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第30話:勝手に終わりにしないでください

………ということが昨日あった。


「私を1人にしたって言うけど、リアも一緒に寝てたぞ。ってことで今回の件は終わりな」


多分ミナが寝てる間にリアも一緒のベッドで寝て、ミナが寝てる間に起きたから気づかなったのだろう。


「なに勝手に終わらそうとしてるんですか‼ まだ話は終わってないですよ!」


「昨日も言ったがミナには立場ってもんがあるんだから仕方ないだろ。俺のベッドで寝かせてあげたんだからそれで我慢しろよ」


「だからって魔法まで使うことないじゃないですか。そのせいで私、目が覚めてからいつも起きる時間までのちょっとの時間しかソウジ様のベッドを楽しめなかったんですよ。もっと色々やりたいこととかあったのに」


ここで、『何がしたかったんだ?』などと聞くほど俺は馬鹿じゃないのでそこは皆さんのご想像にお任せしよう。


「つっても、俺が魔法で寝かせなきゃ絶対諦めなかったろ。ミナと一緒に寝るだけでも危ないのに、それに加えて抱きしめて寝ろとか無理だから。それ高確率で今日の朝起きたら事後になってたやつだから」


「それ……本当ですか?」


「本当だって。昨日ミナを運ぶためにお姫様抱っこした時もどんだけ我慢したと思ってんだよ。キスすら耐えた自分を褒めたいくらいだね」


昨日までの俺は、『彼女とキスとか部屋でイチャイチャしてるうちにしたくなってしちゃったとか、普通にあり得るわけねーだろ! お前最初っからヤル気満々でキスとかしてるだろ!』って思ってたんだけど……ミナの体に触れてるうちに、『これマジだわ‼』ってなりました。


いやホント! これでミナが起きてて誘惑なんてされてたら間違いなくやってた。そう考えるとセリアの時はよく耐えられたなと思うわ。まあ、あいつの場合雰囲気とか、まだ子供だからっていうのもあったんだろうけど。


「えへへ~、そこまで言われちゃうと悪い気はしませんねぇ。それにソウジ様がどれだけ私を大切にしてくださっているのかも今ので分かりましたし。ですがそのせいで私の気持ちが更に高まってしまったというか、ソウジ様のベッドでまだ途ちゅ………いえ、何でもないです」


は~あ、俺はキスすらまだ数回しかしたことないんだから文句は言うなよ。……まさか顎クイをする日がくるとは。


「ミナ……」


……え~と確か最初は軽いキスをして


「ちゅ、んん……っ、んふ……」


その流れで相手の下唇を挟むと。んで、相手の下唇をゆっくりと舐めるんだっけ。


「ぁ、っ……! んん、っ……、ちゅっ、ちゅぁ……っ」


「これで満足したか?」


「はっ、はい……」


ふむ。寝る前にネットで『簡単に出来るディープキス』って調べたら出てきたバインドキスとかいうのをやってみたが、確かに昨日普通にキスしてやった時よりもミナの顔が赤くなってるな。


ちなみに、似たようなのでハムハムキスとかいう、何かのドラマで松○がやったとかで有名やつがあったがこれは難しそうだったのでやめた。……いつまで照れてんのこの子。そんなに照れられると俺まで引っ張られるんだけど。


「そういえばなんで俺が仕事部屋にいるって分かったんだ?」


「えっ⁉ ああ、それはですね…私がソウジ様を探して廊下を歩いていた時、昨日とはまた違った服を着たティアさんと会いしまして……ソウジ様ならここにいると教えてくださったので」


「あ~、納得。それで、俺への用事は文句を言いに来ただけか?」


「いえ、勿論それもあったのですが、一番の目的はそろそろ朝ご飯の準備が出来るそうなので呼びに来たんです」


「ん? ああ、もうすぐ7時か」


うちでは立場など関係なく全員一緒にご飯を食べるようにしているため、朝ご飯は7時と決めているのだ。ちなみに昼ご飯と夜ご飯は日によって食べる人数が変わってくるので、準備ができ次第という風になっている。


「はい、ですので一緒にリビングへ行きましょう♪」


「なぜ腕を組んだ? しかもやたらとくっ付いてるし」


「さっきのキスの続きです♡」


これが昨日ネットの記事で見た男と女の違いってやつか。なんでも男はキス(種類にもよるが)をしたらそのまま最後までしたくなる人が多いが、女はキスだけでも満足できる人が多いらしい。まあミナの場合はどっちでもイケるタイプだな。


「あら? ソウジ様が今履いてる靴……でいいのか分かりませんが今朝ティアさんが履いてた物に似ていますね。それは何という履物なんですか?」


「俺が今履いてるのはビーチサンダル。んでティアが履いてたのは下駄だな。ミナは1回和室に行ったから分かると思うけど、俺の国では基本家の中で靴は履かないんだわ。だから一日中靴を履いてるのは慣れなくてな。裸足に一番近いビーサンを履くことにしたんだよ」


「なるほど。ですが何故ティアさんまで似たような物を履いていたのでしょうか?」


「それは昨日の夜ティアを連れてコンビニに行ったら、俺がビーサンを履いてるのを見て自分もそれがいいとか言い出し、やっべ‼」


落ち着け焦るな宗司。恐らくミナはコンビニを知らないはず。となればまだ昨日のことは誤魔化せるはずだ!


