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第46話:脱獄

なんだかんだで結局ミナともイチャイチャし、二人の荷物を収納ボックスに入れた後……しょうがなくアベルの荷物も入れてやったりこの宮殿の玄関のドア横に例のパネルを設置したりし、陛下達の呼び止める声を無視して帰ってきてから数時間後が経とうとしていた。


「ミナとの婚約の件はどのくらいで纏まると思う?」


「そうですね……。まだこの国でのソウジ様の立場は微妙なところですし、まずは国王宣言をしないことにはお父様達も話を進めにくいのではないでしょうか」


やっぱりそうか。一応パフォーマンスの意味も込めてこの国を乗っ取る時は派手にやったけど、まだ俺の素性を怪しんでいる人達もいるだろうし国王宣言と一緒に婚約発表しちゃえばよくね? とか思ってたけど無理そうだな。


まあそういう人達を納得させる為に金を使った政策をいくつか用意したんだけど。あとは地道に信頼を得ていくしかないか……。あ~、面倒くせぇ。二週間後くらいに謎の好感度アップとかしてないかな。


「この前の会議ではミナとの婚約発表とか国王宣言を嫌がっていたのに、急にどうしたの?」


「それがですねマイカ様。ご主人様ったら強引に私達との婚約を取り付けて帰ってきたんですよ」


あれは強引というより一方的だったけどな。まあ誰も心から反対してる感じではなかったし、あとはミナとリアのお母さんが何とかしてくれるだろ。


「ソウジ君ってオフの時は子供っぽくなるけれど、仕事中とか外にいる時は凄く大人っぽくなるよね。ちょっと背伸びしてる感が出ちゃってるけど、それだってソウジ君のことを知ってる私達やよっぽど見る目がある人じゃないと気付かないみたいだし」


「当たり前だ。お前らの前では気を抜いてるだけであって、そんな出会う人全員に俺の全てがバレてたまるか」


魔法によるポーカーフェイス状態なのに母親二人に見破られた時はちょっとビビったけどな。男より女の方がそういことには敏感なのか?


「確かに普段のソウジ様は私達の前では子供っぽいことが多いですが、ベッドの上では―――」


ドォォオオン‼


ミナがまた余計なことを言い出したのでそろそろ止めようかと思った瞬間、外から爆破音らしきものが聞こえてきた。


「あっ、爆発かな?」


「リアーヌ! 急いで訓練場にいるアベルとティアさんに連絡、マイカさんはそのまま動いちゃ駄目ですよ」


ミナとリアはこういうことにも慣れているらしく冷静に対応しているのを横目に、俺は一人別のことをしていた。というのも牢獄の周辺で何か異常が発生したらしいからだ。


どういうことだ? あいつら全員脱獄してやがるぞ。


中にいる奴らが魔法を使えないよう牢獄の周りに張っていた結界が壊された……わけではないな。じゃあどうやって?


いや、考えるよりもまずは現場に行かないとマズいか。一応脱獄が確認された場合自動で新しい結界が張られるとはいえ、あれは外に出れないようにするだけで魔法を無効にする機能は無い。最悪この国にまで被害が及ぶぞ。


自分でも驚くほど落ち着いてそう結論を出した後……俺はビーサンから急いでブーツに履き替え、ムラマサを左手に召喚したと同時に転移した。






「……ゲッホ、ゴッホゴッホ。なんだここ、煙たすぎだろ」


誰が何をしたのかは知らないが爆発による土煙などが凄く、視界や空気が悪い中あたりを見回すと高そうな服を着ている集団を見つけたのだが、それはあっちも同じらしく数人がこちらに向かってきた。


その為交渉等の可能性を考えフェイク・フェイスを発動した直後、そいつらは俺の目の前で止まり


「やあ、君の顔を直接見るのは初めてだね。私はこの国の国王だった者…で通じるかな?」


「ってことはあんたが前国王か。俺の中でのイメージは下品な笑みを浮かべているデブだったんだけどな。意外とイケメンじゃねえか…って言いたいところだが、実の娘があれだけの美人なんだ。そりゃー、親の顔もいいはずだわな」


「まさか君に褒められるとは思わなかったよ。ここはありがとうと言うべきかな?」


「お礼はいらないから早くお家に帰ってくんね? そこにある牢獄っていうお前達にピッタリのお家にさ」


「ああ、もしかしてあの牢獄は君が用意してくれたのかな? 意外と住み心地が良いから少し気になっていたんだよね。どういう仕組みか時間になれば勝手に御飯が現れたり、食べ終わったら自動で食器が消えたりするし……」


