTシャツの上にパーカーと長めのスカートという地球では普通の服装なのだが、リアーヌさんが着ているのはロングスカートタイプのメイド服なのだ。


「いや、一応リアーヌさんはメイドだからメイド服にしただけで俺の趣味ではない。……それよりなんで二人とも髪を乾かしてないんだ? 脱衣所にはドライヤーもあっただろ」


「その件なのですが、ソウジ様のおかげでドライヤー? の使い方は分かるのですが上手くお嬢様の髪の毛を乾かせなくて」


「なるほど。………取り敢えず二人ともそこのソファーに座れ」


俺は二人が座ったのを確認した後、後ろに回り込み


「お姫様、悪いけど髪の毛触らせてもらうぞ」


そう言いながら俺は返事を待たずに櫛で髪を梳かしながらドライヤーで乾かし始めたのだが……


あれ? なんで俺は女の子の髪なんか乾かしてるんだ?


「んっ、んんあっ。ソウジさんの手、優しくて気持ちいいです。もっとしてください~」


「…………」


ただでさえ髪の毛からシャンプーのいい匂いがして危ないのに、エロい声まで出すな。もはや誘ってんのか? ああ゛っ?


「…………はい、終わり」


「ええ~、もう少しお願いします」


「もう完全に乾いただろうが。それに次はリアーヌさんの番だ」


「いえ私は自然乾燥でも大丈夫ですので」


「いいからジッとしてろ」


本当はやりたくないが、お姫様の髪を乾かしたのにリアーヌさんの髪は乾かさない。というわけにもいかないだろ。


「えっ⁉ あっちょ。んっ、んん~っ、ソウジ様の手、本当に気持ちいです」


「…………」


「あらあら、リアーヌもソウジさんの手を気に入ったみたいですね」


だからエロい声を出すのはやめろ。


………そういえば頭を触られるのを嫌う人って結構いるよな……いやまさかな。だって俺なにもしてないし。というかだとしたらこの世界、都合よすぎだろ。

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