「そういえばソウジ様、昨日はどちらでお休みになられたのですか?」


「え~と、居間のソファーですか、痛い痛い痛い痛い痛い! ちょっ、腕を組む力を強めるな」


「嘘はいけませんよ、嘘は。もう一度聞きますが、どちらでお休みになられたので?」


なんで嘘だってバレ……そうだ! ミナは相手の嘘を見抜けるんだった。でも確かその能力は自由にONとOFFを切り替えられるはず。ということは……


「……俺の部屋にある改造ドアを通って日本にある自分の家に帰ったら、いつの間にかティアまで着いてきてました」


「はい、よく言えました。それで、先ほど出てきたコンビニというのはなんでしょうか?」


こうして俺は機嫌が直ったばかりのミナを再び不機嫌にしてしまっただけでなく、リビングに向かう途中の廊下でミナが寝た後のことを全て吐かされた。


「つまり、ソウジ様の寝る場所がなくなった為日本にあるご自分のお家のベッドで寝ようとしたらこっそりティアさんが着いてきいて、追い返すのも面倒だからそのまま泊めることにしただけでなく、一緒に外出までしたと?」


「はい、仰る通りです」


勘の良い人であればここで、ティアみたいな見た目が完全に子供な奴と一緒に歩いてたら補導されるだろっと思っただろうがこれがなんの問題もなかった。何故かと言うと―――


「ちゃんと私の話を聞いていますか、ソウジ様」


「はい!」


「兎に角ズルいです! 私もソウジ様のお家や日本に行ってみたいのにティアさんだけ連れて行くなんて意地悪です! 私も行きたいです!」


どうだ見たか俺の必殺技、本当でも嘘でもない返事作戦! この作戦のポイントは『はい、聞いてます』と言うのではなく、返事を『はい!』だけにすることによって嘘とバレずにあたかも聞いていたかのように誤魔化せる技だ。……つまり全く聞いてませんでした。


それからミナは、『今すぐ連れてってください!』だの『これは証拠が一切出てこない異世界不倫です!』とか騒ぎ始め、宥めるのに10分程掛かった。






「随分と来るのが遅かったのう。わらわがミナと会ったのが20分程前じゃったからもう少し早く来ると思っておったんじゃが」


「色々とあったんだよ……。はぁ、ギリギリ間に合ったみたいで良かった」


「朝からミナと腕を組んで来るなんて……一体何をしていたのかしらね、ソウジ?」


「さあな。ただミナに吸われすぎて喉渇いた。麦茶飲んでくるからそろそろ離してくんね?」


「別に私の喉は渇いていないので大丈夫です」


そりゃそーだろ、俺の口の中の水分を吸っては飲んでを繰り返してたんだから。


などとさっきのことを思い出しているうちに朝ご飯の準備が整い始めたので麦茶は諦め、席に座ることにしたのだが


「……なんでみんなの前にはサンドイッチと野菜スープがあるのに俺はスープだけなの」


「ぶっははははは、坊主の分だけ忘れられたんじゃないか?」


「昨日の怒っておったリアーヌならまだしも、今日は違うじゃろ。それに今日から子供達も一緒に準備をしておるしのう。……それだけ朝から元気なら昨日より鍛錬を厳しくしても良さそうじゃの」


「かっ、勘弁してくれよ師匠。昨日の鍛錬ですらギリギリだったのに、これ以上やったらまともに動けなくなっちまうよ」


「な~に、鍛錬が終わったらリアーヌに回復魔法を掛けさせるから安心せい」


全然安心できないだろそれ。しかもあのアベルがティアのことを師匠呼びとか、どんだけ厳しかったんだよ。


「別に騎士団の鍛錬を厳しくされるのは構いませんが、大怪我だけは負わせないでくださいよ。一応治せるとはいえ、万が一もありますので」


「分かっておる。それよりお主が持っておる物はなんじゃ? 食パンのようにも見えるが」


「これはパンが嫌いなご主人様のためにご用意させていただいたフレンチトーストです。生憎ここにはパンしかありませんでしたので、エメ先輩と相談して作ってみたのですが……いかがでしょう?」


「俺は別にパンだろうと何だろうと出された物は黙って食べるぞ。まあ、サンドイッチよりフレンチトーストにしてくれた方がありがたいけど」


「ん? サンドイッチとフレンチトーストって両方パンですよね。何が違うんですかソウジ様」


あ~、その質問ね。給食の時、普段は絶対にパンを残してるのに揚げパンとかが出てきた時だけ食べてると毎回その質問されるんだよな~。


んで答えようとするんだけど、上手く言葉に出来なくていつも納得されない。あの感じを言葉にするのは難しすぎるんだよ。


「それはですねお嬢様。分かりやすく例えるとピーマンが嫌いな子供の為に小さく切り刻んだそれをバレないように他のお料理の中に入れるのと同じで、ご主人様にとってフレンチトーストはパンだと認識されていないのです。つまりピーマンが嫌いな子供と一緒なんですよ」


例えは気に食わないが納得できる……。でも別に俺ピーマン食えるし。子供の頃から普通に食ってたし。


「ふふっ、先ほどまでは大人の男性だったソウジ様も今はすっかり子供に逆戻りですね。でも、私はそんなどっちにでもなれるソウジ様が好きですよ」


………ピーマンの話はあれだがミナの機嫌が完全に直ったからいいか。

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