「そんなに気に入ってるなら早く帰れよ。もしかしたら今日の夜ご飯はステーキかもしれないぞ」


元国王は探りを、俺は話を逸らす為に相手の言葉をガン無視しての会話が続いてる中…俺は若干焦り始めていた。


いくらフェイク・フェイスを使っているとはいえ下手なことを言わないようにするのは結構キツイ。


マリノ王国での一件は圧倒的にこっちが有利だったし、ミナ達が近くにいたからそんなこと気にしていなかったが…あの時と今とでは状況が違い過ぎる。


「そういえば私達の所にマリノ王国の王女様やそのメイド、騎士などはたまに来ていたのに君だけは一度も来なかったけれど…それほどまでに忙しい何かがあったのかい?」


「あんた等をここに送った日の夜に飲み過ぎて二日酔いになったり、ピクニック気分で行った先で殺されかけたりと、色々忙しかったんだよ」


これは半分本当で半分嘘である。というのも俺にこいつらを合わせない方がいいだろうというミナ達の気遣いに甘える形を取っていたからだ。


「そうだったのか。てっきり私は王女様達が君の心を守るためにワザと遠ざけているのかと思っていたよ」


「……自分達の身をもって俺の凄さを味わっておきながら、よくそんな間抜けな考えに至ったな」


「ああ、確かに君の持っている力は凄いとも。だが……」


そこで一度言葉を切り、薄気味悪い笑みを浮かべたかと思った瞬間


「後ろがガラ空きだぜ坊や!」


―――ッ⁉


「戦闘技術がまだまだだったり、人間を殺すのに抵抗があるようだったから……と言いたかったんだが、ギリギリで避けるぐらいは出来たのか。まあ左腕はなくなってしまったようだけれど」


………人間は自身の脳が処理出来ないほどの衝撃を受けると急に冷静になるって聞いたことがあるけど、あれは本当らしいな。


だって今自分の左腕がないことを確認した後、地面にそれが落ちてるのを見ても何とも思わないし。……ってか逆に笑いそうだぜ。


「おい、なんで俺が人間を殺すのに抵抗があるって分かった?」


「この状況でお喋りとは面白い。お前達、私がいいと言うまで何もするな」


そう言うと元国王の周りにいた奴らは構えていた武器を下した。


転移対象者が所持していた武器は俺が全部売ったから持ってるはずがないし、見た目通り魔法で作った簡易的な武器ってとこか。それとこいつらは全員ガタイが良いから元騎士団の連中と考えてよさそうだな。


「それではさっそく君の質問に答えていこうか。まず一つ目の理由だが、これは君がこの国を乗っ取るという割に私達を即処刑しなかったからだ。そんなことがしたいのならば国民へのパフォーマンスの意味も込めて公開処刑を行うのが得策。だがそれをしなかったし、依然する様子もない」


「なるほど。最初はミナもお前らを公開処刑にするとか言ってたし、この世界の王族としては当たり前の判断か。一つ目ってことはもう一個くらいはあるんだろ? ついでに教えてくれよ」


「なんだ自分で気付いてなかったのかい? そんな立派な武器を持ってここに来たというのに使う素振りすら見せていなかったことに。武器の方もまさか脅しにすら使われず左腕ごと地面に落とされるとは思っていなかっただろうね」


そんな挑発じみたことを言ってきたかと思えば元国王は再び薄気味悪い笑みを浮かべながら


「さあ、お喋りはこれくらいにしようじゃないか新国王様。これから君には死んでもらってこの邪魔な結界を消そうと思うのだが、いったい君はどうするのかな?」


¨殺さなければ殺される¨


¨殺される前に殺せるのは俺一人¨


¨しかし殺す以外に生き残る選択肢がいくつか存在する¨


¨一つはここから逃げてミナ達に対処をお願いすること¨


¨そしてもう一つは………俺が日本へ逃げて二度とこちらの世界には来ないこと¨


ティアも言っていたが俺が日本での生活に戻れるかどうかの境界線はこいつらを自分の手で殺すかどうかだ。


しかしそれはミナ達が殺したって同じこと。何故なら俺が命令してこいつらを殺させたことになるのだから。


つまり俺が日本に戻り、再び普通の生活を送りたいのならあの城にいるみんなは勿論この国の国民全員を見捨てる必要がある。


¨さて、どうするか……¨


¨もちろん答えは一つである¨


「―――来い、ムラマサ」

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